ふいうち2
放課後の――さらに言うと帰りがけ――私は名前を呼ばれた。
私の名前を、初対面の男子が知っていてもあまり驚かない。
というのも、高校に入学してからこういうことはよくあったのだ。名前も、クラスも、そもそも学年すらも分からない人達から呼び止められて、突然の告白。
(今日もまた、それなのだろうか。)
なのに、呼び止めておきながら彼は硬直して動かなくなった。
(人間が、石化してるの初めて見た…)
「何か用…かな?」
母性本能だろうか?あまりに気の毒になって、私は自ら問い掛けた。
「あぁ、すみません。急に呼び止めたりして」
石像が喋ったのかと一瞬驚いて、ああ人間かと思い直す。そう思ってしまうのも無理ないほどに彼の石化は見事で、口しか動いてなかった。
(相当、緊張してるんだろうなぁ…)
早口だし、なんか目も合わないし。
だけど不思議と今までのような、嫌な気はしなかった。
彼が、本気で、想いを伝えようとしてくれてるのは伝わったからかもしれない。
「君のことが好きです。」
ほら。ね。
やっぱり告白だった。
私はつい、しかめっ面になってしまう。
(―――“君が好き”、嫌い。)
過去にも何度か言われてきたが、安っぽい響きでより白ける。
まるで付き合う前の口実。
つまりあれでしょ?
私を彼女にして、見せびらかしたいんでしょ?
自慢の彼女にでもなってくれって?
――――あの先輩も、クラスの男子も。
私のことが好きとか言っていたけれど、そんなの嘘。
(この人も、どうせ、同じ・・・・)
「で?」
私は風に靡く長い髪を耳にかけながらわざと素っ気なく言った。
(言わないの?―――“付き合ってください”って)
言ってくれたら即行でお断りしますよ、今まで通りね。
「え?いや、だから…あの、」
聞き返されるのは想定外だったらしく今度は青くなったり赤くなったりしながら彼は狼狽えていた。
どうやら石化は解かれたらしい。
うん、やっぱり人間だった。
私は彼を観察しながら、彼のコロコロ変わる表情は面白いと思った。
「フッてくれませんか?」
ようやく覚悟を決めた目で、顔を上げたと思ったら、彼はおかしなことを言った。
(!?)
“付き合ってください”が来ると思っていた私は、突然の真逆の告白につい噴き出してしまった。
「ふ…っ」
告白されて、笑ったのは初めてだ。
(なにこの人。どういう人?)
私が今知ったのは、彼は真面目で。嘘がない人で。
そして、想定外を起こす人。
(知りたい、かも…)
―――こう言ったら貴方は、どう反応する?
「・・・嫌です、って言ったら?」




