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52、ケモ耳の女の子は双子だった

「エドちゃん、この階層では、魔法は使っちゃダメだよ。壁に触るのもダメだからね」


 ケモ耳の女の子は、僕にそう言うと、スージーに近寄っていく。壁からは、さらに多くの見慣れない魔物が湧いてきている。


「あーちゃん、魔法が迷宮に刺激を与えるから? でも、ダンジョンコアは7階層に移動したし、壁が階段を塞いだよ。もうそろそろ朝だから、眠るんじゃないの?」


「まだ寝てないよ。赤ん坊のダンジョンコアがよく使う罠だよ。寝たふりをするの。階段が壁で隠れたってことは、どの壁にも、階段が現れるってことだよ」


「ええっ? まるで賢い魔物みたいじゃないか」


「迷宮は、生き物だよ。魔法を使うと、壁に引きずり込もうとするんじゃないかな。魔力の高い種族をエサにしたがるよ。スージーちゃんは、魔導士だね? 魔法は使っちゃダメだよ。私の近くにいれば、魔物は襲ってこないからね。結界もダメだよ」


 話している間にも、6階層には、どんどん魔物が増えてきた。魔法を使うと、壁からツタが伸びてくるのかもしれないな。そして7階層へ落ちたら、確実に喰われるか。



「どうしましょう。魔物が増えてきたわ。どれも知らない魔物ばかりだけど」


 モモさんの表情は青ざめていた。だけど、手には弓を持っている。そっか、スキル『アーチャー』だったよな。


「上の5階層に行けば、ダンジョンコアは、あたし達を直接捕まえられないよ。階段の方に、ゆっくりと歩いて行こっ。スージーちゃん、トゲは抜いた?」


 ケモ耳の女の子に、以前からの知り合いのように話しかけられ、スージーは少し驚いているようだ。


「いえ、ポーションは飲んだけど、傷口の確認はしてないわ。3階層には魔物が多かったし、援護が必要な冒険者もいたから」


 すると、ケモ耳の女の子は、スージーのズボンをスッと切って、傷口を確認している。そして、手には大きなトゲ抜きを持っていた。わずかに身体が光ったから、スキルを使って錬金したのかな。


「たくさん血が出るけど、早く抜く方がいいよ。ダンジョンコアから離れると、トゲが身体の中に入っちゃう。スージーちゃんにはトゲが刺さってたから、ダンジョンコアのある最下層に引き寄せられたんだよ」


「お嬢ちゃんが抜いてくれるの? アナタは確か、ノワール洞窟にいたセルス村の子だよね?」


「うん、あたしは、あーちゃん。トゲは生きてるから全部見えるよ。エドちゃんの方がいい?」


 いや、ちょっと待て。僕はそんなことできないよ。


「エドは幼馴染だけど、血には弱いから無理だと思う。あーちゃんにお願いしてもいい?」


「うん、いいよ。じゃあ、抜くね。血は自然に止まるまで流す方がいいよ。トゲには、獲物の目印の役割があるから、洗い流す方がいいからね」


「わかったわ」


 ケモ耳の女の子は、次々とトゲを抜いていく。抜いたトゲが地面に落ちると、吸い込まれるように消えていくことに驚いた。ダンジョンコアが回収しているのか。まるで、ツタが自分の体の一部のような……。



「はい、全部抜いたよっ。よく頑張ったね」


「ありがとう。足は麻痺しているから、痛みを感じなかったわ」


 ケモ耳の女の子は、背負っていたリュックを前に持ってきて、何かゴソゴソしている。そして、小瓶を取り出すと、再びリュックを背負った。


「スージーちゃん、これを飲むといいよ。マーキングが消える毒消しだよ。あっ、すっごく臭いけど」


 小瓶を受け取ったスージーは、すぐに中身を飲み干した。僕なら小瓶の説明書を読もうとするけど、スージーは気にしない性格だ。


「あーちゃん、ありがとう。盗賊セルス団の人にも、同じ解毒薬をもらったことがあるわ。高価なのよね。迷宮から出たら、必ずお代は払うわね」


「ん? 弟が作ってるから、お金はいらないよ」


「ええっ? セルス団の団長が作ったと聞いたわよ? 30代半ばくらいの男性だと思うわ」


「うん、あたしの弟だよ。30代じゃないよ。46歳だよ」


 ええっ? セルス村の村長が弟?



「あーちゃんと同い年なの?」


 僕がそう尋ねると、ケモ耳の女の子は、不思議そうな顔をして、コクリと頷いた。


「うん、双子だもん。同じだよ。あたしの方が先に生まれたから、お姉ちゃんなの。弟は、セルス団の団長をしてるよ」


「セルス村の村長さんだよね? ノワール洞窟で、一度会ったことがあるよ」


「うん。お父さんが死んじゃったから、弟がセルス村の村長になったよ」


 そうか。双子でも、ビーウルフ族とのハーフは、こんなにも成長が違うんだな。女の子は純血種になるんだっけ。村長さんの見た目が若いのも、ハーフだからか。


 スージーは、キョトンとしているが、今はそれどころじゃないな。ケモ耳の女の子の匂いを恐れて、魔物は襲ってこないけど、僕達は完全に囲まれている。



「5階層への階段は、どっちだろう? あっ、もうひとりいたよね。明るくなったから、職員さんの術が見にくくなったけど」


「エドさんから見ると、右奥の方に上り階段があります。その階段に座っている人がいるみたい」


「えっ? モモさんには見えるのですか」


「スキルですよ。弓を持っていると、視力が大幅に上がるみたいです」


 とにかく、6階層から出ないとな。ここは、ダンジョンコアの罠の中だ。




「じゃあ、僕が先導します。モモさんは援護をお願いします。あーちゃんとスージーは、魔導系だからね」


 僕は剣を抜いた。ジワジワと近寄っていっても逃げない。ケモ耳の女の子の匂いは、僕の服にも付いているはずなんだけどな。


 グァァッと吠えた獣系の魔物に、シュッと飛んできた弓矢が当たった。倒せてはいないが、他の魔物が少し離れた。


 振り返ってみると、モモさんは、スージーと手を繋いで歩くケモ耳の女の子の後ろにいる。背後を警戒しながら、僕の援護もしてくれてるんだ。


 よし! やるか。



 僕は、モモさんの矢が当たった魔物に向かっていき、首を狙って、横一文字に斬る。だが、硬い皮に覆われていて、斬り落とせない。でも、魔物は倒れた。急所に当たったらしい。


「倒れた魔物は、置いていくよ! どんな罠があるかわからないから、近寄っちゃダメだよ!」


「あーちゃん、わかったよ」


 その後、数体を倒すと、魔物は僕を警戒して避けるようになっていった。彼女の匂いのおかげもあるだろう。



 ようやく、5階層への階段にたどり着いた。だが、そこには、もう一人の冒険者の姿はなかった。5階層へ上がったのかな。



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