87、Sランク最強の魔導士スウセイ
「やはり、魔石の生成って、おかしいですよね? まるで魔物のようで……」
「いや、『混ぜ壺』ではないが、テイマー系のスキルで、魔石の生成ができる人は知っている。まぁ、単純比較はできないが、彼は、スキルMAXで、魔石の生成を覚えたようだ」
騎士団長のエシャナさんは、僕の不安を払拭することを教えてくれた。
「じゃあ、その人に聞けば、魔石の生成方法や素材がわかるのでしょうか。でも作っても、役に立つものができるかはわからないですよね」
「彼は、使役する魔物の回復薬として、魔石を生成していた。ダンジョンには、マナだまりがあるだろう? そこで作るのを見たことがある。エドさんの場合は、混ぜ混ぜだろうけどな」
「マナだまり……深層ですね」
そう確認すると、エシャナさんは頷いてくれた。迷宮の深層なら、僕には縁がなさそうだな。
「騎士団長、エドさんの魔力量は、多いんですよね?」
ん? スウセイさんは、何か気になるのだろうか。
「それは個人情報だから、私の口からは言えぬ。なぜそんなことを聞くのだ?」
「ソアラ迷宮で、ちょっと気になったんですよ。エドさんはCランク冒険者ですよね? しかし、錬金協会の試作品の性能を聞いて、冷静だったんですよ」
ん? 何か、変なことを言ったっけ?
「10日ほど前に、試作品を配ったというブレスレットか。今、大量生産しているらしい。私はよく知らないが、自分の魔力を溜めておけるブレスレットらしいな」
「ええ、そうです。魔力量は1000まで溜めることができて、体内に戻すときには、ブレスレットを折って壊すそうです。銀貨1枚で販売予定だそうですよ」
「ほう? 魔力量1000も溜められるのか。体内に戻し切れない分は消失する仕様だな。錬金協会は、儲け主義だからな」
体内に戻し切れない? あっ、確かにそうか。僕はCランクになったときに、魔力量は500ちょっとだったな。
「ミラックが、何本もブレスレットをつけることが流行りそうだと言ったとき、エドさんが納得したような表情をしたから、俺は違和感を感じてたんですよ」
うわー、バレてる。
エシャナさんが僕の顔を見て、フッと笑った。僕が焦った顔をしているからかな。
「エドさんが自分で答えるべきではないか? スキルの影響で、魔力量が増えていることを」
彼女は、数値はバラさないんだな。
「スウセイさんのご想像の通りです。魔力量だけは、優になっています」
「優って、数値はいくつからだっけ?」
スウセイさんの呟きに、別の冒険者が口を開く。
「魔力量は、他の数値の10分の1以下だったはずだ。確か、500で良、1000で優じゃないか? 知らんけど」
「ふぅん、その優良可の分け方が、おかしい気もするけどな。物理系でも、5000くらいあるだろ?」
「は? ねぇよ! 魔導士と一緒にするな。エドさんは、魔導系か? だが、ヒヤッとはしないけどな」
えっ、どうしよう……。僕は、返事に困って、エシャナさんに視線を向けた。
「エドさんの場合は、バランスタイプだが、スキルの影響で、魔力量が増えているようだ」
「へぇ、バランスタイプか。だから、こんなデザートが作れるんだな。しかし、ちょっと興味あるなぁ」
スウセイさんは、僕の魔力量を知って、どうしたいんだろう?
「知りたいなら、キミが明かすべきではないか? 私も、Sランク最強の魔導士の魔力量には興味がある」
エシャナさんは、話を終わらせようとしてくれているみたいだ。これも、話術だよな。答えられない質問をぶつけて、話題を変えるのだろう。
スウセイさんは、黙っている。
彼はSランク最強の魔導士なのか。ソアラ迷宮の探索には、Sランク冒険者でトップクラスだと言われるミラックさんも居たし、すごいメンバーが揃っていたんだな。
「そうだな。俺の魔力量は、5万ちょっとある。スキル効果で使用魔力を減らせるから、実質的には、10万相当以上が使えるよ。エドさんは、1万はあるだろ?」
言った! エシャナさんも驚いた顔をしている。
「僕は、1万もありません。4桁ですよ」
「ふぅん、9000か。Aランクの魔導士並みだな。しかし、その年齢なら、スキルはまだまだ上がる。3万くらいまでいくかもしれない。魔石の次は、何だろうな?」
「いや、そんなに上がる気はしないです。あと2段階だから……」
「MAXは10? いや、5か?」
「えっと、5です……」
ん? 何? なぜかスウセイさんは、僕に右手を出してる。あっ、握手を求められてる? サーチだろうか。
逆らわない方がいいと思い、僕は素直に手を握る。だけど、サーチを受けている気配はなく、ただ、握手してるだけ?
「俺も、スキルは、『結界術』MAX5だよ。3までは、イマイチだったんだけどね。4から世界が変わった。5になると、周りからの目が変わったけどね」
「そうなんですね! 魔導士じゃなくて、結界術?」
「あぁ、レアスキルだよ。外れスキルだと思っていたけどね」
すると、なぜかケモ耳の女の子が、ハイッと手を挙げた。もう、スウセイさんにも、慣れているようだ。
「はい、あーちゃん、どうぞ」
スウセイさんに、そう言われるとコクリと頷き、チラッと僕の顔を見た。
「あたしは、スキル『錬金魔術』でMAX10ですっ!」
あっ、発表した。
「へぇ、あーちゃんのスキルも、レアスキルだね」
「うんっ! 一緒なのっ」
彼女は、ピカピカな笑顔で、何度も頷いている。発表したかったのかな。
「何とか術というスキルは、だいたい強いよ。スキル『魔導士』より、スキル『魔術』の方が強いでしょ?」
そうなのか。知らなかった。
「うん! あっ、エドちゃんは、術がつかないね。でも、エドちゃんの冷たいデザートは、誰にもできないから、エドちゃんの方が強いねっ」
何だか、必死に強いと言ってくれてるけど、デザートは強い弱いじゃないんだよな。
「僕は、強くなくて良いんだけどな」
「そっか! 良かった。あっ、あたし、おかわり取ってくるねっ」
ケモ耳の女の子は、皿を持って……逃げたな。
「ふふっ、アスカさんは、癒し系だな。話していると、元気をもらえる」
エシャナさんは、柔らかな笑みを浮かべていた。
「そうですね。まだ、トラウマは完全には消えてないようですが……」
「そうだろうな。元ナープラストのメンバーは、酷いことをした。そういえば、あの二人は、裏ギルドに出入りしていると聞いた。エドさんは、逆恨みをされているかもしれない。気をつける方がいい」
団長と副団長か。




