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恋愛短編集  作者: 夢呂
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8/16

イエロードッグ

「ほっとけよ!」


彼と初めて会った日を、覚えてる。

社会を恨んでた。この世の中を恨んでた。

周りは敵しかいない。

自分に、味方なんて一人も居ないんだと決めつけて。


近付くものには噛みついてかかる彼に、クラスのみんなはいつしか、触れないようになった。


小雪(さゆき)

「ん?」

「ありがとな、」

「え?どうしたの改まって、」


ふはっとつい、笑いがもれてしまった。

だってあの(● ●)、一匹狼だった屋良(やら)くんがお礼なんか言うから。


「小雪がいてくれたから、俺…いまここにいる」


ねぇ、屋良くん。

それは、私も同じなんだよ。


貴方がそうやって、前を向いてくれたから。

私も今、ここにいられるんだよ。


ただ、……ひとつ。

ひとつだけ、ね。


想定外だったのは―――――。


私が君にー――担任教師以上の感情を抱いてしまったこと。




君は私の生徒で。

私は君の担任教師で。

それ以上でも、それ以下でもない……はずだったのに。


卒業式の後。

誰もいなくなった薄暗い教室。


君とここにいられる最後の時間。


絶対泣かないって決めてた。


泣いてしまったら、まるでお別れみたいだから。


泣かないって、決めてたの。



小雪(さゆき)…、泣くなよ…」


私の頬に屋良くんが流れるように指を滑らせる。


「最後くらい、“先生”って…、つけなさいよ」

「やだ」


屋良くんは私を呼び捨てにしていた。

絶対“先生”って呼んでくれなかった。


「だって小雪は、“小雪”だから」


屋良くんの瞳が、私をとらえる。


「なぁ。もう“先生”じゃない“小雪”になれよ。」

「屋良く…んっ」


私たちの世界はこれから……――――。

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