6-3
ファルはみていた。すべてを。
正しくはみていることしかできなかった。ファルは使い魔であり、主人の命に従って過ごしていたから。今までは。
ずっとそうしてきたはずのファルだったが、最近では本当にそれが正しいのかわからなくなっていた。
主人の命に従い、色々な人と接触し、情報を集めてきたと思っていた。いつしかそれが、ファルの中で楽しい時間や思い出に変わっていたのだ。
ゆえに、迷っていた。このままでいいのかと。
「何をそんなに悩んでいるの?」
『……おみとおし、か』
「どれだけの月日をキミと過ごしていると思っているんだい?」
ファルに問いかけるキュービは穏やかな笑顔を見せる。それがファルは怖かった。「キュービは変わってしまった」、ファルの心にそう呟かせるそんな笑顔だったから。そして、「目の前にいるのは果たして本当にキュービなのか」という疑問も抱かせる。
複雑なファルの心情を察してか、キュービは至って柔和な声色で口を開く。
「ファル、キミにはたくさん助けてもらった。だからもう、自分を生きてもいいと思うよ」
『けいやくを、きるということか』
「ははっ、そんな堅苦しく捉えないでよ」
ケタケタと笑うキュービはもともとのたれ目がより強調され、どこか悲しそうでもあり、安堵しているようにも見える。
「……時代が変わる、ということなのかもしれないね」
『おまえは、だれなんだ』
「んー? 僕はキュービ。そう、キュービだ」
『……おまえは、なにがしたいんだ』
「ふむ……」
ファルの問いかけに、小首をかしげキュービは考え込んだ。しばらくして、はっと顔を上げて明るい笑顔でファルにこう答えた。
「魔力の統合、かな」
『なにをいって……』
「闇も光もない、うん。文字通りの統合! 一緒にする! 最初から分けてはいけなかったんだな。パイと僕のように」
納得したかのように、うんうんとキュービは頷く。
その様子を、ファルはまたもみていることしかできなかった。




