7-1
「終わっ……たのか?」
へたり込むリオがやっとの思いで声を出した。リオが切り裂いた魔力の空間は、大きな光となって粉砕された。粉砕された光は飛び散り、やがてレミィの持つ首飾り『ハトレアのしずく』へと収束した。
レミィはその光を受け止め、すべての光が収まったのちにそっと首飾りを外し握りしめた。
「……あ! リオ! 大丈夫⁉︎」
思い出したかのように、レミィはへたり込むリオの元へ駆け寄る。リオは安堵からか肩の力が抜けてしまっていた。レミィがリオの顔を覗き込むと、二人に自然と笑みが戻ってきた。
「おう、ありがとな。大丈夫」
「うん! よかった!」
「……お二人さん」
へへ、と照れ笑いを浮かべるリオと満面の笑みを向けるレミィ。そこへ、ふらつきながらもルビーが近づき声をかけた。ルビーの様子はもう自力で立つのもやっとのようにも見える。
「ルビー先生! ケガ! ケガしてる! ど、どうしよう!」
「レミィ落ち着いてください。少し魔力を使いすぎただけですから……。そんなことより、ありがとう二人とも。ミゲルを止めてくれて」
「わたしは何も……リオが切ってくれたから」
「俺だって、付け焼き刃な力で……ってそのミゲルは?」
はたと気づきリオは辺りを見回す。最後にミゲルを目にしたとき、コロンとサンティトルが抑えていたのは視界に捉えていた。
自分たちの少し後ろに、コロンとサンティトルが座り込んでいるのが見えた。だがそこに、ミゲルの姿はない。一瞬にして血の気が引いたリオは慌てて二人の元についた。
「コロン! サンティトル! 大丈夫か!」
「あア……リオ」
「ボクは、いったい何を……?」
混乱している様子の二人。リオは再度辺りを見渡すが、何か攻撃を仕掛けてくる気配はなかった。レミィとルビーも次いでその場に集まった。
頭を押さえつつコロンは口を開く。
「コイツを応戦しようとミゲルを捉えタ。リオが魔力を切り裂いた時までは確かに抑えていたはずなんだガ……」
「逃げた……? でもアイツにそんな力残っていたはずは……」
ルビーは首をかしげるが、確かにミゲルの気配が近くにないことを感じ取っていた。
不穏な空気が流れそうになる間を、ごほんというサンティトルの咳払いが振り払う。
「皆の者! ……本当にありがとう。父を……止めてくれて。特にレミィと黒髪の。助かった」
「サンちゃんが最後に力を貸してくれたからだよ!」
「あぁ、俺もその場の勢いで……って、黒髪のってやめろよ。俺はリオ」
「リオ。そうか……黒髪の奴にも、良い奴はいるんだな」
リオが名乗るとサンティトルは笑顔を向けた。そしてリオの顔をじっと覗き込み何かを思い出そうとする。
「……初めて会った気がしないな? お主、姉君や妹君はいるのか?」
「えっ」
一瞬たじろいだリオは、おそらくハウスメイドの格好をしていた時のことを話しているのだと悟った。あれこれ説明をするのも面倒なので、「いない」とだけ言い放ちサンティトルから少し距離を取る。
「坊ちゃん、ありがとうございます」
「ヒージ! 無事か! すまないな、こんなことになってしまい」
「滅相もございません。坊ちゃんあってこその私でございます」
回復したヒージがサンティトルの元に立つ。その足はおぼつかないが、少し凛々しく見えるサンティトルへの喜びに溢れた表情をしていた。
この部屋で共にした者たちが集ったのを確認し、サンティトルはヒージに支えられながら立ち上がる。
「さぁ、疲れただろう! 今後のこともある、だがまずは休息だ! ヒージ、皆に最上級のもてなしを!」
「お任せください」
サンティトルの声掛けにレミィとリオは応えてヒージと共に支えながら、ルビーはコロンを抱えながらその部屋を後にした。




