5-8
レミィは驚いていた。
自分自身の行動力にもそうだが、普段温厚なルビーが身を振りかざして魔法を使っていることにも、優しくしてくれたコロンがボロボロになっていることにも、ミゲルの禍々しく感じる気配にも。
そして、自分に魔力を感じる力があることにも。
ルビーやコロンが心配だと飛び出してきたはいいものの、特にこれといって策があるわけではないレミィは、その雰囲気にすでに飲み込まれそうになっていた。
「ルビー先生を離して! ……ルビー先生が捕まえてた、のかな?」
「……レミィ、あなたこそ離れていてください。今から、少し危ないので」
ルビーの意識がレミィに一瞬向いた隙をミゲルは見逃さなかった。
「バカな弟子を持ったな!」
「……ァッ!」
体制を整えたミゲルは、隠し持っていた小さな杖からの光線でコロンを捕らえた。先ほどまでの魔法陣からの魔力よりは低いが、今の疲れ果てたコロンにはそれで充分拘束となる。
「コロンちゃん!」
すぐさまルビーは戦闘態勢に切り替えるが、すでにコロンはミゲルの手中にいた。
「生憎だが、この部屋にいる限りオレの魔力は尽きることなどない。ここは聖堂、キュービ様が誂えてくださった神聖な部屋。お前ら異端ごときの魔力で、俺の純潔な魔力を封じ込めると思うな!」
「はっ、詠唱すら忘れたお前もすでに異端だろ? パイの提言を忘れたのか」
「パイなぞ、すでに消滅した者。今の世を知る由もないのよ。ここを統べるはこのオレ、ミゲル! 次第にキュービ様と共にこの世界そのものを統治するのだ!」
「バカな妄言はよせ。キュービの行いを忘れたとは言わせない」
レミィは驚いた。
あれほど口うるさく品行方正を説いていたルビーの粗暴な振る舞いに。
そして、この部屋に足を踏み入れたときから感じる、今までにない自身の魔力の高ぶりに。
「なに……これ」
その高ぶりは抑えようとすればするほど威力を増しているように感じた。
「やだ、やだ……」
「……レミィ?」
ミゲルを見張っていたルビーだが、様子がおかしいレミィに気が付き声をかける。
「先生、わたし、わたし何かが……!」
「レミィ……まさか」
その時はルビーが気が付くと同時、もしくは少し早く訪れた。
部屋に張られている魔法陣が一斉に光を帯び、強烈な閃光となりレミィへ目掛けて放たれた。あまりにも一瞬のできごとで、その場にいたミゲルやコロン、ルビーまでもがただ見ていることしかできずその場に留まる。
「きゃぁぁぁぁぁああ!」
「レミィ!」
部屋全体にレミィの悲鳴がこだまする。
そしてその悲鳴は廊下を走るリオとキルの耳にも届いた。
「なんだ、今の声⁉︎ レミィか⁉︎」
「お。思ったより、早かったかな」
悲鳴の聞こえた元にたどり着くと、入り口の前にヒージが横たわっていた。
「おい! 爺さんどうした!」
リオが声をかけるとヒージは呻きつつも目を開いた。
「リオさん……先ほど、レミィさんとこの部屋についたのですが、強い光が……」
「強い光……?」
「そいつ、あの魔力に当てられたんだろ。見てみな」
キルの目線を追い、リオは扉の開いた部屋の方向へと顔を向ける。
点在するルビーやコロン、見覚えのないミゲルの姿を捉え、皆同じものに目線を向けていた。見ると、紫に輝く光が人型になっている。
「レミィ!」
すぐさまそれがレミィだと気が付いたリオは駆けだそうとするが、キルがリオの首根っこを掴み阻止した。
「おい! レミィだろあれ!」
「落ち着け、あの光に当てられてこいつみたいになるぞ」
「じゃあどうすれば!」
「聞いてただろ、ハトレアの話を」
「ハトレアの……」
城下町、そしてレミィを助け出すときに話していたハトレア竜の物語。
それと今の関係性がつながらず、リオは困惑した。今自分が何をしたらよいかを考えながら。




