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88、対象者 ④ ヤヨイ

「エド、悪いが、冒険者ギルドに来てくれないか?」


 僕の食堂の仕事が終わる時間を狙ったのか、昼の食べ放題時間が終わる頃に、ギルド長が食堂にやって来た。


 最近は、高位の冒険者が食堂によく来るから、ギルド長も、この数日は毎日来ている。そして、料理人さんに弁当を詰めてもらって、持ち帰っているようだ。



「僕ですか? もしかして、ダンジョンコアが来たんですか?」


「いやいや、そんな怖いことを言わないでくれ。本当に来そうで背筋が凍る。錬金協会の件だ」


 大げさだな。錬金協会? 詳細は話せないようだ。


「わかりました。急ぎですか?」


「弁当を詰めてもらっている間に、準備をしてほしい。俺と一緒に戻れるとありがたい」


 急ぎじゃないね。


「服を着替える方がいいということですか?」


「あぁ、軽装で構わないが、剣は装備してくれ」


「わかりました。では、着替えてきます」


 料理長も話を聞いていたから、僕はそのまま部屋へ戻った。今の僕の服も軽装だけど、これではダメなんだな。僕は、迷宮へ行けそうな服に着替え、剣を装備した。


 数日前から、ジョーモさんはとても忙しそうにしている。彼は、ソアラ迷宮へは潜ってないはずだが、ソアラ高原には行っている。


 ソアラ迷宮に集まる冒険者が、ソアラ高原でケンカする事件が増えているらしく、プラストさんと争いを止めに行っているようだ。大変だよな。




 ◇◇◇



 僕は、ギルド長と一緒に、冒険者ギルドへ向かった。途中、彼は何も話さない。結界のある会議室に連れて行かれるのかな。


 冒険者ギルド前の広場が見えてくると、僕は、異変に気づいた。多くの冒険者がケンカしているし、呆然とした表情で座り込む冒険者も多い。


「ギルド長、何が起こってるんですか?」


「見ての通りだ。多くのパーティが、役立たずのメンバーを追放している。支援局員が足りない状態だ」


「でも、僕の場合は、なかなかガチャ壺が反応しな……あっ! 居た! ギルドの建物内にいます。結界のある部屋みたいだから、詳細は不明ですが」


「やはり、そうか。錬金術師が、エドを呼んで来いと言っていたからな」


 ん? アロンさん?


 僕が首を傾げると、ギルド長は、再び口を開く。


「エドじゃなきゃ、救えないかもしれないと言っていた。アロンさんが以前担当していた元支援局員らしい」


 アロンさんが担当していた元支援局員? 僕以外に担当していた人はいたのだろうか。王都にいる元支援局員か?




 ギルドの建物に入ると、1階も騒然としていた。


「なぜ、こんなに揉める人が多いんですか?」


「ソアラ迷宮だよ。あの迷宮は、今は10階層までを開放しているが、6階層に潜ると、こうなるみたいだ」


「えっ? ソアラ迷宮の6階層? 僕は、5階層までしか知らないですが、何かの取り合いですか?」


「俺も、まだ潜っていない。だが、地図を作ったSランク冒険者にも、理由はわからないらしい。6階層には、スライムしかいないそうだ」


 スライム? 迷宮にいるスライムは、たまにヤバイ個体がいるらしいけど、基本的には弱いよな。


「強いスライムに苦戦して、ケンカになるのでしょうか」


「いや、強いスライムはいないらしいぜ。多くの冒険者が理由を調査しているが、結局、何もわからずにケンカが始まるようだな」


 ギルド長にも理由はわからないのか。僕にそれを探れとは言わない。ダンジョンコアは、無関係ということか。




 コンコン!


 やはり、会議室か。ギルド長が扉をノックして、しばらく待つと、中にいた人が、結界のスイッチを切ったようだ。



 えっ!? どういうこと?


 会議室の中には、日の光が当たっているように見える人がいた。情報も浮かんでいる。



 ──────────────────


【名前】 ヤヨイ(25歳)

【職業】 冒険者(Bランク)

【スキル】 精霊の下僕(レベル23)[MAX25]


 ──────────────────



 結界が消えたことで、扉の先にいる対象者の姿が見える。僕をスカウトした女性だ。ただ、雰囲気は大きく変わっていた。派手なメイクの人だったのに、今は、すっぴんなのだろうか。



 扉が開いた。



 ギルド長と一緒に会議室に入る。扉が閉まると同時に、また結界を作動させたようだ。


 何だ? この部屋……。


 部屋の中には、黒い影がうごめいている。


 ヤヨイさんの向かい側には、イアンさんがいた。職員を辞めてからギルドには近寄らなかったのにな。当然、騎士団に所属するムロさん達も、壁沿いに立っている。彼らは、騎士団の鎧ではなく、冒険者のような軽装だ。


 そして、もう一人、見たことのない初老の男性がいた。胸元を見ると、錬金協会の人だとわかる。他の錬金術師とは異なる制服だ。



「エドを連れて来たぜ」


 ギルド長がそう言うと、初老の男性が立ち上がった。


「エドさん、わざわざ申し訳ありません。私は、エルフィナの街で錬金術師をしているトーマンです。緊急事態として呼び出されましたが、私では抑えられません。アロンさんから、エドさんの案件だと言われ、お呼びしました」


 エルフィナ? よく見ると、初老の男性の耳は、長く尖っていた。エルフ族だ!



「トーマンさん、はじめまして。エルフィナの街ということは、エルフ族ですよね。トーマンさんに抑えられないというのは……」


 あっ! そうか。ヤヨイさんのスキルが、『精霊の下僕』という意味不明なスキルだからか。


「ええ、エルフ族です。そちらの女性にも、わずかですが、エルフ族の血が入っています。その影響が、悪い形で出てしまいました。前回は、私が抑えることができたのですけどね」


 前回? そうか。ヤヨイさんは、支援局員をしていたから、追放された経験があるはずだ。



「今の彼女は、どういう状態なのでしょうか。目が合わないですけど」


「エドさんは、この部屋に集まっているものをご存知ですか?」


 黒い影のことか? イアンさんが淡く光っているから、術を使っているのだと思うけど、イアンさんの幽霊なら青いよな。


「わからないです。黒い影がたくさんあるように見えますが」


「これは、この付近の悪霊です。彼が、悪霊が暴れないように制御してくれていますが、彼女の心を安定させないと、どんどん強い悪霊を呼び集めてしまいます」


「えっ? あ、彼女のスキルが暴走しているのですか?」


「やはり、わかるのですね。彼女のスキルは、精霊が見えて話せるものですが、彼女の心が崩れると、その心に惹きつけられた悪霊を集めてしまいます。このままでは、街全体が、悪霊に取り憑かれます」



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