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家を出たレミィとリオは、森を抜けてミューハ国の裏門までたどり着いた。
あれだけ魔物が頻出していたにも関わらず、なんら変わりない道をただ真っ直ぐに突き進み、あっという間にそこまで辿り着いた。まるで、何かに導かれているかのように。
魔物や未知の生物と対峙することになると予想していたリオにとって、それはとても不可解であった。
しかし、隣にいるレミィが呑気なもので、「そういうものか」と思う以外にリオに考える術はなかった。
「わあ! たかーい!」
初めて近くで見る城壁に興奮するレミィ。
呆れ返りつつも、和やかな気持ちで見ていたリオだったが、はたと嫌な感覚を思い出した。
「レミィ。これから国に入る前に、気になることがある」
「どうしたの?」
「……レミィたちと出会う前、俺はこの国の城にいたんだ、気づいたら。そして、兵たちに追われた」
「あの時の!」
レミィはリオと初めて出会った森を思い出す。
「リオがたくさんの誰かに追われてて、木の上からリオが降りてきたら、いきなり口を塞がれてびっくりして……」
「……っ! それは、本当に……悪かったよ」
ばつの悪い顔をするリオを見て、ケラケラと笑うレミィ。
「ふふふ、リオと仲良くなれて良かった」
「おま! そういう話じゃなく!」
高まりそうになる鼓動を何とか抑えつつ、リオは話を戻した。
「城のやつら、かなり必死な形相で追ってきたんだ。不法侵入って言われたらそれまでだけど。そんな感じじゃなく、何か目的があるような」
「リオを捕まえなきゃいけない目的?」
「あぁ、わからないけど。『黒髪を逃がすな』って、口々に言っていた気がする」
その時を思い出すリオは神妙な面持ちで、他にも何かを考えているようだった。
「また、追われることになったら……」
「大丈夫!」
迷惑をかけると悩むリオに、からっとした爽快なレミィの声が響く。
「そのときはまた、森に逃げよう! それに城下町も広いみたいだし。城の人たちがわざわざ下の方を見ないよ!」
「いや、そういう訳じゃないと思うが……」
「それにコロンさんも言ってたけど、何かがおかしいっていうのは『異世界の扉』が開いたってことかも! だから、城の人たちがリオを追って、秘密を探ろうとしているのかもしれないよ!」
「俺に秘密もなにもないけどな」
レミィの元気な押しの強さは、どことなくルビーと近しいものを感じる。さすが師弟、と思うリオだが、あながちレミィの言うように自分が何かを握っているのかもしれないとリオは感じた。
「その『異世界の扉』ってのは、普段知られていないんだよな?」
「うん。わたしも初めて聞いたよ」
「なら、そこから異人が来たら騒ぎ出す……か?」
少し俯いて考え込んだリオは、ポンと手を打ってレミィに向き直る。
「よし、町に入ったら変装できそうなものを調達しよう。どうせコロンの言っていた店に行くんだ。そこに着くまではなるべくひっそり動く」
「うん、わかった! あ、ルビー先生が帽子を渡してくれてたけど、いる?」
「それを先に言え……!」
この時間はなんだったのかというレミィの言動に、今度は本気で呆れつつ、リオの緊張はほぐれていった。
城壁には巨大な門があり、番兵もいるため入るのは難航するかと思っていたレミィとリオだったが、案外すんなりと門をくぐることができた。
「ルビー先生がくれた証明書凄いんだね」
レミィが番兵に見せた証明書は、ルビーが魔道語によって書いた証書で、何が書かれているかはわからない。それが、ジャムアルータ大陸では旅人の証となり、散らばる国に入る時は必要となる、という話だった。
「用意周到だな、気味が悪いくらいに」
顔と髪の毛が見えないように、深く帽子を被ったリオが小言を発した。
能天気なレミィはさておき、リオはまだルビーを信用せずにいた。
「ルビー先生は色々知っているからねぇ。そうだ、杖を小さくする魔法も教えてくれたんだよ」
小言を小言と受け取らないレミィは、その能天気さで返事をする。いつも持っている杖は手のひらに収まる形となっており、まるで本当に絵を描く筆のようになっていた。
「あんなだけどね、わたしにとっては命の恩人で、勇者なんだよ」
「……勇者?」
含むような笑顔を見せレミィは言った。リオは初めてのその笑顔に困惑する。
「あ、町だよリオ!」
リオの困惑をよそに、レミィは門をくぐった先の広がる町並みに再度気持ちを高ぶらせた。
「早く行こう!」
「あ、おい走るなって……!」
先ほどの笑顔が気になったリオだったが、レミィが全速力で町へ向かうのを止めるために、その疑問は頭の片隅へ置くことにした。




