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サンティトルは珍しく城壁の上にいた。
「ううう、風が強い! 早く城に帰るぞ!」
「ですが坊ちゃん。キュービ様のご伝言によれば、城壁で待てと……」
「ええい、うるさいな! だいたい、そのキュービって奴はなぜボクの前にも姿を現さない! 一国の王子に対して失礼にも程がある!」
「国王様や第一、第二王子様共にお知り合いとのことですからね。なにか訳があるのかもしれません」
「訳など知らぬ!」
数刻前に、またも一人の番兵がキュービと名乗る人物から言伝を預かったと、サンティトルに話しかけてきた。
一国の王子に容易く話しかけてくる番兵たちを、サンティトルは快くなど思っていなかったが、相手が自分自身に直接言ってこないので仕方がない。
話を聞くと、『城下町に黒髪と金髪の少女が降り立つ』と言われただけだった。
いよいよ番兵たちを頼りないと思い始めていたサンティトルは、ヒージと共に城壁へ向かったのだが。
「待てど暮らせど、全然来ないではないか!」
「落ち着いてください、坊ちゃん」
「ボクのどこが、落ち着いていないと言うのだ!」
なかなかそれらしきものが現れないので、サンティトルの苛立ちは頂点に達しそうになっていた。その時、
「ん?」
裏門から入ってくる人影をサンティトルは捉えた。慌てて双眼鏡を取り出し、どのような人物かを確認する。
あまり見かけない風貌。一人はおさげ髪の金髪で、おそらく魔法使いだろう。杖を持ち、微かに魔力を感じる。もう一人は、深々と帽子を被り表情はよく見えない。
「こんな時期に、裏門から訪問者? しかもあちらは『魔の森』ではないか……」
気になって見ていたサンティトルはしばらくその二人を観察し、にやりと確信的な笑みを浮かべた。
「ヒージ、あの娘だ」
「はい、坊ちゃん」
突風に吹かれ、勢いよく帽子が飛んだ。その様子を金髪の少女は笑いながら見ている。笑顔の先にいる相手は、黒髪の少年だ。
「行け!」
「はっ」
サンティトルはヒージに命令すると、そのまま城壁を降りた。
「やっと、会えるな。ボクの姫よ」




