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第3話 逃げ道は最初からなかった

とりあえず前書きなんか書こうと思って書いてます(?)。先生やお母さんまで琴葉の味方をしだしたが拓海はどう立ち回るのか。第3話スタート!!

「……おはよう、拓海♡」

「……」

俺は、目の前の光景を理解できずにいた。


朝。

自分の部屋。

自分のベッド。

そして、その隣に琴葉。

「……なあ、琴葉」

「なに?」

「お前、いつからここにいた?」

「んー……拓海が寝る前から?」

「それはおかしいだろ」

「そうかな?」

琴葉は首を傾げた。

「だって、昨日お母さんに泊まっていいって言われたし」

「泊まるのはまだ分かる」

「分かるんだ」

「いや、分からないけど! 百歩譲ってリビングとか客間だろ!」

「でも、拓海の部屋が一番落ち着くから」

「俺は落ち着かないんだよ!」

「えー」

琴葉は不満そうに頬を膨らませた。

その顔を見て、俺はため息をつく。

……いや、待て。

何で俺が悪いみたいになってるんだ?

「とにかく、もう出ろ。着替えるから」

「うん」

琴葉は素直に立ち上がった。

そして、部屋を出る直前。

「拓海」

「なんだよ」

「今日も一緒に学校行こうね」

「……」

「昨日も一緒に行ったし」

「それはそうだけど」

「明日も一緒に行こうね」

「気が早いな」

「明後日も」

「……」

「その次の日も」

琴葉は、にっこりと笑った。

「ずっとね」

「……はいはい」

俺が適当に返事をすると、琴葉は満足そうに部屋を出ていった。


俺は一人になった部屋で、深く息を吐いた。

「……なんだかな」

昨日からずっと。

琴葉のペースに巻き込まれている気がする。


佐藤との約束。

駅前のカフェ。

先生への相談。

俺のスマホ。

そして、家に泊まること。


どれもこれも、俺の知らないところで話が進んでいる。

「……」

俺は自分のスマホを見る。

パスコードを入力する。

ロックは解除された。

……当たり前だ。

なのに、

なぜか、少しだけ不安になった。

俺はスマホを手にしたまま、メッセージアプリを開く。

すると、


『佐藤:今日も水城と一緒に帰れよ』

『佐藤:というかもう付き合えよ』

『山本:琴葉、今日も楽しみにしてるからね!』

『母さん:今日は琴葉ちゃんと夕飯食べるからね』

『担任:昨日の話、よく考えておくように』


「……」

俺は無言でスマホを閉じた。

……なんで担任まで個人的なメッセージを送ってくるんだよ。

俺の周りは、完全におかしくなっていた。

いや、

正確には。

琴葉によって、おかしくされていた。


教室へ向かう途中。

琴葉は、いつものように俺の隣を歩いていた。

「ねえ、拓海」

「なんだよ」

「今日のお昼、一緒に食べようね」

「いつも一緒に食べてるだろ」

「うん。でも今日は特別」

「何が?」

「秘密」

琴葉は楽しそうに笑った。


その時。

「おーい! 水城! 柊!」

前方から佐藤が走ってきた。

「お前ら、朝から一緒かよ」

「幼馴染だからな」

俺が答えると、佐藤は琴葉を見る。

「水城、今日の作戦は?」

「佐藤くん、声が大きいよ?」

「おい」

俺が佐藤の肩を掴む。

「今、何て言った?」

「いや、何でもない」

「作戦って何だよ」

「いや、だから何でもないって」

佐藤は露骨に目を逸らした。

俺は琴葉を見る。

「琴葉」

「なに?」

「今日、何かするつもりか?」

「しないよ?」

「本当か?」

「うん」

琴葉は笑顔で頷いた。

「今日は、普通に過ごすだけ」

「……」

嫌な予感しかしない。

俺の経験上。

琴葉が「普通」と言った時は、だいたい普通ではない。

教室に入ると、何人かのクラスメイトがこちらを見た。


そして。

「おー」

「来た来た」

「今日も一緒だ」

「もう完全にカップルじゃん」

「だから違うって!」

俺が叫ぶ。

しかし、誰も聞いていなかった。

琴葉は俺の隣の席に座ると、満足そうに微笑んだ。

「ね?」

「何が?」

「もう、みんな拓海と私が一緒にいることに慣れてきたでしょ?」

「……」

「これが大切なんだよ」

「何がだよ」

「当たり前にするの」

琴葉は、俺の机に手を置いた。

「拓海が私と一緒にいることを」

「……」

「誰も疑問に思わなくなるまで」

その笑顔は、優しかった。

けれど、

俺は、なぜか背筋が寒くなった。


昼休み。

俺はいつものように、琴葉と弁当を食べていた。

「はい、拓海」

琴葉が卵焼きを差し出してくる。

「自分で食べられる」

「知ってるよ?」

「じゃあ、何で差し出すんだよ」

「食べさせてあげたいから」

「嫌だ」

「えー」

琴葉は残念そうな顔をする。

俺はそのまま弁当を食べ続けた。

すると、

「柊」

後ろから声をかけられた。

振り返ると、クラスメイトの男子が立っていた。

「ちょっといいか?」

「ん?」

「今日の放課後なんだけどさ」

「おう」

「一緒にゲーセン行かないか?」

「……」

俺は一瞬、琴葉を見る。

琴葉は笑顔だった。

笑顔だったが。

なぜか、箸を持つ手が止まっていた。

「今日か?」

「うん。佐藤も来るし」

「……」

俺は少し考えた。

昨日は佐藤との約束がなくなった。

その前も琴葉と一緒に帰った。

そして、今日も。

「……分かった」

「お、マジ?」

「ああ。久しぶりに行くか」


その瞬間。

琴葉の笑顔が、ほんの少しだけ消えた。

「……琴葉?」

「ううん」

琴葉はすぐに笑顔に戻った。

「楽しんできてね」

「おう」

「……楽しんできてね」

「二回言った?」

「ううん」

琴葉は、にっこりと笑った。

「何でもないよ?」


放課後。

俺は教室を出ようとしていた。

「拓海」

琴葉が呼び止める。

「ん?」

「今日、どこ行くの?」

「ゲーセン」

「誰と?」

「佐藤たちと」

「そっか」

琴葉は、少し寂しそうに笑った。

「楽しんできてね」

「……」

その顔を見ると、やはり罪悪感が湧いた。

だが。

「今日は俺も友達と遊ぶからな」

「うん」

「たまにはいいだろ」

「うん」

「……本当に大丈夫か?」

「大丈夫だよ」

琴葉は笑顔を浮かべた。

「私、拓海のこと信じてるから」

「……」

「だから、楽しんできて」

「おう」

俺はそう言って、教室を出た。


その時。

琴葉のスマホが震えた。

彼女は画面を見る。

そこには、佐藤からのメッセージが表示されていた。

『本当に行かせるの?』

琴葉は、少しだけ考え。

『うん』

と返信した。


そして。

『でも、帰りは私が迎えに行くから』

そう付け加えた。


「拓海、久しぶりじゃん!」

「最近ずっと水城さんと一緒だったもんな」

ゲーセンに着くと、佐藤たちが待っていた。

「別に、普通だろ」

「普通じゃねえよ」

佐藤が笑う。

「お前、最近ずっと水城と一緒じゃん」

「だから幼馴染だからだって」

「はいはい」

「何だよ、その反応」

俺たちはゲームを始めた。

久しぶりに琴葉がいない時間。

俺は、少しだけ安心していた。

やっぱり、

友達と過ごす時間も悪くない。

「拓海、次これやろうぜ!」

「おう」

「お前、前より下手になってね?」

「うるせえ!」

笑う。

騒ぐ。

くだらない話をする。

それだけなのに。

俺は、妙に楽しかった。


そして、

ふと、スマホを見る。

『琴葉:楽しんでる?』

メッセージが届いていた。

「……」

俺は返信する。

『うん。楽しい』

すぐに既読がついた。

『よかった♡』

それだけだった。

俺はスマホをポケットにしまう。

「どうした?」

佐藤が聞いてきた。

「いや、何でもない」

「水城?」

「……まあ」

佐藤は、苦笑した。

「お前さ」

「なんだよ」

「本当に気づいてないのか?」

「何が?」

「水城が、どれだけお前に依存してるか」

「……」

「お前がいないと、あいつはどうなると思う?」

「どうって……」

琴葉は、いつも笑っている。

成績もいい。

誰にでも優しい。


だから、

「別に、普通に過ごすだろ」

俺が答えると。

佐藤は、何とも言えない顔をした。

「……そうだといいな」

「何だよ」

「いや」

佐藤は、それ以上何も言わなかった。


数時間後。

俺たちはゲーセンを出た。

「じゃあな、拓海」

「また遊ぼうぜ」

「ああ」

俺は友達と別れた。

そして、駅へ向かおうとした。

その時、

「拓海」

背後から声がした。


俺は振り返る。

「……琴葉?」

そこには琴葉が立っていた。

制服姿のまま。

「何でここにいるんだ?」

「迎えに来たの」

「いや、でも俺が帰る時間なんて――」

「分かるよ?」

琴葉は笑った。

「拓海のことだから、だいたいこの時間かなって」

「……」

「それに」

琴葉はスマホを取り出した。

「佐藤くんが教えてくれたから」

「佐藤!?」

俺はすぐにスマホを取り出した。

佐藤とのグループチャットを見る。

『佐藤:水城、今から拓海帰るぞ』

『佐藤:駅前で待ってれば?』

『佐藤:あとは頼んだ』

「裏切り者ぉぉぉぉぉ!」

駅前に俺の叫び声が響いた。

琴葉は、楽しそうに笑っている。

「ね?」

「何がだよ」

「ちゃんと帰りは一緒」

「お前、俺が一人で帰るという選択肢を最初から消してないか?」

「うん」

「認めるな!」

琴葉は俺の隣に並ぶ。

そして、自然な動作で俺の腕に手を絡めた。

「今日は楽しかった?」

「ああ」

「よかった」

「……」

「でも」

琴葉は、俺を見上げる。

「私がいないところで、そんなに楽しそうにしないでね?」

「は?」

琴葉は笑っていた。

冗談だと思った。

「何でだよ」

「だって」

琴葉は、俺の腕を少し強く抱いた。

「私も一緒にいたくなるから」

「……」

「次は、私も一緒に行くね」

「いや、男同士で遊ぶ時もあるだろ」

「じゃあ、私も男装する」

「そういう問題じゃない!」

琴葉は楽しそうに笑った。

俺はため息をつく。

やっぱり、

琴葉はいつも通りだ。

少し強引で。

少し変で。

でも、

「……まあ、今日は楽しかったよ」

俺がそう言うと。

琴葉は足を止めた。

「本当?」

「ああ」

「私がいなくても?」

「……」

琴葉の目が、じっと俺を見つめている。

「……まあ、楽しかった」

正直に答える。

琴葉はしばらく黙っていた。

そして、

「そっか」

と、笑った。

「じゃあ、次はもっと楽しくするね」

「どうやって?」

「拓海が、私なしでは楽しくないって思うくらい」

「……」

「楽しみにしてて」

俺は、嫌な予感がした。


翌朝。

教室に入った瞬間。

俺は異変に気づいた。

「……あれ?」

俺の机の周りに。

何かが置かれている。

「何だこれ?」

机の上には。

小さな紙袋。

そして。

黒板には。

『柊拓海くん、お誕生日おめでとう!』

と書かれていた。

「……俺、今日誕生日じゃないぞ?」

「知ってる」

琴葉が答えた。

「じゃあ何で?」

「拓海が学校に来た記念」

「毎日来てるだろ!」

琴葉は笑った。

「でも、今日は特別だから」

「何が?」

「今日は、拓海が私のことをもっと好きになる日」

「そんな記念日あるのかよ」

「今日作ったの」

「作るな!」

周囲を見る。

クラスメイトたちは、みんな楽しそうにしている。

「水城さん、頑張って!」

「柊、今日は逃げるなよ!」

「何の話だ!?」

俺が叫ぶと。

琴葉は俺の手を握った。

「拓海」

「なんだよ」

「今日、放課後空いてる?」

「……」

俺は一瞬、警戒した。

「何をするつもりだ?」

「デート」

「断る」

「即答?」

「昨日もそうだったけど、今日は友達と――」

「今日は、クラス全員で行くから」

「……は?」

俺は固まった。


琴葉は、笑顔で言った。

「みんなで遊園地に行くの」

「いや、聞いてないんだけど!?」

「昨日、みんなにお願いしたの」

「またかよ!」

「だって、拓海が私と二人きりだと緊張するかなって」

「いや、そういう問題じゃ――」

「だから、みんなで行けば安心でしょ?」

「……」

確かに。

理屈だけなら分かる。


だが、

「何で平日に遊園地に行くんだよ!?」

「学校にお願いしたの」

「学校に!?」

琴葉は、にっこりと笑った。

「先生が許可してくれたよ」

俺はゆっくりと担任を見る。

担任は、黙って親指を立てた。

「先生ぇぇぇぇぇぇ!?」

教室中に笑い声が響く。

琴葉は、俺の手を握ったまま。

「楽しみだね、拓海」

「……」

俺は、もう何も言えなかった。


そして、

その日の放課後。

俺たちは、本当に遊園地へ向かった。

クラス全員で。

ただ、

遊園地に着いてから。

俺は、すぐに気づいた。

「……あれ?」

クラスメイトたちが。

一人。

また一人と。

別の方向へ散っていく。

「おい?」

佐藤は、俺の肩を叩いた。

「じゃあな」

「は?」

「俺たち、別のアトラクション行くから」

「いや、琴葉は?」

「水城と一緒にいろよ」

「お前らも一緒に――」

「無理無理」

佐藤は笑った。

「俺たち、二人の邪魔したくないし」

「いや、最初からそのつもりだったのか!?」

佐藤は親指を立てた。

「頑張れよ」

「何を!?」

佐藤は去っていった。

周囲を見る。

誰もいない。

いや、

正確には。

琴葉と俺しかいない。

「……」

「……」

琴葉は、楽しそうに笑っていた。

「拓海」

「なんだよ」

「二人きりになっちゃったね」

「お前の計画だろ!」

「うん」

琴葉は、素直に頷いた。


そして、

俺の手を取った。

「じゃあ、行こ?」

「どこへ?」

琴葉は、遊園地の奥を指差した。


そこには。

大きな観覧車があった。

「まずは、あれ」

「……」

「二人で乗ろう?」

俺は空を見上げた。

逃げ道を探す。

だが、

右には琴葉。

左にも琴葉。

いや、左に琴葉はいない。


しかし、


俺のスマホが震えた。

『佐藤:逃げるなよ』

「……」

続けて、

『母さん:琴葉ちゃんをよろしくね』

さらに、

『担任:今日は有意義な一日にするように』

俺はスマホを握りしめた。

「……お前ら、どこまで俺を監視してるんだよ」

琴葉が、俺の隣で笑う。

「監視じゃないよ」

「じゃあ何だよ」

「見守り」

「言い方を変えただけだろ!」

琴葉は俺の手を握った。

「ねえ、拓海」

「……」

「私、今日すごく楽しみにしてたんだ」

「……」

「だから」

琴葉は、少しだけ不安そうな顔をした。


「今日だけは、私のことだけ見てくれる?」


「……」

俺は黙り込んだ。

いつもの琴葉なら。

冗談を言って。

強引に俺を連れていく。

でも、

今の琴葉は。

本当に不安そうだった。

俺は小さくため息をつく。

「……分かったよ」

「本当?」

「ああ」


琴葉の顔が、ぱっと明るくなった。

「約束?」

「約束」

「絶対?」

「絶対」

琴葉は嬉しそうに笑った。

「じゃあ、今日はずっと一緒だね」

「ああ」


俺はその時。

琴葉の笑顔を見て。

少しだけ、悪くないと思った。

幼馴染と遊園地に来る。

それだけだ。

それだけのはずだった。


観覧車に乗る。

食事をする。

アトラクションに乗る。

そして、


夕方。

俺たちは遊園地を出た。

「楽しかったね、拓海」

「ああ」

「本当に?」

「本当だよ」

俺がそう答えると。

琴葉は、嬉しそうに笑った。

「よかった」

「……なあ、琴葉」

「なに?」

「お前、俺のことを好きにさせるために、ここまでやるのか?」

琴葉は、少し考えた。

「うん」

「……」

「だって、好きになってほしいから」

琴葉は俺を見た。

「拓海に」

「……」


「私だけを見てほしい」


その声は、今まで聞いたことがないほど真剣だった。


「私のことを考えてほしい」


琴葉は、俺の手を握る。


「私がいないと、寂しいって思ってほしい」


「……琴葉」


「私がいないと、何か足りないって思ってほしい」


琴葉は笑った。

「だから、頑張るの」

「……」

「拓海の毎日の中に、私をいっぱい増やす」

俺は何も言えなかった。

琴葉は、俺の手を離さない。

「そして、いつか」

彼女は、俺を見上げた。

「拓海の方から、私を探してくれるようにするの」

その言葉を聞いた瞬間。

俺の胸の奥に。

小さな違和感が生まれた。

「……もし、俺が最後まで好きにならなかったら?」

琴葉は、黙った。


夕暮れの駅前。

人の声。

車の音。

その中で、

琴葉だけが、静かだった。


やがて。

「……その時は」

琴葉は、笑った。

「その時は、もっと頑張るよ」

「……」

「もっと近くにいる」

「……」

「もっと拓海のことを考える」

「……」

「もっと、拓海の毎日を私でいっぱいにする」

琴葉は、優しく微笑んだ。

「拓海が、私を好きになるまで」

「……」

「何年かかっても」

俺は、返事ができなかった。


その夜。

俺が家に帰ると。

母親が玄関まで迎えに来た。

「おかえり」

「ただいま」

「楽しかった?」

「ああ」

「琴葉ちゃんと?」

「……うん」

母親は嬉しそうに笑った。

「よかったわね」

「母さん」

「なに?」

「琴葉ってさ」

「うん」

「……昔から、あんな感じだったっけ?」

母親は少し考えた。

「どういう意味?」

「いや……」

俺は言葉に詰まった。

昔から一緒だった。

小さい頃から。

何でも話して。

何でも一緒にして。

俺のことを一番理解しているのは、琴葉だと思っていた。


だから、

「……何でもない」

俺は自分の部屋へ向かった。

ドアを開ける。

部屋の中には。

何も変わったものはない。

いつも通りの部屋。

机。

ベッド。

本棚。


そして、

「……ん?」

机の上に。

見覚えのない写真が置かれていた。

俺と琴葉。

幼い頃の写真だった。

俺は写真を手に取る。

「これ、どこから……」

裏返す。


そこには。

小さな文字で。


『ずっと一緒』


と書かれていた。

俺は、少しだけ笑った。

「……昔から変わらないな」


その瞬間。

スマホが震えた。

琴葉からだった。

『今日は楽しかったね♡』

『明日も一緒に行こうね♡』

『明後日も♡』

『その次の日も♡』

俺は苦笑しながら返信する。

『分かったよ』

送信。


すぐに既読がついた。

『約束だよ?』

『うん』

『絶対?』

『絶対』

少しして。

『大好き♡』

というメッセージが届いた。

俺は、しばらく画面を見つめた。


そして。

『おやすみ』

とだけ返した。


その直後。

琴葉の部屋。

彼女はスマホの画面を見つめていた。

『おやすみ』

その一言を。

何度も。

何度も。

読み返す。


そして。

「……ふふ」

琴葉は、嬉しそうに笑った。

「今日は、少しだけ近づけたかな」

彼女は机の上を見る。


そこには。

拓海と写った写真。

拓海からもらった小さなプレゼント。

拓海の使ったペン。

拓海が忘れていったハンカチ。


そして。

一枚の紙。

そこには、

拓海の一日の予定が書かれていた。

起床時間。

登校時間。

授業。

昼休み。

放課後。

帰宅時間。

就寝時間。


その隣には。

赤いペンで。

『まだ空いている時間がある』

と書かれていた。


琴葉は、その部分を見つめる。

「……明日は、ここを埋めよう」

彼女は、優しく笑った。

「拓海の一日を」

「もっと」

「もっともっと」

「私でいっぱいにするの」


その頃。

俺は、自分の部屋で眠りにつこうとしていた。

その時、

スマホが、もう一度震えた。

琴葉からだった。

『拓海』

『なに?』

『明日の朝、起こしに行ってもいい?』


俺は少し考えた。

昨日も来た。

今日もいた。

明日も。

「……まあ、いいか」

そう思って。

『うん』

と返信した。


数秒後。

『やった♡』

『じゃあ、明日の朝』

『拓海の部屋に行くね♡』

俺は、そのメッセージを見て。

「……ん?」

と、首を傾げた。


だが、

眠気の方が勝った。

俺はスマホを置き。

目を閉じた。


その頃。

俺の家の外。

琴葉は、合鍵を握りしめていた。

「……明日からは」

琴葉は、静かに笑う。

「朝も、夜も」

「もっと近くにいられるね」

彼女は、鍵を見つめた。

俺が知らない。

もう一つの鍵。

それは、

俺の部屋の合鍵ではなかった。

俺の家の鍵でもない。

琴葉が新しく手に入れた。

別の場所の鍵。


「ここなら」

琴葉は、楽しそうに呟いた。

「誰にも邪魔されないよね?」


そして。

彼女は、もう一枚の紙を取り出した。

そこには、


俺の名前と。

明日からの予定が書かれていた。

その一番下。

まだ空白だった場所に。

琴葉は、ゆっくりと文字を書き足す。


『放課後――〇〇』

「……楽しみだな」

琴葉は、笑った。

「拓海」


翌朝。

俺は、まだ知らなかった。

俺の知らないところで。

俺の明日の予定が。

また一つ。

勝手に決められていたことを。


そして。

その予定が。

今までとは違う意味で。

俺の人生を大きく変えることになるなんて。

この時の俺は。

まだ、何も知らなかった。

琴葉の持っていたどこかの鍵。それが一体何なのか考えながら第4話お楽しみに!!

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