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76、ソアラ迷宮へ

「エドさん、ソアラ湖に水が戻ってますよ」


 僕達がソアラ高原に移動すると、合流したイアンさんが話しかけてきた。王都の騎士団に所属しているムロさんもいるが、彼は冒険者のような軽装だな。騎士の鎧を身につけた人は、少し離れた場所に5〜6人いるのが見える。


「迷宮は消えたんですか?」


「いや、迷宮の上に、湖が戻っているのですよ」


 枯れた湖が、こんな短期間で元に戻るのかな。ソアラ湖に流れ込む川は、水量の少ない小川だ。ジョーモさんの方に視線を向けると、彼も首を傾げている。



「迷宮の入り口は、湖に沈んだのでしょうか」


 僕はイアンさんに尋ねたつもりだったけど、ムロさんが口を開く。


「迷宮の入り口は、複数見つかっています。以前の入り口は、湖に沈んだのかもしれません。別の言い方をすれば、湖の中からも、迷宮に入れます」


「入り口が増えたんですか。珍しくないですか?」


「ハコロンダで、魔物化したダンジョンは、いくつもの入り口を作っていると聞いたことがあります。ダンジョンコアが話していた山の子とか海の子という話から考えると、このソアラ迷宮も、魔物化するのかもしれません」


 ムロさんがそんなことを言うから、僕達の近くにいた他の冒険者が震え上がってるよ。出発前に文句を言っていたCランク冒険者は、真っ青な顔をしている。


 それに気づいたジョーモさんが、プラストさんの方へと駆け寄って行った。指示をあおぐつもりかな。




 まだ迷宮に着いてないのに、鎧を身につけた王都の騎士がいる場所で、僕達は止められた。僕達を先導していたギルド長は、ナープラストだった冒険者と一緒に、その先に進んでいる。



「ソアラ迷宮へは、この入り口から入るぞ!」


 プラストさんが、大きな声で、怒鳴るように言った。ちょっと緊張しているのかな。不機嫌を装っているような気がする。


「ギルド長は、先に行ったじゃないですか」


「アイツらは、ソアラ湖を見に行った。すぐに戻る。ソアラ迷宮の入り口は複数あるが、ここがメインの入り口のようだ。迷宮内への立ち入りは禁じられていたから、俺が立ち入るのも、発見時以来だ。中の様子は、全くわからん」


 プラストさんは、やはり緊張してるみたいだな。錬金協会の人達やその護衛は、身を守る能力が高いとは言えないからか。


「今回の目的は、5階層までの調査と、3階層までの浅い階層に休憩所の仮設置をすることだ。くれぐれも勝手な行動はしないでくれ。発見時には、元ナープラストの魔導士が二人、迷宮に喰われているからな」


 プラストさんが強い口調でそう言うと、ちょっとザワザワしてる。特に、錬金協会の人達が不満そうにしている。勝手な行動を禁じられたからかな。



「そんな浅い階層なら、平気じゃないんですか。まだ、ひと月ちょっとの洞窟ですよね? 迷宮だからと、怯えすぎですよ」


 やはり、錬金協会の人が反論した。しかも、冷ややかな視線を、プラストさんに向けている。あっ、プラストさんの杖を見てる。足が不自由だと思って、馬鹿にしてるのか。


「中の様子は、全くわかりませんよ。それと、その警戒心の無さは、護衛への過信ですか? 身勝手な錬金術師を、冒険者が守れるとは限りませんけどね」


「は? プラストさん、もう引退したらどう……」


「やめなさい! ジュートさん。迷宮は危険な場所です! プラストさん、申し訳ありません。彼は、休憩所を作るための応援で来てくれている研究職でして」


 アロンさんが慌てて話に割り込んできた。ジュートと呼ばれた男性は、不機嫌そうにしつつも、軽く頭を下げた。



「王都から呼び寄せた錬金術師は、あまりにも警戒心がないですね。あぁ、その彼も貴族かな」


「ジュートさんは、王宮に出入りする商人貴族のご子息なのですよ。10日ほど前にトランクの街で殺された商人貴族は、ご親戚だそうです」


 アロンさんは、ジュートと呼ばれた錬金術師が要人扱いを受ける地位にある貴族だ、と言っているのだろう。だけどプラストさんは、相手の身分なんか気にしないと思うけど。


「オロロン公爵に嫌われている商人貴族ですか。殺された方は気の毒だが、貴族同士のいざこざに巻き込まれる平民は、もっと気の毒ですよね」


 うわー、プラストさんが嫌味を言ってる。アロンさんは苦笑いをしているが、ジュートと呼ばれた錬金術師は、嫌味に気づいてないようだ。



 あっ、ギルド長が戻ってきた。


「順次、迷宮へと降りてくれ。高位の冒険者が先導する。錬金協会は、護衛の指示に従ってくれよ? 今回の目的は、プラストさんからも聞いただろうが、5階層までの調査と、休憩所の仮設だ。可能なら、迷宮が何階層まであるかを調べたい。よろしく頼む」


 ギルド長も、プラストさんと同じことを言っている。だが、彼の言葉には、錬金協会の人達は頷いている。高位の冒険者であるプラストさんに対する態度とは、まるで違うよね。



 僕の手を握る小さな手。冷たくはないけど、少し力が強い。大勢の冒険者がいるからか。


「あーちゃん、僕達は、一番後ろにしようか。たぶんプラストさんが、危険な後ろを歩くからね」


「うんっ! ムロちゃんは、イアンちゃんから離れないみたいだよ。ジョーモちゃんは、どうするのかなぁ?」


「俺も、あーちゃんやエドさんと一緒に降りるっすよ。杖のプラストさんの世話をする人が必要っすからね」


 ジョーモさんは、僕達の近くに戻ってきた。わざと杖のプラストさん、を強調したよな。



 ダンジョンコアは、10日ほど前に、41階層まであると言っていた。それをさらに深くしてから大きくするとか言ってたっけ。


 深くする理由は、何かに届いてないからだと言っていた。地下水脈なら、余裕で届いているはずだが、あの赤ん坊もよく理解できてないみたいだったな。山の子じゃなくて海の子だとか、山の子がいっぱいだから海の子を増やすとか、僕には理解不能なことばかりだった。


 あっ、でも、ケモ耳の女の子が、ハコロンダの街で、魔物化したダンジョンは、山の子だと聞いたことがあると言っていたな。


 山の神オルケニウスと海の神ハルメシンの神話のことだろうと、ムロさんが教えてくれた。それに、何年か前から、山の神オルケニウスが暴れているとか、いくつかの勇者パーティが魔物化したダンジョン群に挑んでいる、という話もしていたっけ。



 僕は、いろいろと思い出しながら、ケモ耳の女の子と手を繋ぎ、高原にほぼ中央にある広い入り口を降りて行った。



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― 新着の感想 ―
『アスカ』という名前や『あーちゃん』という呼び名があるのに、いつまでも『ケモ耳の女の子』と表現を続けるのは不自然だし、読んでいてクドく感じます
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