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62、ダンジョンコアの遊び

「間違えたら、中身はどうなるの?」


『ポイってするの』


 壺から出すってことか?


「生きている人族が入ってる物もあるよね? ポイっとされたら、死んじゃうの?」


『ドロドロになるの』


 まさか、壺の中に入っている人が溶けるのか?



「エドちゃん、大丈夫だよ。赤ん坊は遊びたいから、エドちゃんに嫌われることはしないよ」


 ケモ耳の女の子の笑顔を信じていいんだよな? ジョーモさんやプラストさんも、頷いてくれた。


 生まれたばかりのダンジョンコアからすれば、人族もオモチャなのだろうか。壺を入手するまでは、明らかに僕達を餌として見ていたと思う。だけど、壺で転がることを覚えて、遊びたくなっているなら……。


 これは、助けるチャンスだ!


 僕は、ずっと話せなかったから、いつもみんなが遊ぶ様子を見ていた。かくれんぼをする子が、なかなか見つからないことを得意げに話す姿も見ている。




『ど〜れだ?』


「僕が作った壺に泥を被せてない?」


『むふふふっ、ど〜れだ?』


 やはり、そうだ。見つからないことが楽しいんだ。壁にいることはわかっているが、上手く演じないとな。



 僕は、沼地へと足を踏み入れる。ダンジョンコアらしき声が言っていたように、沈まない。どうやら僕が踏んだ場所は、即座に泥が固まるらしい。


 近くにある壺に触れた。僕には中に何が入っているかわかる。『混ぜ壺』のスキルレベルが上がったからか。この中身は魔物だ。間違えると魔物が飛び出してくるのか。


 その隣の壺には、何も入っていない。ダンジョンコアの反応を見るために、空の壺を選択してみよう。



 コンコン!


 僕は壺を叩いてみた。


『たたいちゃダメ〜』


「叩いたらダメってことは、ここに居るのかな」


『もってみて〜』


 僕は、沼地に埋まる壺を持ち上げる。すると、壺はパチンと弾けて、泥が跳ねた。やはり空っぽだ。


「あれ? 泥が飛び跳ねたよ?」


『はずれだよ〜。むふふっ、ど〜れだっ?』


 うん、いい感じだ。喜んでいる。その隣の壺に触れると、また魔物が入っているようだ。さらにその横は……人の頭だ!


「じゃあ、これはどうかな?」


 壺を持ち上げると、人の頭のはずなのに、すごく軽い。壺の下には四角い容器が付いていた。僕の身長より長い。


 頭上まで持ち上げると、パチンと弾けて、壺が消えた。中からは、ぐったりした冒険者が泥沼に落ちた。


『きゃははっ、また、はずれだよ〜』



 ジョーモさんとプラストさんは、僕に、ぐったりした冒険者は無視しろと合図してきた。僕は頷き、また壺に触れていく。


 人が入っている壺ばかりを引くのはマズイ気がして、たまに空っぽも引いた。ダンジョンコアの気分が変わらないうちにと、一気にスポスポと持ち上げる。


 あっ! 失敗した。


「ちょ、魔物?」


 うっかり、魔物を引いてしまった。だが、ダンジョンコアがケラケラと笑っているから、この失敗は、むしろ良かったか。


 魔物は、なぜか僕を襲わない。救出した冒険者に回復魔法を使っている冒険者達の方へ、向かって行った。魔力に反応するのか。



『エド、まだ、みつけられないの〜』


 僕が端から順に壺に触れていたから、飽きてきたのか。ダンジョンコアが入っている壺は、沼地には埋まっていない。


「僕が作った壺なら、わかると思ったんだけどね。本当に、この階層にいるの?」


 僕は、さらにスピードを上げて、壺に触れていく。そして、空っぽと人の頭を引いていく。


 えっ!? スージー?


 壺の中から、泥だらけのスージーが出てきた。僕は一瞬迷ったが、ギクッとしたことには気づかれただろう。僕が、人が入ったすべての壺を引くつもりだと考えていることがバレると、マズイ気がする。



「スージー? 大丈夫? レイビンはサポートしてなかったの? タクトとニックは?」


 声をかけても、スージーは弱々しい笑みを浮かべただけだった。幼馴染も巻き込まれたのか?



『6かいそうで、はなしてたこだね? スージーって、エドのなに?』


 うわっ、覚えてたのか。


「スージーは、僕の幼馴染だよ。同じ村で生まれたんだ」


『ふぅん、だいじなの?』


 これは、どっちだ? だが、嘘はつかない方がいい。真偽を見抜く魔物もいるからな。


「幼馴染は大事だよ。でも僕は、今は別の人達と一緒にいるけどね」


『エドがだいじなら、なおしてあげる』


 スージーの身体に、赤い肉厚な花がいくつも咲いていく。そして花が枯れ落ちると、スージーの顔色は良くなっていた。



「すごい治癒能力だね。治してくれてありがとう」


『ふふん、すごいでしょー』


「それで、どこにいるの? 僕は見逃したかな?」


『エドは、まだ、みつけてないよー』


「全部の壺を開けていこうかな」


『モンスターも、でちゃうよー』


 僕は、腕を組み、困った顔を作る。そしてまた、壺に触れながら、沼地を歩いていく。人の頭が入っているものと空っぽの壺をどんどん引いていると、タイト、ニック、そしてレイビンも、泥だらけで、ぐったりした状態で出てきた。



『エドは、モンスターはわかるんだねー。あばれるのかな』


 ま、マズイ。モンスターを避けてることがバレた!


「魔物がいる壺に触れると、トゲトゲした魔力みたいなのを感じるよ」


『ふぅん、エドのいれものは、ツボっていうの?』


「うん、壺だよ。沼地に並んでいるのも、壺だね。しかし、どこにいるんだよ? もうだいたい調べたよね?」


『うふふっ、みつけられないと、でられないよー』


「魔法を使ってもいい?」


『ダメだよ〜』


「僕に見えない場所にいる? 沼地の泥の中とかにいたら、僕は感知できないよ」


『むふっ、みえるばしょだよ〜』


 僕は、周りを見回してみた。もう人が入っている壺はないだろう。救出された人達は、順次治療されている。だが、不気味なほど静かだ。ダンジョンコアの恐ろしさを実感したためか。



「ん〜? どこだ? やっぱり見落とした?」


 僕が戻ろうとすると、カタッと音がした。沼地ではなく、迷宮の壁に、等間隔に並ぶ壺状の灯り。かくれんぼがふりだしに戻るのは、さすがに嫌みたいだな。


『エドは、さわってないよー』


「今、壁の方から、カタッと音がしたよね?」


『しらないよ〜』


 ワクワクが止まらないらしい。僕が壁に近寄っていくと、灯りのひとつが、プルプルと震えている。


 僕は、一旦通り過ぎた後、振り返って壺をつかんだ。


「みーつけた」


『きゃははっ、わらったら、みつかっちゃったぁ』


 その壺を両手でつかむと、緑色の丸いサボテンのようなダンジョンコアが、ムクッと頭を出した。



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