とある森の中の話
「な二……ふざけたことヲ……!」
鬱蒼と茂る木々の間を悲痛な叫びがこだまする。静かな湖はそのこだまする声を静かに受け止めていた。あたりは月明りが照らし、湖が月を映し出している。水面はふわりと抜ける風か、はたまた響いた声によって揺らぎを見せる。
部屋の中のふたつの影はそこだけ時が止まった様に揺らがない。その揺らぎを現したのは一人の発言。
「ふざけてなんかないさ。そんなこと、キミが一番わかっているんじゃない?」
「バ……バカにするのもいい加減にしロ! そんナ、そんなこト……」
「あるはずない? それすらわからないのに?」
「……ッ」
劣勢、とも言うべきか。何を言おうとも言い負かされてしまうような気迫がそこにはあった。
どこからともなく、部屋の中には風が吹き抜ける。それが目の前の人物による仕業だわかるまで、そう時間はかからなかった。
「なにヲ……する気ダ」
「あまりに疑り深いからね。少し、見せてあげるよ。その証拠を」
「証拠、だト?」
「あまりガッカリしないでね? 僕も久しぶりなんだ」
吹き抜けていた風が体全体を包み込み、そこは目になる。あまりの強さにあちこちの物が飛び交い、自身も飛ばされそうになりながらもその様子を伺う。
強風に目が慣れてきた頃、そこにいたのはかつて自身が想い焦がれてもなお届かなくなってしまった存在だった。
「そんナ……パイ……?」
今度は小さな叫びが、その空間に溶けていった。




