隣の家の鷺ノ宮くん
隣の家の鷺ノ宮くんの家は、でかい。
敷地は、我が家の10倍。
やたら高そうな高級車は、もちろん外車だ。
車庫の大きさが、家の敷地と同じくらいだ。
「つぐみ、おはよう。」
「・・・おはよう。」
当たり前みたいに、毎朝私の家の前に待っているのだ。
───鷺ノ宮家の、その外車が。
「あのさ、鷺ノ宮くん。これ毎朝説明してると思うけどね。」
「“朝、待ってなくていい”、だろ?さすがに毎日言われてれば覚えてるよ」
「じゃ、じゃあさ・・・」
「だけど、それを承諾した覚えはない」
「俺はつぐみと一緒に登校したいし、少しでも長くつぐみといたいんだ、って俺も、これ毎朝説明してるよな」
「・・・・ははは、そうだ、ね・・・・」
渇いた笑いしか出てこない。
───彼、鷺ノ宮くんは鷺ノ宮財閥の跡取り息子。しかも、一人っ子だそうだ。
まだ小学三年生の彼にこんなになつかれたのは、学校の帰り道、私が声をかけたのが始まりだったわけで。
いやいや、ナンパとかではないですよ?
鷺ノ宮くんが男子高校生に囲まれていたから、てっきりカツアゲに遭ってるのかと思って。
だから助けなきゃって・・・、その一心で。
ま、まぁそれは私の勘違いだった訳ですけど。
『決めた。俺はつぐみと結婚する』
小学三年生なのに、ませてるなぁ、なんて呑気に笑っていられたのはその日だけだった。
それから突然、我が家の横にでかい家が建ったり、毎朝こうして外車が家の前に停まっているようになった。もちろん、運転手付きだ。
とにかくもう、「本気じゃないよね?」なんて聞けないくらいガチな感じなんです。
「あのさ、鷺ノ宮くん」
「どうした、つぐみ」
「私と鷺ノ宮くんじゃ、釣り合わないよ」
「釣り合いは必要ないだろ?俺はつぐみが気に入った。だから結婚するんだ」
「いやいや、待ってよ。鷺ノ宮くんは将来財閥の跡取りでしょう?私はただの、サラリーマンの娘だし。」
「跡を継いだら、つぐみにもっと贅沢させるのが俺の夢だ。もっと事業を拡大するつもりだ。楽しみにしててくれ」
「っていうか、私今16だよ?年の差もあるし」
「俺が18になれば、つぐみは25だ。なにも問題ない」
「あとは────・・・」
ええっと。
何か、探さないと。
探さないとこのまま、流されて本当に結婚してしまいそうだ。
「つぐみ、」
「ん?」
「つぐみは俺のこと、嫌いなのか?」
鷺ノ宮くんが珍しく拗ねたようにそう言うから。
かわいいな、って思ってしまった。
「嫌いじゃないよ?」
「そうか、なら良かった。では、予定通り俺の18才の誕生日に結婚しよう」
「・・・・へ?」
─────詐欺だ。
さっきまでしゅんとしていたのに、嫌いじゃないって言った途端それですか。
「早く見たいな、つぐみのウェディングドレス」




