55、エドのステイタス(C)スキルレベル2
今、5階層にいる人の多くは、怪我を負っている。プラストさんが魔物を狩ってこいと言っても、動けない人の方が多いようだ。
「モモさん、露店商の資格があるんですよね? 食事は販売しましょうか。その方が食べてもらいやすいはずです」
「そうですね。魔物を狩って持って来てくれた人は無料にして、それ以外の人は、銅貨10枚でいかがでしょうか」
値段を決めてくれた。モモさんは、僕とプラストさんの顔を交互に見ている。
「こんな場所で、エドさんの混ぜ飯が銅貨10枚だなんて、安すぎると思うけどな。まぁ、お姉さんに任せよう」
モモさんが頷くと、プラストさんの身体がまた光っている。念話を使うんだな。
『露店商がいるから、販売もするようだ。魔物を狩って持って来たら無料、それ以外は特別に銅貨10枚で軽食の販売をする。動けない人は合図をしてくれ』
僕は、混ぜ飯を作り始めた。壺のような容器を土魔法で作り、野菜や穀物、そして届いた魔物を放り込み、混ぜ混ぜをする。
長時間、何も食べてない人もいるだろうから、消化吸収のよい雑炊にした。器も土魔法で作り、できた雑炊を入れる。スプーンはないが、ドロリとしているから、そのまま器に口をつけて、飲むように食べられるだろう。
モモさんとケモ耳の女の子は、ジョーモさんが土魔法で作ったトレイに雑炊を乗せて、動けない人に配達に行ってる。
僕は、次々と作っていく。もっと大きな容器があれば楽だけど、僕が土魔法で大きな容器を作ると弱くなるから、混ぜ飯に使えない。
「エドさん、大きな容器で作る方がいいんじゃないか?」
何度も作っていると、プラストさんに気づかれた。
「僕の土魔法では、大きな容器は作れないんです。もろくなってしまうから、スキルに耐えられなくて」
「じゃあ、俺が作ろうか」
プラストさんがそう言った直後には、目の前に大きな素焼きの壺が現れた。すごいな。まだ彼の魔力を帯びていて、とても扱いやすそうな壺だ。
「ありがとうございます! 一気に作れます!」
冒険者達が狩ってきた魔物を、ジョーモさんがポイポイと放り込んでくれた。野菜や穀物を放り込み、混ぜる棒を長くして、壺に手を添えた。
そして、混ぜ混ぜをしている途中で、胸にドクンと大きな鼓動を感じた。何だ? すぐに治ったけど、一瞬、息ができなくて焦った。
「エドさん、どうしたっすか?」
「あっ、いえ、なんか胸にドクンと強い衝撃を感じたんですけど、もう治りました。何だったんだろう?」
混ぜ飯を完成させたが、自分の身体が熱く感じる。今まで、こんな経験をしたことはない。疲れたのだろうか。
「スキルレベルが上がったんじゃないっすか?」
「えっ? スキルレベル?」
雑炊を器に入れていると、ケモ耳の女の子が、僕の腕をツンツンする。
「ん? あーちゃん、おかわりを食べる?」
「エドちゃん、たぶん、スキルのレベルが上がったよっ。急にドーンって上がってるから、見てみるといいよ」
「そうなの?」
「混ぜ飯を入れるのは、私が交代しますよ。スージーさん達には、私が渡す方がいいと思いますし」
モモさんは、本当によく見ている。スージーのお腹が鳴ったことで食事にすることにしたのに、僕がここにいるためか、幼馴染たちは、まだ食べていない。
「わかりました。モモさんにお任せしますね」
僕は自分の分の器を持って、少し離れた。モモさんがスージーに声をかけると、彼女は素直に器を受け取っている。僕をパーティから追放した幼馴染は、やはり僕からは受け取れないらしい。
僕は雑炊を飲むように流し込んだ。うん、イメージ通りの優しい味にできている。
僕は、左手の腕輪に触れ、ステイタスを表示する。
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【名前】 エド(16歳)
【職業】 冒険者(Cランク)
【スキル】 混ぜ壺(レベル2)[MAX5]
【体力】 1200/1900 [可]
【魔力量】 380/4600 [優]
【物理攻撃力】 3100 [可]
【物理防御力】 3000 [可]
【魔法攻撃力】 2900 [可]
【魔法防御力】 2900 [可]
【スピード】 C
【回避能力】 C
【習得魔法属性】火・水・土・風
【特記事項】追放ざまぁ支援局員(レベル3)
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おおっ! 本当だ! ずっと上がらなかったスキルレベルが2になってる。それに、魔力量の上限が4000以上も上がってる! 他の数値化されているものは、それぞれ微増かな? ドーンと上がったのは、魔力量か。[優]になってるもんな。
あれ? 目の前に新たな文字が出てきた。スキル詳細? 魔道具は、そんなことまでわかるのか。
【混ぜ壺】レベル2の変更点
●混ぜ飯のスピード上昇
●回復薬の性能上昇
●壺形成能力の上昇
●弱毒薬の生成
ええっ!? 弱毒薬の生成? 今まで出来なかったのは、レベルが足りなかったのか。
「エドちゃん、変な顔してる」
「ん? あーちゃん、大丈夫だよ。ドーンと上がったのは、僕の魔力量なんだね」
「あたしには何が上がったかわかんないけど、エドちゃんは、弱い人族じゃなくなったよ」
「ええっ? 僕は弱いよ? 増えたのは魔力量だけだから」
「ふぅん、でも、匂いがちょっと変わったよ」
ケモ耳の女の子にそう言われると気になる。僕は臭くなったのだろうか。
「へぇ、エドさんの魔力量は、ジョーモ並みになったんじゃないか? やはりキミのスキルは魔導系だな」
ジョーモさん並み? プラストさんは、ステイタスサーチ魔法も使えるんだな。あれ? 魔道具の腕輪がサーチを弾くんじゃないのか?
「もう、追いつかれたっすか。俺は物理系っすから、別にいいっすけど」
「ふふん、ジョーモは悔しいらしいぜ。物理系のくせに魔力量が多すぎるんだよ。ん? あー、エドさんは勘違いしてるみたいだな。キミのステイタスサーチはできないよ」
「やっぱり。それなら、なぜ……」
プラストさんは、ジャラッと長いチェーンネックレスを、胸元から出して、僕に見せた。チェーン自体が様々な光を放っている。
「ダンジョンに潜るときは、いつも身につけている魔道具だ。魔力を流せば、相手の魔力量の上限が色分けされて見えるんだ。ほとんどの人は無色透明だが、ジョーモとエドさんは、同じ色に見えるからな」
「魔力残量じゃなくて、上限ですか?」
「あぁ、魔力残量の魔道具は、洞窟なら良いが、ダンジョンでは使うなよ? 相手の本当の力を見誤ると死ぬからな」
そうか。迷宮には、魔力を回復する魔物もいるもんな。




