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手放しかけた意識の中で、懐かしい記憶をルビーは辿っていた。それはまだルビーが危なっかしい性格で、すべてを諦めかけていた頃。自分には何もできないと、何の力もなく、好意の先にある孤独をひしひしと感じるしか術はなかった時。
そんな時、魔力の交わりと共に託された少女レミィは後にルビーの生きる糧となった。
レミィと共に残された、ハトレアのしずくの意味を模索しながらルビーは数年間を過ごした。伝えられた「少年と出会う日」を信じて。そんな日が来なければいいなと思いながら。
出会った少年に対して、ルビーは一目で「自分と似ている」と感じ取った。孤独ゆえの暴走を何よりも理解しているつもりでも、それを拒絶したい自分の気持ちもあった。それでも、レミィへの想いとあの日レミィを託された意味を、その少年に乗せるしか他なかった。
こんなにも弱くなっていたのかと、自分で自分を鼻で笑った。
「おイ! ルビー!」
これまた懐かしい声がするとルビーは頭の中が忙しく騒いだ。ここ数年聞いてなかったその声は、あの頃の思い出のまま、澄んで気高く、愛すべき声色でルビーの名を呼ぶ。
「オマエェ……いつからそんな軟弱になったン、ダ!」
「いっっっでぇぇぇ!」
つんざくようなコロンの叫びと共に、ルビーの額に頭突きが飛んできた。それに応えるかのようにルビーの絶叫が響く。
「何するの⁉︎」
「起きないからだろうガッ! くそメ!」
「もう少し優しくしてくれてもよくない⁉︎ 意識はあったんだから!」
「そんなことよりダ!」
白い光の世界から抜け出したルビーは辺りを見渡した。そこに飛び込んできた光景は、自我をなくしているであろう光を纏うレミィの姿だった。レミィの姿をしているが顔には覇気がない。そして、魔法陣に繋がれていたはずのサンティトルからも凄まじい魔力の放出を感じ、レミィに吸い込まれていくのがわかった。
「レミィ!」
「待てバカ!」
レミィに向かって走り出そうとした時、ルビーは足がもつれて地面に倒れ込んだ。そこでやっと、自身の魔力が底をついていることに気がつく。
「はは……あれ、なんで?」
「あれだけ戦ったんダ。そうなることもわかっていただロ」
「くそ……どうして、どうして俺はいつも肝心な時……」
ルビーは地面に腕を何度も打ち付ける。歩けない足、底ついた魔力。すべてがルビーを苛立たせた。
「俺が、やるから」
苛立ちを隠せず地面へ伏したルビーに声が届く。
見上げるとそこにはリオがいた。出会った時よりも、遥かに強い魔力を持って。
「リオ……くん」
「大丈夫、俺がレミィを止める。まだ話したいことがたくさんあるんだ」
「でも……」
「これが俺の直感だよ」
ふっと笑うとリオは地面を蹴り上げ加速してレミィの元へと飛んだ。




