85、エドのステイタス(C)スキルレベル3
「あー、海の神様の使者が出掛けたから、私は海の神様の部屋を守らないといけなくなったよ」
目の前に浮かんでいたダンジョンコアは、しょんぼりとした顔に変わった。
「僕達は、今日は5階層の探索までを予定していたから、もう少し見たら帰るよ」
「ふぅん、そっか。じゃあ、エド、またね」
大きめの壺は、天井へと消えていった。もう、僕達の前には、現れないってことだよな?
「エドさん、今日は、ここまでにしよう。道も、泉まで整備できたからな。4階層へ戻ろうか」
プラストさんはそう言いながら、泉の水と塩を採取している。持ち帰って調べるつもりだろうな。
「わかりました。緊張の連続で疲れましたね」
「あぁ、しかし、来てよかったよ。数年前からの謎も解けた。彼らもそう考えている」
プラストさんの視線の先には、スウセイさんがいた。彼の予想通り、街の結界は異質な物だとわかったもんな。あっ、違うか。ここに来た全員のことを指しているのか。
「余っているシチューは、俺が持っていく。4階層の奴らも食べるだろう」
ギルド長はそういうと、大きな深い鉢をどこかへ収納したようだ。
僕達は、整備された道を通って、4階層へと戻った。
◇◇◇
「休憩所の仮設置は、完了しましたよ」
やはり、アロンさんが指揮をしていたんだな。錬金協会の人達は疲れ切っているように見えた。
「5階層でいろいろあったが、報告は戻ってからにする。エドさんが作った混ぜ飯がある。腹が減った人は、食ってくれ。植物に詳しい冒険者は、俺について来てくれないか? 気になる植物を採取する」
ギルド長にそう言われて、イアンさんが動いた。彼について回る王都の騎士も、ギルド長について行った。
「エドさん、ダンジョンコアは……」
「今は、最下層にいると思います。しばらくは動かないかと」
そう答えると、アロンさんは大きく息を吐いた。彼も、かなり神経を使っていたのだろう。そもそも、迷宮内をダンジョンコアがうろつくなんて、あり得ないことだもんな。
さっき5階層で食べた人達も、シチューの鉢に近寄っていく。安心したら、お腹が減ったのだろうか。
「エドちゃん、また、だいぶ変わってるよっ」
ケモ耳の女の子が、ソワソワしている。早く確認してほしい理由でもあるのだろうか。
「じゃあ、ステイタスを見てみるね」
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【名前】 エド(17歳)
【職業】 冒険者(Cランク)
【スキル】 混ぜ壺(レベル3)[MAX5]
【体力】 1350/2200 [可]
【魔力量】 3500/9800[優]
【物理攻撃力】 3800 [可]
【物理防御力】 3500 [可]
【魔法攻撃力】 3500 [可]
【魔法防御力】 6500 [良]
【スピード】 C
【回避能力】 C
【習得魔法属性】火・水・土・風
【特記事項】追放ざまぁ支援局員(レベル4)
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魔力量がほぼ2倍になってる。魔法防御力が、良になった。他は、微増かな。
彼女がソワソワするほどの変化はないと思う。でも、ダンジョンコアに睨まれた気がする。あっ、スキルを見てみようか。
スキル詳細を表示してみる。
【混ぜ壺】レベル3の変更点
●混ぜ飯の万能性
●回復薬の性能上昇
●毒薬の生成
●魔石の生成
混ぜ飯の万能性? そういえば回復薬は、まだ魔ポーションを作ってないよな。毒薬? レベル2では弱毒薬だったっけ。ん? 魔石? 魔石って作れるものなのか?
「あーちゃん、僕のスキルが、なんだか……」
「あたしと同じだよね? 魔法が作れるよね?」
「いや、それはできないよ。魔石が作れるみたいだけど、それって、魔物だよね?」
僕が首を傾げたからか、ケモ耳の女の子も、首を傾げる。騎士団長のエシャナさんなら、わかるだろうか。僕と同じスキルの人のことを調べていたみたいだし。
「エドさんは、魔石を作れるようになったのですか」
スウセイさんが話しかけてきた。有名なSランク冒険者と話すのは緊張する。
「スキル詳細に、そう表示されました。意味はわからないですが」
「あぁ、支援局員だから、常に自分のステイタス表示ができるのですね。俺から見ると、あーちゃんが言ったように、魔法の錬成ができると感じましたが、魔石か。ちょっとわからないな」
結界に詳しい彼にも、魔石の生成はわからないのか。
「魔石を作る? 初耳だな。そういえば、スキルは『混ぜ壺』だったよな? エドさんは、錬金協会の金の卵だと有名だよ」
ミラックさんは、ずっと金の卵って言ってる。彼は剣士系だと思うけど、派手な魔法も使っていた。Sランク冒険者の中でもトップクラスだと言われるのは、そういう器用さもあるのだろう。
「金の卵って、どういう意味ですか? よく言われるんですけど」
アロンさんには聞こえないように気をつけて、ミラックさんに小声で尋ねてみた。
「金のなる木という人もいるね。エドさんのガチャ壺から排出されたものは、錬金協会に多額の金をもたらしているからな。追放ざまぁ支援局の赤字も、そろそろ解消されるんじゃないか?」
やはり、そういう意味か。金を生み出すから、金の卵ということなのかな。
「金づるという言い方もありますね」
スウセイさんは、金の卵という言い方が嫌みたいだ。僕のことを考えてくれているのだと感じる。
「でも、役立つことに違いはないぜ。試作品だと言って渡されたブレスレットは、魔ポーションを飲んだときには余剰分を溜められるから、便利だ」
そういえば、どんな劣化版なのかは、聞いてないな。だが、イアンさんのブレスレットの性能は、話さない方が良いだろう。
「どんな性能になっていますか? ガチャ壺から出たものは、対象者の個性に合わせていたから、そのままでは使えないと思うんですけど」
「体内に溜めきれない魔力を吸収するらしいよ。身体に戻すときには、ポキッと折れば戻ると言っていた」
「ブレスレットは、使い捨てですか?」
「あぁ、錬金協会も考えたよな。1本のブレスレットで、魔力量は1000溜められるから、1本が銀貨1枚なら、みんな飛びつくだろうぜ」
「へぇ、かなり溜められるんですね」
「そうだな。魔ポーションは高価だし、なかなか入手できないから、自分の魔力を溜められることも魅力だな。何本もブレスレットをつけると派手だが、これからは流行るんじゃないか?」
追放ざまぁ支援局の赤字は、完全に解消されそうだな。
「待たせたな。迷宮から出るぞ!」
ギルド長が戻ってきた。やっと帰れるよ。




