7-3
「ふむ。やっぱり、月夜は安定しないな。そう思うだろ、キル?」
空に向かってキュービは声をかける。
柱の陰に溶け込んでいたキルは一瞬肩を震わせるが、観念したとでも言うように音もなくキュービの前に姿を現した。先の戦いでキルには疲労の色が見える。
しばらくの沈黙の後、キルが口を開いた。
「いいのか? 大事な駒を消しちゃって」
「消してないさ。少し、移動してもらっただけ。キルもよく知っているだろ?」
「……さあな」
やれやれと首を振るキュービをキルは見据える。どう動かれてもいいように、緊張の糸は張り巡らせたまま。
あまりの気の張りようにキュービは吹き出した。
「そんなに固くならなくていいよ! 別にどうもしないからさ」
「どうだか。アンタはしなくても、中の奴はわかんねぇだろ」
キルがキュービの胸元を指さした。それに対して、キュービはまたふっと笑みを見せる。月明かりに照らされ、その表情は悲しみを纏って見えた。
風が何かの意味を持ってか二人の間を吹き抜ける。
「僕はね、キル。すべてが一緒になってしまえばいいって思ったんだ。その方が争いもなくなるはずだし、みんな一緒の方が楽しいだろうなって」
「…………」
「ミゲルはさ、そんな僕に賛同して協力するって言ってくれたんだ。結局、自分のためだったみたいだけど」
「アンタ、今どっちで話してる?」
哀しそうな声色で語るキュービに向かってキルが言い放つ。その言葉を聞いてきょとんとした顔でキュービはキルを見返す。
「あ、ははは。僕はキュービ、そう。キュービだ。それ以外の誰でもないよ」
「…………」
声を上げて笑うキュービの表情は張り付いた人形のようににっこりとしていた。キルの背中に冷たい汗が流れる。
「はー……。でもまぁ、キルにはずっとお世話になっているからね。そろそろ好きにしたらどう?」
「……言われなくても好きにするさ」
「うん、いいと思うよ」
立ち去ろうとするキルの後姿を眺めながらキュービは小さく、それでいて聞こえるように呟いた。
「どうせ、今回も僕からは逃れられないから」




