隣にいる理由
人との出逢いは選べない。
出逢い方は、いつだって突然で偶然。
だけど神様…――こんな出逢い方はあんまりです。
「心花ちゃん、気分はどう?」
コンコンとノックする音がして、返事をする前に戸が開いた。
(――――また、来た。)
花束を持って現れたのは、数ヵ月前に出逢ったヒト。
大学生の私より一回りほど年上の、社会人男性。
長身に清潔感のあるスーツ姿。
いかにも営業マンみたいな、いつも爽やかで優しい笑顔を浮かべてる。
そして今、一番、私が見たくない人の顔。
「もう来なくていいって、言ったじゃないですか」
目をそらして、それだけ吐き捨てる私にはお構い無しに、彼は私の病室のベッドへと歩み寄る。
「そういうわけにもいかないよ、僕のせいで怪我させてしまったのだから」
「・・・・」
――――違う。
貴方は、なにも悪くない。
私が貴方に見とれて…立ち止まったりしたから。
だけどそれが言えない。
いや、言わない。
言えるはずがない。
だってこれが―――私と貴方の唯一の接点だから。
「今日、霞草が綺麗だったから花瓶、取り換えてくるね」
――毎日のように花束を持って見舞いに現れる彼。
それは懺悔?それとも少しは好意もあるの?
毎日会うたびに膨れ上がる私の恋心。
だからもう、やめてほしい。
これ以上会っていたら本当に、……戻れなくなりそうで怖いの。
「こんなことしてたら……彼女に誤解されませんか?」
声が震えた。聞くべきじゃないと分かってた。
分かってたんだ、彼には大切な人がいるって。
(だけど、期待したく…なるじゃない?)
「彼女?――はは、」
花瓶と花束を手にしてこちらを振り返った彼が、軽く笑うとゆっくり私のベッドへ歩み寄る。
「――――心花ちゃんがそんなこと気にする必要はないよ」
そうやって、顔を近づけて。
そうやって、優しく微笑んで。
そうやって、頭を撫でたりするから。
(勘違い、してしまうんだよ…)
これは、子供扱いですか?
一回り年下の女は、眼中にない?
そう思ったら惨めになるから、私は子供扱いされているなんて認めない。
(好き。好き。―――――好きだから…)
もう来ないで欲しい。
だけど明日も、……会いたい。




