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83、意外にすんなり

「道は、冒険者が切りひらけるんだけど、木々が生えて元通りになると困るなぁって思ってたんだ」


 僕は、目の前に浮かぶダンジョンコアに、そう打ち明けた。本当は、木々を傷つけてダンジョンコアの怒りに触れることを、僕達は恐れている。


 だが、素直にその許可を取るより、別の言い方の方が、ダンジョンコアの考えを探りやすいと思ったんだ。


「それなら、生えちゃダメなところに印をしてよ」


 あれ? 意外にすんなり……。


「印? 切った場所に何か書いておけばいいの?」


「そんなの、わかんないよ。あっ、アレでいいよ。前に、ジョーモが変なのを撒いて階段を塞いだよね? 潰すと、大きな音がする変な土魔法だよ」


「土偶だよ。ジョーモさんのスキルなんだ。ジョーモさんに道に撒いてもらったら、印になる?」


「うん、印になるよ。アレ、すごくうるさいもん。魔物が踏んで、すぐに粉々になりそうだけど」


「じゃあ、工夫して撒いてもらうよ。泉に行けばいいの? どっちにあるのかな?」


「ふふっ、秘密だよ。エド、早く来てね!」


 浮かんでいた壺は、グンと上にあがると、天井に消えて行った。




「エドさん、木々を傷つけることに、ダンジョンコアは抵抗はないと感じたが、間違ってないか?」


 プラストさんは、用心深い。


「僕も、意外だと思ったんですが、特に抵抗は無さそうですね。ダンジョンコアは、サボテンみたいな姿をしているから、樹木には愛着はないのかもしれません」


「人族の幼児に見えるが、エドさんにはサボテンに見えるのか?」


「上半身は、人族に見えています。だけどお腹から下は、緑色のサボテンのような姿ですし、壺の中には、びっしりと根を張り巡らせています」


「そうか。砂地の植物か。密林の草木は警戒しなくても大丈夫だな。5階層に歩道を作るか」


「はい。密林も、迷宮に人族が住むことになった場合に、必要だからかもしれません。木材としても、まきとしても」


「わかった。ここからは手分けをするぞ。高位冒険者は、魔物の対応をしてくれ。エドさんは先頭を頼む。ジョーモは、道を切りひらいたら、土人形を撒いてくれ。イアンさんは、後方から全体の警戒を頼む」


 プラストさんがそう指示をすると、ナープラストだった冒険者は、すぐに僕達から離れ、魔物狩りを始めた。


 僕に先頭をと言われたのは、僕が切るべき木の指示をするべきだという判断かな。



「あーちゃん、一緒に行ってくれる? 僕は方向がわからなくなりそうだよ」


「うんっ! 泉は、あっちだよ」


 僕と手を繋ぐと、ケモ耳の女の子は、張り切って歩き始めた。僕達が歩いた道を、Sランク冒険者が派手な魔法を使って木を切り倒していく。ダンジョンコアが冒険者の魔法を喜ぶからだろうな。



 少し歩いて、振り返ってみると、切り倒した木を利用して、道を守るための柵も作られていた。地面や、柵の周辺には、ジョーモさんが土偶を撒いている。


 ムロさん達は、土偶を踏んで、地面に埋め込んでいるようだ。騎士団の人達も、こういう作業には慣れているのか、一気に整備されていく。


「わぁっ! あたし達が歩いた場所が、綺麗な道になってるね!」


 ケモ耳の女の子も、驚いたようだ。


「すごいね。こういう作業は、下位冒険者がやると、すごく時間がかかるんだけど」


「プラストちゃんのお友達は、すごいねっ」


 僕達は、密林を草をかき分けて歩いているだけだ。でも役割分担は、これが正解だろう。僕とあーちゃんは、ダンジョンコアに嫌われていない。



 道の整備は驚くほど速いが、当たり前だけど、僕達が歩く方が速い。少しずつ距離がひらいてきた。


 赤髪のミラックさんは、ずっと僕達のすぐ後ろにいてくれている。彼は僕達には話しかけてこないけど、心強い。Sランク冒険者の中でも、トップクラスに強いことで有名だもんな。



「エドちゃん、その先に泉があるよ。泉のまわりには、草が生えてなくて、なんだか白いね」


「泉は、大きいのかな?」


「あまり大きくないよ。白いのはたくさんあるけど、結晶じゃなくて、サラサラみたい」


 僕の目にも、泉が見えてきた。その周りは、白い。密林の中に突然、白い砂浜が現れたように見えた。



「エドさん、止まってくれ。先にサーチをする」


 いや、それはダメだ。


「ミラックさん、待ってください。サーチはマズイです。ダンジョンコアは、泉で待っていると言ってました」


 僕が慌てて止めると、ミラックさんは、手に集めていた魔力を消してくれた。


「ここまでの流れを聞いていると、もう、エドさんがテイムしているように見えるのだが……いや、それはないか。だが、懐いているように見える」


「僕を害することはないかもしれないけど、それ以外は、わかりません。ダンジョンコアは、気分が不安定です。僕が壺を持っているとき以外は、何が起こるかわかりません」



「ミラックちゃん達は、ここにいる方がいいよっ」


「へ? あはは、俺はミラックちゃんか。かわいいな。キミは、アスカちゃんだね」


「あたしは、あーちゃんだよっ。ダンジョンコアは、白いとこを自慢したいみたいなの。あたしには、何かわからないけど、たぶん、エドちゃんが嬉しいものだよ」


 僕が嬉しいもの?


「わかったよ、あーちゃん。道を作る奴らも、ここで足止めしておくよ」


「うんっ! エドちゃん、行こっ」




 ケモ耳の女の子に手を引かれて、泉へと近寄っていく。白い砂浜のような物を踏むと、ミシッと締まるような感覚を感じた。砂ではない。これは、何だ?


 僕は、しゃがんで、白い物に触れてみた。少し海の匂いがする。これは塩か? なぜ、こんな場所に?


「ひゃー、冷たいよっ」


 泉に手を入れたケモ耳の女の子は、慌てて手を引っ込めている。階層は少し蒸し暑いのに、泉の水は冷たいのか?


 僕も、泉に手をつけてみた。


「冷たっ! 凍りそうなくらい冷たい水だな。魚は居ないみたいだ」


 僕は、ミラックさんに聞こえるように、少し大きな声で、状況を説明した。



「エド、びっくりした? キャハハハ」


 僕の目の前に、大きめの壺が浮かんでいた。


「驚いたよ。どうして、こんなに冷たいの? 飲めるのかな? この白い砂浜みたいなのは、塩かな?」


「エドは、やっぱり、びっくりした〜。キャハハハ。この泉は、海の神様が、水と塩に分けて出来たんだよ。冷たいのは、冷たい海の水を分けてるからなの。人族は、塩がないと死んじゃうんだって」


「海の神様が、海水を、真水と塩に分けてくれたの?」


「うんっ! エドは嬉しいでしょ? これで、人族のご飯を作ってみてよっ」



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