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79、大きめの壺

 あまりにも一瞬の出来事だった。


 目の前にいた僕も、ハッとしたときには、ジュートと呼ばれる錬金術師は、投げ飛ばされた後だった。


 プラストさんが、口に人差し指を立てている。だけど、錬金協会の人達は、大騒ぎだ。


 すると地面から、無数のツタが生えてきた。そして、騒ぐ人達に絡みつき、拘束している。


 僕の足元にいるダンジョンコアが、やっているのか。おそらく、彼がオリジナルに触れようとしたからだよな。しかし、それを指摘するのはマズイ気がする。僕の予想が外れた場合、ダンジョンコアが怒るかもしれない。


 プラストさんと目が合った。僕にも、人差し指を立てて見せている。やはり喋るなってことか?



「キミは、僕を助けてくれたの? ありがとう」


 足元の壺に入ったダンジョンコアに、そう話しかけてみた。すると男の子は、ふにゃっと笑った。マジで、僕を助けようとしたのか?


「あの人族は、弱すぎるね。男の子は、向こうに放り投げようとしただけだよ? でも弱すぎるから、プスって刺さっちゃったね」


「慌てて、放り投げようとしてくれたから、力が入ったのかもしれないね」


「うん、そうだね。男の子は、エドのことが大好きだから、怒ったのかなぁ」


 僕が持つ壺のダンジョンコアは、錬金協会の人達の方に顔を向けた。マズイ。拘束されている彼らは、一瞬で殺される。関心をそらさないと!




「あっ、キミの壺は、少し傷がついてるね」


「ん? どこどこ?」


「こちらの側面の傷が目立つよ。汚れかもしれないけど」


 すると、足元にいた男の子が、僕の腕の高さまでふわっと浮かび上がってきた。


「エド、おんなのこのツボは、ぼくのよりも、キズがつきやすいみたいだよ。こっちのきずが、おおきいよ」


 指差してくれた所を見ると、少し欠けていた。本当に傷があって良かったよ。


「ええ〜! 私の壺が、ちょっと割れてる? やだ〜! エド、何とかして〜っ!」


「わかった。ちょっと魔力を流すけど、いいかな?」


「エドのまりょくは、ホワホワだよ」


 なぜか男の子がドヤ顔をしてる。女の子が頷いたのを確認して、壺に魔力を流して修復した。ついでに、表面の強化もしておく。



「本当だ! エドの魔力は、ほわほわするねー」


 僕は魔力を流したことで、壺の中がどうなっているのか、薄暗い3階層でもよくわかった。根がびっちりと張り巡らされている。これ以上、このダンジョンコアが成長すると、この壺は、中から押し破られそうだ。


「直ったよ。キミの壺は、ちょっと小さいかな? もう少し大きな壺を作ろうか?」


 僕がそう提案すると、女の子はキラッキラな目をした。新しい壺は嬉しいらしい。上手く誘導できるかな。



「壺を作ってくれるの? 丈夫な壺?」


「あー、男の子の壺は、割れちゃったんだったな。キミの壺は、作った後に、僕がスキルを使ったから丈夫になったんだと思うよ」


「じゃあ、大きい壺を作って、その壺でスキルを使えば、丈夫な壺になる?」


「うん、なると思うよ。男の子がうっかり刺しちゃった人族の回復薬を作ってみてもいいかな? まだ治癒魔法を使ってないみたいだから」


 ジュートと呼ばれる錬金術師の状態はわからない。だが、魔法の発動は、ギルド長やアロンさんが制したらしい。餌だとみなされると、迷宮に喰われるためだ。



「エドのスキルで、回復薬が作れるの?」


「うん、『混ぜ壺』というスキルだから、壺があれば、人族のご飯や回復薬を作れるよ。弱い毒薬もね」


「見ててもいいの? 私が見ると、覚えるかもしれないよ?」


「いいよ。じゃあ、やってみるね。ここの土を使って壺を作ってもいいかな?」


「いいよー」


 僕が地面に座ろうとすると、僕が持っていた壺は、ふわりと浮かんだ。置くかを悩んでいたから、浮かんでくれて助かった。下手に置いて、怒りを買うと大変だもんな。



 僕は、地面に触れ、浮かんでいる壺よりも、ひとまわり大きめの壺を作った。そして、腕輪のアイテムボックスから、薬草に使える野菜を取り出して、壺に放り込む。


 壺に手を添えて、上級ポーションを作ろうとイメージして、混ぜ混ぜをした。そして壺の中身を地面にあける。上級ポーションの小瓶が、ゴロゴロと出てきた。


 そして、使った壺に魔力を纏わせ、さらに強化した。中から根が壺を突き破ることがないように、中も入念に強化する。



「できたよ」


「エドのスキルは、私には覚えられないよ。エドは、ほわほわだから、私とは違うの」


「そうなのかな? できた回復薬を怪我人に……あー、持っていってくれるの? ありがとう」


 地面に転がっていた小瓶は、ふわふわと浮かんで、プラストさんの前に運ばれて行った。いや、ケモ耳の女の子の前か。そして、拘束されていた人達は、乱暴に地面に落とされている。


「プラストとジョーモは嫌いだから、アスカなら使っていいよ」


「あーちゃん、怪我した人に配ってあげて」


「うん、わかったっ」


 ケモ耳の女の子は、上級ポーションの小瓶を拾い集めると、錬金協会の人達の方へと歩いていく。




「エド、この壺は、もう入ってもいいの?」


「まだポーションの匂いが残っているかもしれないけど、気にならないなら、移っても大丈夫だよ」


 僕が話し終わる前に、浮遊していた壺が、ポーションを作った壺の上に降りてきた。そして、女の子は頭から入ってる。やはり下半身は緑色のサボテンみたいな感じだな。


 あれ?


 新しい壺から、女の子が顔を出すと同時に、古い壺からも、幼児が顔を出した。また分離したのか。



「エドっ! 新しい壺は、すっごく良い匂いがするよ。すっごく元気になったよ」


「回復薬がまだ残っていたのかな。古い壺に、別の子がいるけど、また分けたの?」


「うん! 分けたよっ。あれ? 分けた子は、弱いね。泣きそうになってる」


 もう、ふぇふぇ泣いてるよ。


「弱いというより、幼いんじゃないかな? この子は、男の子? 女の子? 人族の赤ん坊に見えるから、性別がわからないな」


「男の子だよ。生み出す能力はないもん」


 生み出す能力?


「エドが、ホワホワすれば、なきやむかもしれないよ」


 男の子がお兄ちゃんに見える。


「じゃあ、持ってみるね」


 赤ん坊の壺を持って、魔力をゆっくりと流した。ふぇふぇと泣いてた子は、スポッと壺の中に入ってしまった。眠ったみたいだな。


「ほらね! あれ? ねちゃったのかな?」


 お兄ちゃんが、ドヤ顔をしてるよ。



「エドっ! 私達のダンジョンは、4階層からだよ! 遊ぶよね? 行こう!」


 これを断ると、きっと全員が殺されるよな。



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