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66/101

66、あの職員さんは退職したらしい

「飲み物も届いたし、本題に入るとするか」


 僕が騒いでいる間に、テーブルには紅茶が運ばれてきたようだ。ミッションの完了報告に来たのに、まるで僕達は客人扱いだな。


 紅茶を持ってきてくれた職員さんが会議室から出て行くと、魔力を感じた。防音結界を作動させたのかな。



「ギルド長、俺達は、終了報告に来たんすよね? なぜ、こんな高待遇なんすか」


 ジョーモさんは、少し喧嘩腰だ。確かに、中級冒険者への待遇としては、おかしい。


「ジョーモ、突っかかるな。ソアラ高原のソアラ湖があった場所に、新しい迷宮が誕生した。俺の認識が甘かったことは、プラストさんから説教されたよ。キミ達を大変な目に遭わせて悪かった。そして、脱出への多大なる尽力に感謝する」


 ギルド長は、わざわざ立ち上がり、僕達に深々と頭を下げた。僕はどう返せばいいかわからない。


「俺も、まさかの事態だったっすよ。脱出できたのは、この三人のおかげっす。特に、あーちゃんの知識がなければ、俺達は迷宮に喰われてたと思うっすよ」


「そうだな。アスカさん、ありがとう。ビーウルフ族が冒険者をしてくれていることは、本当に心強い」


 ギルド長にそう言われて、ケモ耳の女の子は、ちょっとクネクネしている。照れているみたいだ。



「で? プラストさんもいるということは、厄介事っすか」


 ジョーモさんは、何を頼まれるのか予想がついているのだろうか。少しイラついているようだ。


「ギルド長より俺の方が詳しいからな。俺から話そうか」


 プラストさんは一応確認を取った後、再び口を開く。



「ソアラ高原に誕生した迷宮は、凄まじい勢いで成長している。俺が塞いだ6階層への階段も、躍動により、封鎖が解かれた。サーチの土人形を残してあったが、今、9階層にいる。丸一日で、3階層以上増えたようだ」


「また犠牲者が出たんすか?」


「いや、立ち入りを禁止しているから、冒険者は迷宮には入っていない。迷宮の壁に喰われた奴らも、魔導士二人を除いて、沼地からエドさんによって救出されたそうだな。元々の迷宮のエネルギーが膨大なのだろう」


 魔導士二人は、結局、喰われたのか。沼地には、他には人は残ってなかったと思う。迷宮は、魔力の高い魔導士は逃がさないんだな。


「喰われた二人は、自業自得っすよ」


 ジョーモさんは、プラストさんの気持ちが軽くなるように、強い口調で言ったのだと思う。でも、彼自身も、辛そうに見える。ジョーモさんが憧れて、一緒にミッションを受け、そして彼を追放した人も含まれているのだろう。


「まぁ、そうだな……」


 プラストさんは、まだ後悔しているみたいだ。言葉が途切れた。彼のせいじゃないのに。



「この異変は、ソアラ高原だけではない。各地の湖が枯れ、同じように新たな迷宮が誕生している。誕生と同時に魔物化する迷宮も発見されているのだ」


 プラストさんに代わって、ギルド長が話を続けた。


「その原因は、わかってるんすか?」


「わからない。この現象は、ハコロンダ付近からの派生ではないかとも言われているが、あの辺りの調査は難しいからな」


 ハコロンダか。あの街には、近寄るなと言われていたよな。ジョーモさんでも、行きたくない街らしい。


「まさか、俺達に調査しろと言うんじゃないっすよね? ハコロンダなんて、Aランク冒険者でも厳しいっすよ」


「あぁ、もちろん、ハコロンダの街へ行けとは言わない。それは、プラストさんに任せることにした。足が治った彼なら、魔物化したダンジョン群に潜ることも可能だからな」


「は? 俺は行かないぜ? そのための杖だろ」


 プラストさんは、杖を見せた。まだ足が治ってないフリをしているのかな。その方が油断を誘うこともできそうだ。



「それなら、俺達には何をさせたいんすか」


「ソアラ高原に新たに出来た迷宮の調査だ。ただし、今じゃない。急成長する迷宮は、通常なら数日で成長限界がくる。成長が止まるまでは、すべての冒険者の立ち入りを禁じている」


 なるほど、そういうことか。あわよくば、各地の湖が迷宮に変わる原因を、調べさせたいのだろう。僕達が呼ばれたけど、ギルド長は、ケモ耳の女の子に依頼したいんだな。人族にはわからないことも、ビーウルフ族なら、わかるかもしれない。


「その際には、俺も必ず同行する。他にもSランク冒険者を連れていくからな。ケチるなよ? ソアラ高原は、この街トランクに近すぎるんだからな」


 プラストさんは、ギルド長に報酬の話をしているのだろう。数少ないSランク冒険者を指名すると、高額になりそうだよな。



「あっ、それなら念のために、僕達に同行してくれた職員さんも、一緒に調査してもらえたら安心ですね」


「イアンちゃんのスキルは、凄かったもんねー。迷宮の罠に引っ掛かったときには、イアンちゃんが居ると安心だよね」


 ケモ耳の女の子は、本当に記憶力がいいな。僕は、名前なんて忘れてた。幽霊のような不思議なスキルは、強烈に覚えているけど。



「イアンは退職したから、同行は難しいな」


「ええっ? 職員さんはなぜ……」


「まさか、責任を押し付けて、辞めさせたんすか?」


「いや、本人の意思だ。昨日、あの後すぐに、退職届を出してきた。魔道具を使えないし、引率もできないから、もう続けられないと言ってな。まぁ、もともと冒険者志望だったから、自由にしたいのかもしれん」


 退職したのか。ちゃんとお礼を言えてないのに。



「彼なら、昨夜のうちにテンディボに加入したと聞いたぜ。まぁ、良かったのかもな」


 テンディボ? 僕は知らないパーティ名だが、プラストさんの話に、ジョーモさんは目を見開いている。


「プラストさん、マジっすか? テンディボといえば、ビープラストよりも有名なAランクパーティっすよね?」


「ちょっと特殊なパーティだけどな。前から勧誘されていたんだろう。彼らは一切、募集をかけないからな」


「幽霊のスキルの職員さんは、冒険者登録をしてるんすか?」


「確か、Aランクだったと思うよ。俺も一度勧誘したことがある」


 プラストさんはギルド長に、彼のランクを確認するように、視線を向けた。だが、ギルド長は、何か勘違いをしたようだ。クワッと目を見開いている。


「さすがに、テンディボに依頼はできねぇぞ? 呼び出すだけでも、どれだけ出張料を取られるか……。無理だ無理!」


 報酬の高いパーティみたいだな。でも、そういうしっかりしたパーティなら安心だ。あの職員さんがAランク冒険者だとは驚いたけど。



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