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本来いるはずがない場所にキュービはにこにこと居座っている。
そこは静かな湖にある小さなお部屋。招かれざる客のキュービにコロンは軽蔑の眼差しを送り続けている。
「……なにしにきタ」
「つれないなあ。魔法学校の同期じゃないか」
「なにが同期ダ。お前を仲間と思ったこともなイ!」
コロンの魔力に満たされた湖周辺はコロンの魔法によって基本的には外部から見えなくなっている。湖や森、またコロン自身に何か不測の事態が起こらない限り、この湖周辺にはたどり着けないようになっている。しかし、そんな魔法もキュービはいとも簡単に突破してしまった。つまり、コロン自身に不測の事態が起きていた。
への字口をもっと強く紡ぐとコロンは戦闘の構えを見せる。
一瞬目を丸くしたキュービはまたコロッとした笑顔に戻りコロンをなだめた。
「いやだなあ、僕戦いたくて来たわけじゃないのに」
「うるさイ! ワタシの結界を壊しておいテ、そんな言い訳通用しなイ!」
言うが早いか、コロンは自身の身に纏うローブに付いた水晶をキュービ目掛けて投げつけた。水晶はキュービの頭上で三角形を描きピタッと止まる。
「水と共に踊レ!」
コロンの言葉によって、キュービの頭上にある水晶から一気に水が噴き出した。水の勢いは強く、キュービの姿を覆い隠す。かと思ったのだが。
「相変わらずだなあ、コロン。キミは気が早すぎる。同属性の魔法は威力が弱まるのは、魔法学校で最初に習うことでしょ?」
「くうう……」
キュービは自身の周りに風を纏い、コロンの水晶からの水をすべて弾き飛ばした。飛ばされた水たちはコロンの部屋の中を湿らせる。初歩的な指摘をされて言い返せず唸るコロン。
「昨日のミゲルの件、そしてリリカの所在を伝えに来ただけだよ。コロンには会えなかったもんね」
「リリカは生きているのカ……?」
ミゲルの妻、リリカはミューハ国の女王である以前に、コロンの親友でもある存在だった。立場が変わり、気軽に会えなくなったが交流は続いていた。ミゲルと対峙した時、コロンは真っ先にリリカがもうこの世にいないのではと思っていた。
「うん。リリカはミゲルのいいようにされていただけだからね。解放されて、生きてはいるよ」
「そうカ……よかっタ……」
「ただ、彼女は記憶をなくしているみたいでね。行方の検討はついているんだが、僕はほら……嫌われているだろう? だからコロンに探しに行ってほしいんだ」
「な二……?」
安堵の表情から一変して怪訝そうにキュービを睨むコロン。
そんなコロンに面白くなりながらもキュービは自分のペースを崩さず言う。
「どうして知っているか、と言えば僕の魔力のおかげ。そしてリリカの捜索はミゲルの最後の頼みでもある。そして、もう二度と友人をなくすのは怖いだろ? パイのようにさ」
「……!」
「いやはやミゲルはあの後どこに行ったのか。息子たちを連れて改心の旅かな?」
「白々しイ……どうせなにかしたんだロ!」
「そうだとしても、リリカのことは本当さ」
嫌な汗がコロンの背中に伝うのを感じる。キュービ笑っていない瞳のまま口角を上げて、コロンと対峙している。部屋に滴る水滴が落ちた時、コロンが口を開いた。
「わかっタ、いいだろウ。リリカを探ス。その検討の場所を教えロ」
「おお! わかってくれる? コロン。嬉しいよ」
ぱっと明るい表情を見せたキュービはコロンに抱擁しようと近寄るも、それはコロンが突き出す腕に制止された。 コロンは握りしめた拳をそのままキュービに食らわせようとするが、少しの間の後キュービが交わす。
「なになに?」
「……ただシ。条件があル」
「?」
「パイはどこダ、話はそれを聞いてからダ」
コロンの言葉で、辺りの空気が重苦しいものへと変わった。キュービはニヤリと笑って、
「キミの目の前だよ」
冷たい一言を吐き捨てた。




