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誰もが目を向けた先には、先ほどまで光に包まれ存在すら確認できていなかったレミィらしき人物がそこにいた。光に覆われたことにより、ミゲルの閃光は消滅し、ルビーとコロンはそもままの場所に留まっている。
「レミィ……なのか?」
最初に疑問を呈したのはリオだった。リオには魔力がなにかまだわからない。しかし、わからないなりに目線の先にいる人物から強大な力を感じ取ってはいた。それは今までレミィに対して感じていたものではなかった。
神々しく輝く相手にリオは気味の悪さすら感じている。それはまるで、
「ハトレア竜……なのか?」
光の中には確かにレミィの気配があるが、それとは別にリオには何かが見えていた。
それは物語で聞かされていた”ハトレア竜”。天変地異を引き起こすほどの力を持ち、のちに封印されたというその竜は、共に生きる『ハトレア族』や竜と心を通わせることの出来た魔法使いの少女の力もろとも世界から身を隠した。
頭の片隅にあった違和感は、リオの不安を助長させる。「レミィがその魔法使いの少女と同じ力を持っていたとしたら」などと。
「レミィ! レミィなんだとしたら、この光を説明してくれ!」
レミィと呼ばれ、相手はにこりと微笑みをリオに返した。そして瞳を閉じ、何かを唱える。
「ゲート」
――バシュン!
「!」
唱えられた瞬間、辺りにまばゆい光とまっさらな世界が広がり、その場にいた全員が飲み込まれた。
一瞬のことに目を瞑ったリオが次に目を開けた時には白い光の世界があった。先ほどまでいたはずの部屋の装飾も、魔法陣すらも見当たらない。それどころか、レミィやルビーとコロン、ミゲルでさえもその場にいる様子がない。
「おい」
「……⁉︎ キル……ッ」
呆然と立ち尽くしていたリオの傍に、いつの間にかキルが立っていた。キルは何かを見据えている。
「ボケっとすんな、おまえアイツ……レミィをなんとかするんだろ?」
「そう……だけど、さっきの光! それにあれはレミィというより、ハトレアの……」
「ハトレア竜はあんなんじゃねぇよ」
知ったような口ぶりのキルに、リオはさらに困惑する。また何も知らないのは自分だけなのかと焦る気持ちが先走りそうになるが、キルの次の言葉を待つ。
「アイツ、レミィは闇の魔力の持ち主だ。こんな光の空間はまやかし。さっきミゲルが言ってただろ? サンティトルは光の魔力に長けた女との子ども。そして『交わりの光』は闇と光の魔力が介さなければ生まれない。つまりこれは」
「レミィとサンティトルの魔力によって出来ている……?」
「そ。未熟な二人の魔力なんて、すぐに混じっちまう。特にレミィなんて、他人の魔力を増幅しやすい。さっき見ただろ、サンティトルの繋がれていた魔法陣。大方あれの効果で、光の魔力を吸い上げてる」
「闇とか光とか……よくわかんねぇけど、その二人の魔力を断ち切ればどうにかなるのか?」
「さぁね? でもリオくん。そこまで考えつくなら、あとは自分でなんとかやれるんじゃない? キミのマジカルスピリッツはそこにある」
ばくんと波打つ鼓動がリオに響いた。それは先ほど初めて剣を交えた時のものとは違う、もっと純粋で貪欲な力の使い道、「レミィを助けたい」という気持ちだった。
「ずっと……わかんねぇことばっかりだけど。レミィにあとは直接聞く。まずそれからだ」
「ん。いいねぇ、そういう気持ち」
「……キル、お前は何者なんだ。どうしてこんなに知っているんだ?」
「あー? 別に何者でもなく、オレはキル。ちょっと好奇心旺盛なだけ」
「……」
不満げなリオの顔を指さし、キルはゲラゲラと笑う。それにつられて、リオも今までで一番の穏やかな表情で笑う。
「いってらっしゃい、また」
「ああ」
鼓動を高めケモノ耳を携えたリオは、その手に出現した火柱の剣で白い光の世界を空間ごと切り裂いた。




