6-1
レミィの意識があたたかい光に包まれている頃、その場は騒然としていた。
周りから見ると、レミィは大量の光に押し寄せられ、文字通り光に呑み込まれていた。その場の誰もが、最悪の事態を想像し、そして「今動けば自身も危ない」と感じさせる威力がそこにはあった。
ただ一人、不敵な笑みを浮かべる者を除いては。
「はは、ははははは!」
ミゲルは盛大に笑いレミィに向かう光を見ていた。光が放たれた弾みで、ルビーがミゲルを拘束していた陣も解けてしまい、その一瞬でミゲルは自身の体制を整えた。
自由を手にし興奮した様子のミゲルは叫ぶ。
「これが、キュービ様の言っていた『交わりの光』……!」
そのミゲルの様子は無邪気な子どもであり、貪欲に塗れた大人でもあった。
唖然としていた一同だったが、楽しげに叫ぶミゲルの言葉にコロンが眉をひそめる。
「交わりの光……っテ! かつてハトレア竜を鎮めタ……?」
「またハトレアかよ……!」
コロンの言葉にリオは苛立ちを見せる。ここにきて、何度も聞いた”ハトレア竜”の話。その話を聞いたのはレミィからだったが、聞いたおとぎ話をレミィが体現する意味を、リオは理解できなかった。
「リオくん!」
ルビーが混乱するリオに駆け寄る。
ルビーは先の戦いでかなりの魔力を消費し、その歩き方からも明らかに疲れが見えていた。
「リオくん。あなたが今どれだけの魔力を持ち、どれだけの影響力があるかわかりません。でも、あの光……ああなったレミィを止められるのはあなただけです……!」
リオの肩を掴み、必死なルビーから絞り出された声は、当のリオによって跳ね返される。
「どうして俺が! ここに来てから、ずっとわけわかんねぇことばかりで……! 俺になんの意味があるんだよ!」
「……純粋なる闇だからだよ、おまえ」
ルビーの腕を振り払い、その勢いで掴みかかりそうなリオはキルの一言で止まった。ルビーはその発言に、全て諦めたかのように肩を落とす。
キルの顔はどこか達観しているようで、先ほどまでの人物と違うようにリオは思えた。
「純粋なる闇……?」
さらに困惑するリオを余所に、キルは淡々と口を開き続ける。
「そう。この国……いや、ここいらの地域は闇の魔法の勢力が強い。にもかかわらず、闇の魔力が薄すぎる。手っ取り早く魔力を補充するには、他者からの魔力を献上すること。そこに召喚されたのが、かつて闇魔法の勢力で一番の魔力を持った、この国の建国者。その魔力を引き継いだ人物」
「それが……俺だっていうのかよ。俺のいた世界では魔法なんてなかった!」
「言ったろ? ここでは風土によって魔力を得られるって。生まれ持って魔力のある人間が、ほかの世界で魔力を感じられなくても、ここの風土が魔力を底上げする」
困惑、混乱を隠せないリオは浮遊している感覚へ陥りそうになる。キルの発言はリオをからかっているようでもなんでもなく、ただ事実を話しているようだった。
「おイ、悠長に話している場合カ!」
コロンに叫ばれ、リオとキルが視線を戻すとレミィに纏う光が強くなっていた。そして、その光のレミィにミゲルが近づいている。
ルビーは掴みかかろうとしていたリオを退け、魔法陣を展開しながらミゲルを止めに入る。
「ミゲル! それ以上近づくとお前も消し飛ぶぞ!」
「はははは、その程度の力かルビー! この魔力……この魔力さえ手にすれば、オレは最強になるのだ!」
「お前はキュービを盲信しすぎている! 碌なことにならない!」
「ふん、笑わせるな。あいつは俺の手段でしかない! 愚息……サンティトルが産まれた時から、こうなることを待ち望んでいた……!」
ミゲルが何やら唱えると、倒れ込みぐったりとしていた息子たち二人が、まるで操り人形かのごとく動き出した。なにやらミゲルは術をかけているようで、すでに息子たち自身の意思はないように見える。
息を合わせたかのようにカクカク動く息子二人にミゲルは指示を出し、息子たちの魔力により盤面が切り替わる。部屋の装飾がガチガチと音を立て、模様替えのように切り替わっていった。




