8-3
話し始めてから少し太陽が傾き、次第に森は早朝の爽やかな日差しから朝の柔らかく鋭い日差しに溢れていく。
「すべてを知っていたわけではありません。でも知っている情報があるにも関わらず黙っていたのは事実。それは本当に申し訳ありません……」
「俺の、俺の呪いのことは?」
深々と頭を下げるルビーに、リオは食い気味に問いただす。
ゆっくりと頭をあげるルビーは哀しそうに首を振った。
「ごめんなさい、それはわからないんです。ただリオくんが感じているように、動悸が関係しているのもまた事実」
「だから行こうぜ、その師とやらの元に」
「え?」
ルビーの言葉尻を奪いキルが続ける。あまりにも自然な繋ぎにリオは声を上げる。
「この先生も知らないんだ、ならその話をしていた大元に聞くしかないだろ?」
「彼女の居場所を知っているんですか⁉︎」
突然のキルからの提案に一番驚いているのはルビーだった。ひっくり返る声でルビーはキルに詰め寄る。
「いやいやいや? それはこれから。そもそも、レミィにもリオくんにも肝心の魔力が足りないだろ? じゃあどうしたって何も探せやしない。まずそこを鍛えなきゃ。いくら『ハトレアのしずく』に導かれたところで、なにもできないだろ?」
「それは、そうですが。あなたは本当にどこからその話を」
キルの飄々とした態度に、ただただルビーは嫌悪感を覚える。それはいつしか感じた過去の自分の気持ちとあまりにも一緒だった。自身の師である、放浪魔法使いと出会った時と。
「……キルの言うことに俺は賛成する」
「リオ?」
ぽつりと発言を落としたリオに、レミィが不安げな顔を覗かせる。そんなレミィを見て、リオはふっと微笑んだ。
「俺は、弱い。だからこそまずは少しでも知らなきゃいけない。自分のことも、この世界のことも。そして、レミィが強い魔力の持ち主だということも」
「うん、うん! そうだよね。わたしも、ルビー先生の言ったことにはびっくりしたけど、元々強い力なら使えなくなった原因が必ずあるはずだもんね! わたしも知りたい、わたしのこと!」
強く強く自分に言い聞かせるようにレミィが頷きながら笑顔で言った。朝日がレミィと共にキラキラと輝く。
ルビーは呆気にとられた様子でレミィとリオを交互に見る。あまりにも純真な二人の周りが自身の陰りを隠すようで眩しく見えた。
「そんな、簡単に……」
「案外、あれこれ考えてるのは先生だけかもよ?」
ケラケラッと笑ってキルはルビーの言葉を返す。
そこにあるのは陽と共に生み出される影だけとなる。




