7-2
月明かりが煌々と差し込む廊下にふたつの影があった。暗がりにいるひとつは表情が見えないが、何かを憂うように月を見上げている。
「おい! あの時、お前が加勢していればあのまま魔力を統合した力を得られたはずだ! なぜ何もしなかった……キュービ!」
キュービは声をあげるミゲルの方に目線をやった。ちょうど月が雲に隠れてしまい、ミゲルからキュービの表情を読み取ることはできない。
「何を言ってるの? すべてキミが勝手にやったことだよ、ミゲル」
「な……! オレは、お前が命令してきたことをここまで遂行してきたんだ!」
「んー。それだって、僕は提案しただけで……あとは自分がやりたくてやってきたことでしょ?」
声だけ届くのも相まって、ミゲルにはキュービがケタケタ笑っているように聞こえ、さらに自身の神経を逆なでした。
「ふざけるな! 何のために妻を、息子を、国をお前に差し出したと……!」
「うるさいな、何度も言わせるな。全部自分でやったことだろ」
「……っ!」
突然キュービは間合いを詰め、ミゲルの顔を鷲掴む。突然のことで身動きができず、鋭い眼光がミゲルの視界に拡がり冷や汗が首筋を伝う。
先ほどまでは表情が見えなかったキュービだが、今はにんまりと口角を上げているのが嫌でもわかった。眼だけが鋭くミゲルを捉えて離さない。
「聞き分けのない奴は嫌いなんだ。それはミゲル、キミが一番知っているだろ?」
「お、オレをどうする……」
「知らない。パイにでも聞いてくれ」
「や、やめ……!」
ミゲルが何かを言い終わる前に、どこからともなく湧き上がる暗闇に跡形もなく吞まれていった。まるでそこには最初から何も存在しなかったような静寂な月夜が訪れた。




