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78、各地に迷宮が誕生している理由

「キミは、人族の女の子の顔をしてるね。街で会った子は、男の子の顔をしていたよ」


 僕がそう言うと、足元の壺から、男の子の顔が出てきた。壺のふちに手を掛けて、僕を見上げている。


「私は、オリジナルだよ。エドの足元にいる子は、分けた子だよ。見た目が同じだと、エドがわからなくなると思ったから、変えたの」


「へぇ、そうなんだね。キミ達は、2歳くらいの人族の子供に見えるよ。でも、人族の2歳児なら、そんなにスラスラと喋れないよ」


「すごいでしょ! 私達は、海の子だからね。男の子は、ちゃんと喋れないよ。たぶん、まだ人族くらいの知能しかないよ」


 足元を見ると、ふにゃっと笑っているけど、男の子は何も言わない。



 周りを横目で確認すると、ギルド長とプラストさんが、皆を彼らの後ろに下がらせている。冒険者達は、壺の中にいるダンジョンコアが放つ強烈なエネルギーを感じ取ったのか。彼らの表情は、上位の冒険者ほど険しい。


 だが、錬金協会の人達は違う。アロンさんも、興味津々な顔をしてるんだよな。



「エドさん、ダンジョンコアに許可を得てもらえるか?」


「はい、わかりました」


 プラストさんは、それしか言わなかった。ダンジョンコアを刺激してはいけないからだ。



「私に、何を許可してほしいの? 私、プラストは嫌いだよ。何もお願いは聞いてあげない。ジョーモも嫌いだもん」


 名前を覚えてる!?


「プラストさんとジョーモさんが嫌いなのは、どうして?」


「私達の迷宮を埋めたもん。伸ばしたツタが通れないようにしたでしょ。私達の迷宮なのに、人族のくせに……」


 うわー、記憶力がいいな。


「キミ達の迷宮の6階層への階段を埋めたのは、弱い人族が6階層を、踏み荒らさないようにするためだと思うよ。僕達のような冒険者には、迷宮の成長を妨げてはいけないという決まりがあるんだ」


「ふぅん。あの時は、私もあまりわかんなかったから、まぁ、いいや。でも、プラストとジョーモは嫌いだもん」


 嫌いは変わらないのか。



「さっき、見て驚いたんだけど、1階層には街があったよね。門にはエドの街って書いてあった。2階層も3階層も、半分は街になってるの?」


「エド、びっくりした? キャハハハ、びっくりした?」


「うん、すごく驚いたよ。街には入れなかったけど」


「まだ、入れないよ。それに半分じゃないよ。男の子が見てきた街の真似をして作ったけど、この上の高原と同じ広さだよ」


「ええっ? ソアラ高原全体に広がってるの? すごく広いね」


「うん、そうだよ。エドの街は、エドみたいにあったかくしたよ。モモの街は、モモみたいに綺麗にしたよ。アスカの街は、アスカみたいに元気にしたよ」


 そんなコンセプトがあるのか!


「すごいね。でも、まだ入れないんだよね? いつになったら入れるの?」


「それは言えないよ。山の子が増えてるから、人族の街が潰れたら困るから、私達は、人族を保護する場所を作ったよ」


「人族の保護をしてくれる場所?」


「うん。海の子は、人族の街の近くにダンジョンを作ってるよ。人族が全滅したら困るからだよ」


 神話の話に繋がるのだろうか。僕には、山の神オルケニウスと海の神ハルメシンの神話に関する知識はない。



「そうなんだ。僕は、海の子とか山の子のことはわからないけど、人族を守るために、迷宮に街を作ってくれたんだね」


「エドは、知らないのかぁ。私達は、海の神様の子だよ。山の神様が暴れてるんだって。3階層までは、人族が全滅しないように準備してるよ。だから、私達のダンジョンは、4階層から始まるの」


「キミの迷宮は、何階層まであるの?」


「ん〜とね。人族が入ってもいいのは、50階層までだよ。その下は、海の神様のお部屋なの」


「50階層もあるの!? すごいね」


「うん。私達はすごいの。海の神様も、すごいねって言ったよ。エドがくれた壺のおかげだねって言ってたよ」


 海の神様と話してるってことか。


「キミ達が、壺を利用して動けることを発見したんだよ? 僕が迷宮を作ったわけじゃないし、そんな能力もないよ」


「海の子は、ダンジョンの中を自由に動けないんだよ。私達は植物だから、壁の中をツタを伸ばして移動することはできるけど、壁の中を移動したかったら、10階層くらいしか無理なの。だから、他の植物のダンジョンは、10階層くらいまでしか育ってないよ」


「キミ達は、50階層以上の迷宮を作っても、3階層に来られるんだね。すごすぎるよ」


 そう褒めると、ダンジョンコアの頬が赤く染まった。照れたのかな。かわいい。



「魚のダンジョンの方が、階層数は多いんだよ。でも、たくさんの階層に池や泉を作らないと動けないんだよ。壁の中を移動できる子は少ないからね」


「へぇ、魚のダンジョンコアは、水が必要なのかな」


「うん、そうだよ。でも、階層全部を池や泉にはできないからね。50階層くらいのダンジョンもあるけど、狭いの。私達のダンジョンみたいに広くできないんだよ」


 めちゃくちゃドヤ顔してるよ。


「じゃあ、キミ達の迷宮は、すごく珍しいのかな」


「うん! すごーく珍しいって、海の神様が言ってたよ」


 山の神様が暴れているから、海の神様は、人族が全滅しないように、街の近くに迷宮を作らせているのか。壮大すぎる話に聞こえたけど、嘘ではないだろう。


 つまり、山の神様が暴れて人族の街に被害が出ることを、海の神様が危惧して、迷宮内に人族の避難所を作らせている。それで、各地に迷宮が誕生してるのか。




 ダンジョンコアと話していると、錬金協会の人達が、ザワザワしていた。冒険者達が必死で黙らせようとしているけど、彼らは言うことを聞かない。


 ギルド長やプラストさんは、ダンジョンコアが気分を害することを恐れて、大声を出せない。他の高位の冒険者達も、必死に合図で制しているけど、錬金協会の人達は、冒険者達に、馬鹿にしたような表情を向けている。



 ジュートと呼ばれる錬金術師が、アロンさん達の制止を振り切って、僕の方に駆け寄ってきた。


「おまえは、その壺の魔物を懐柔して、自分の名前を冠した街を作らせたのか!」


「へ? 人族の避難所を作らせたのは、海の神様だと言ってましたよ。それに、この子は魔物じゃないですよ」


「中級冒険者のくせに、さっきから偉そうなんだよ!」


 彼は、僕が持つ壺に手を伸ばした。えっ!?



 シュッ!


 足元にいた壺から伸びたツタが、彼の腹を突き破り、ブンと振り回すと、錬金協会の人達が集まる場所へ放り投げた。



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