表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

64/99

64、爆睡から目覚めると

「痛っ!」


 突然、アゴを下から殴られたような衝撃で、目が覚めた。上体を起こそうとしても動けない。掛け布団をはがすと、すぐ目の前に小さな足の裏が見えた。


 どうやら、アゴを蹴られたらしい。


 しかし、どういう体勢なんだ? 僕に完全に乗っかってるのか。僕のお腹を枕にして爆睡しているケモ耳の女の子。しかも、寝相が悪すぎて、おパンツがまる見えだよ。おパンツどころか、お腹まで出てる。まぁ、4〜5歳に見えるから、これも可愛いんだけどさ。


 布団をはがしたからか、ゴソゴソと動き始めた。そして、ベッドから落ちそうになったところを、僕が慌てて支える。



「ふぁっ? あれ? エドちゃん、どうしたの?」


「あーちゃんが、ベッドから落ちそうになったんだよ」


「あたしの部屋に遊びに来たの?」


 いやいや、逆でしょ。


「あーちゃんが寝ぼけて、僕の部屋に来たんだよ。泥がどうとか言って」


「ん〜? 覚えてない」


 クゥゥ〜


 ケモ耳の女の子のお腹から、悲鳴が聞こえた。そういえば僕も、かなりの空腹だ。


「とりあえず、ご飯を食べに行こうか。外は真っ暗だから、夕食時間だと思うよ」


「うん! お腹減ったね。食堂に行こっ」


 ベッドから飛び起きたケモ耳の女の子は、そのまま出て行こうとする。鍵を持って来たことを覚えてないらしい。僕は、彼女が棚に置いた鍵と、自分の部屋の鍵を持った。




 ◇◇◇



 食堂に行くと、人は少なかった。この雰囲気は、酒場時間か。でも、食事をしている人もいるみたいだ。


「変な時間にすみません。夕食を食べたいんですが」


 厨房に声をかけると、顔馴染みの料理人さんはボーっとした顔をしていた。眠そうだな。


「エドさん、今は朝食の仕込み中ですよ。あー、新迷宮の騒動に巻き込まれてたんですね。朝食でいいですか?」


「朝食? はい、二人前でお願いします。あーちゃんもいるので」


「すぐに持っていきますよ」


 ケモ耳の女の子の名前を出すと、料理人さん達がピリッとした。ホールをチラッと見た後、ニヤニヤしながら冷蔵庫を開ける人もいる。ほんと、人気者だよね。




 テーブル席では、二人分の水が用意されていた。


「あーちゃん、ありがとうね」


「うんっ。夜じゃなくて、もうすぐ朝なんだねっ。お酒の匂いの人達が、そろそろ帰るかーって言ってたよ」


「そうだね。昼前くらいに戻って来たのに、すごい長い時間、眠ってたみたいだ」


「あたしも、途中からエドちゃんの匂いがするから、不思議だなぁって思いながら寝てたよ。起きたらエドちゃんがいたから、びっくりしたよ」


 こっちも、びっくりだよ。


「あーちゃんが、僕の部屋に来たんだよ? あっ、これはあーちゃんの部屋の鍵ね。僕の部屋の棚に置いてたよ」


「ん〜? 不思議だねー」


「ふふっ、そうだね」


 無意識に、僕の部屋に来たのかな。あっ、そっか。彼女の父親は、亡くなっているんだったよな。僕が父親代わりなのかもしれない。



「お待たせしました」


 料理人さんが自ら、朝食を持って来てくれた。ホール係も暇そうにしているんだけどな。


「ありがとっ。わぁっ! チーズケーキがあるよっ」


 僕の方には無いよ。


「あーちゃんに試食をお願いしたいと思ってたんですよ。お子様用の食べ放題の分なんだけど、ちょっと甘すぎるかもしれなくて」


「わかったっ。ご飯を食べてから、試食するねっ」


 ケモ耳の女の子は、キリッとした表情で返事をしている。お仕事スイッチが入ったみたいだ。とても可愛い。


「あとで、感想を聞きに来ますね。あ、ゆっくり食べてくださいね」


「うんっ!」


 料理人さんは、デレデレしながら、厨房へと戻った。試食と言いつつ、彼女にいろいろな物を食べさせたがるんだよな。まぁ、そう言わないと、他の宿泊客から文句を言われるのかもしれないけど。



 僕達は、朝食を食べた。空腹だと思っていたが、いざ食べ始めると、あまり食べられない。夕食じゃなくて、朝食でちょうど良かったみたいだ。丸一日、食べてなかったからな。


「エドちゃん、あの赤ん坊に気に入られちゃったね」


「そうかな? 僕というより、壺が気に入ったんじゃない? 予備の壺も作らされたし」


「たぶん、エドちゃんの魔力の匂いを気に入ったんだよ。優しい匂いがするもん」


 ケモ耳の女の子は、僕よりも食べるスピードが速い。デザートが目の前にあると、こうなるんだよな。


「僕には、魔力の匂いって、わからないんだけどね。あっ、そういえば、僕の匂いが変わったって言ってたよね」


「んー? あっ、うん。スキルレベルが上がったときだよね? 少し変わったよ。たぶん、弱い魔物は警戒すると思う」


 それって、魔力の匂いなのかな? ステイタスは微増だけど。


「そうなの?」


「うん、それまでのエドちゃんは、たぶん、全然怖がられなかったと思うよ。スキルとステイタスは、別だからね」


 今、僕がステイタスは低いままだと言おうとしたことに、彼女は気づいたみたいだ。


「スキルレベルは初めて上がったから、僕にはよくわからないけど」


「あたしも上手く説明できないけど、たぶん、あたしの弟なら、半人前から一人前になったって言うと思うよ」


「セルス村の人にそう言われたら、ちょっと嬉しいかも」


 僕がそう答えると、ケモ耳の女の子は、僕の方を見て、ニコッと笑った。こういう所は、46年間生きてきた大人な部分だよな。また、おでこに、ごはん粒がついてるけど。


 彼女がチーズケーキを見ている隙に、腕輪のアイテムボックスからタオルを取り出し、そっと、おでこのごはん粒を拭いた。いつもは、モモさんがやっているけど、僕もたまに拭いてあげることがある。


 ケモ耳の女の子は、おでこを拭かれる理由がわかってないみたいだけど、まぁ、その顔が可愛いから、いっか。



「エドちゃんも、チーズケーキを食べたい?」


 いや、そういう意味じゃない。


「僕は、今は甘い物はいらないかな」


「ふぅん、じゃあ、あたしが全部食べるねっ」


 フォークを持って、彼女がチーズケーキを食べ始めると、厨房からの視線を感じた。彼女はニコニコしながら幸せそうに食べるから、料理人さん達は見たいんだよな。



 食べ終えると、ケモ耳の女の子は、トレイを持って、厨房へ行く。そして、お邪魔します、とペコリと一礼して、厨房に入って行った。


 真面目にチーズケーキの感想を話しているのだろう。料理人さん達の癒やし時間だ。


 僕は、トレイを厨房に持っていき、紅茶をもらって、席に戻った。この時間は料理長はいない。あぁ、果樹園を見に行ってなかったな。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ