54、ジョーモとプラストによる6階層の封鎖
「やっと、見つけたっすよ。怪我はないっすか?」
ジョーモさんだ。彼の顔を見ると、ホッとして力が抜けた。合流できてよかった。
「僕達は大丈夫でした。ジョーモさんは、怪我をしたんですか」
「俺の血じゃないっすよ。無事でよかったっす。職員さんから、3人が6階層に飛ばされたと聞いたから、慌てて潜ってきたんすよ」
「彼の青白い光には、助けられました」
「幽霊は、新人冒険者をメインに守ってたみたいっす。こんな躍動が起きたのに、奇跡的に死者がゼロなのは、彼のスキルのおかげっすね。冒険者ギルドから、高位ランク冒険者が次々と来てるっすよ。しかし、また草原っすか。問題はここからっすね」
ジョーモさんは、周りを見回して、息を吐いた。5階層は、明るい高原に見えるけど、1階層の草原に転移の罠があったもんな。
「ジョーモちゃん、大丈夫だよ。ダンジョンコアは、6階層に罠を作ってるから、他の階層まで罠だらけにするほどのエネルギーは無いよ」
ケモ耳の女の子は、ジョーモさんにそう伝えると、ふわぁぁっと、大きなあくびをしている。彼女も、ジョーモさんを見ると安心したのかな。
「あーちゃんは、さすがっすね。職員さんが、エドさんのすぐ近くに強いエネルギーがあるって言ってたっす。朝になるまで動けないだろうって言われたから、慌てたっすよ。本当に無事で良かったっす」
「僕が飛ばされた背後に、魔力の強いエネルギーを感じたけど、あーちゃんの指示に従っていたから、逃げられたんですよ。あっ! プラストさんだ」
ジョーモさんと話していると、杖をついたプラストさんが、5階層に降りて来た。彼は、険しい表情をしていて、最短距離で、僕達の方に向かってくる。
「エドさん、生きているな? アスカさんも無事か?」
えっ? 僕達の心配?
「はい、大丈夫です。あーちゃんのおかげで、5階層まで逃げることができました」
「そうか、良かったよ。俺も、キミ達と一緒に来るべきだった。ギルド長が、ソアラ高原だからと、甘く考えていたんだ。死者は今のところゼロだと聞いている。『古代魔術』の職員の能力だな」
「職員さんは、大丈夫ですか? ずっと全員を青白い光で見守っていたみたいですけど」
「俺がここに着いたときには、魔力切れで眠っていた。弱い冒険者は、こういう事態のときは幸運だったな。彼のスキルで、1階層へ移動させることができたようだ」
弱い人には、取り憑いて動かせるんだっけ?
「職員さんのスキルは、すごいですね。かなりの魔力消費になりそうですけど」
「あぁ、彼の魔力量は多いはずだが、使い果たすなんてな。6階層には、もう誰もいないか?」
「最初に飛ばされたのは5人でした。一人は階段にいたみたいだけど、会ってません。他の4人はここにいます」
僕がそう説明をすると、プラストさんは、6階層への階段に近寄っていった。そして、彼が魔力を放つと、6階層から、ヒュルヒュルと変な音が聞こえた。
「ジョーモ、土人形を作ってくれるか? 人の大きさで硬いやつだ。サーチが届かない」
「傀儡の人形っすね」
ジョーモさんは、草の上に大きな土人形を出した。プラストさんがその土人形に魔力を纏わせると、土人形はまるで人のように、階段を降りていく。
階段の下で、6階層のサーチをしているようだ。すごいことができるんだな。あっ、でも、魔物に襲われてる。
「人は居ないようだ。しかし、これはダメだな。魔力を帯びたモノは、エサに見えるらしい。あー、面倒くせぇ。5階層に伸びてくるぞ」
「えっ? 魔物は、階層間の移動はできないんじゃ……あっ、植物ですか?」
「あぁ、シュルシュルと音がしているだろ? ダンジョンコアは、壁の中だな? 湖底だから魚系だと思っていたが、植物かよ。だから爆発的に成長したのか」
プラストさんは、階段から少し離れた。
「ダンジョンコアは、あたしやエドちゃんの匂いを覚えてるんだよ。ジョーモちゃん、さっきの人形を二つ作って」
ケモ耳の女の子がそう言うと、ジョーモさんはすぐに、土人形を作ってくれた。
「魔力を纏わせてくれ。あっ、エドさんもできるか?」
「はい、やってみます」
僕は、土人形に魔力を流した。でも匂いって言ってたよな? 魔力に匂いなんてあるのか?
「よし、俺が放り込む。結界は効かないだろうな。ジョーモ、俺が放り込んだら、小さな割れやすい土人形を大量に階段に出してくれ。階段を物理的に塞ぐ」
プラストさんは、僕とケモ耳の女の子の魔力を纏った土人形を、階段の下へと放り込んだ。シュルシュルと、不気味な音が響く。
その直後、ジョーモさんは、階段に魔力を放った。カランカランと、小さな土人形が落ちていき、階段がどんどん埋まっていく。
「仕上げをするぞ」
プラストさんは、階段に向かって、爆炎を放った。ジョーモさんの土人形を溶かしているのか。いや、違う。伸びてきたツタを燃やしているんだ。
6階層への階段は、ほとんど埋まっている。さらに、プラストさんは、土魔法で階段を封鎖した。土魔法が使えるなら、ジョーモさんの土偶はいらなかったんじゃないかな。
「プラストちゃん、すごいねー。陶器で蓋をしたら、ツタは通れないね。ジョーモちゃんのスキルもすごいね」
ケモ耳の女の子は、手をパチパチ叩いていた。そうか、ただの土魔法では、植物には壁にならないんだ。
「ふっ、そんなに喜ばれると、恥ずかしいよ。俺は、もうオッサンだからな」
プラストさんは、ちょっと照れているみたいだ。
クゥゥ〜
誰かのお腹の悲鳴が聞こえた。振り返ってみると、スージーが恥ずかしそうな顔をしている。
タクトは、プラストさんにキラキラした目を向けていた。6階層に降りようとしていたニックとレイビンは、バツの悪そうな顔をしているが。
「食事にしましょうか。この階層には、強い魔物はいないみたいだし」
「それがいい。上の4階層は、魔物が多いからな」
モモさんに話しかけたつもりだったが、プラストさんが返事をしてくれた。
「エドさん、材料はあるんですか?」
「前に、料理長から預かったのが残ってますよ。肉は少ないけど、野菜は売るほどあります」
「じゃあ、食べられる魔物を狩ってくるっすよ。あっ、何でも食べられるんだったっすね」
「狩りなら、飯を食いたい新人にやらせよう」
プラストさんは、身体に淡い光を纏った。
『5階層にいる皆に伝える。今から飯を作る。食いたい者は、その辺の魔物を狩って、持って来てくれ』




