表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

49/98

49、あーちゃんのスキル『錬金魔術』

 冒険者ギルドの職員さんが使ったスキル『古代魔術』は、新たに誕生したばかりの洞窟に落ちた人達を、強制的に1階層へ誘導しているようだ。


 青白いヒトダマのような光は、声を届けるだけでなく、弱い冒険者に取り憑き、強制的に移動させることもできるみたいだ。


 ケモ耳の女の子は、たくさんの悲鳴が聞こえると言っていた。職員さんの説明によると、怪我をして動けない人を、青白い光が覆って動かしているらしい。なぜ、悲鳴が聞こえるんだろう?



「穴に落ちた全員が、1階層より深い場所に移動しました」


 職員さんがそう言うと同時に、真っ暗な湖跡に、青白い光が浮かんできた。すぐに消えたけど、取り憑いた人の姿を模していたのか、一瞬、幽霊の軍団に見えて、僕の全身に鳥肌が立った。



「じゃあ、次は、あたしだね! 取り除いた土は、どこに置けばいいかな?」


「あーちゃんが取り除いてくれたら、俺が空中で消すっすよ」


「わかった。じゃあ、浮かべるねっ」


 ケモ耳の女の子の身体が、白い光を放ち始めた。手をクルクルと回しながら、何か踊っているような仕草をしている。


 そして、コクリと頷くと、両手を前に押し出す。すると白い光が、辺り一面に広がり……地面を剥がし始めたようだ。


 こんな魔法があるのか? 僕だけでなく、みんな驚いているようだ。しかも白い光は、よいしょ、よいしょと呟きながら、土をどんどん持ち上げている。なぜ、魔力が喋るんだ?



「ジョーモちゃん、全部、持ったよ」


 持ったの?


「わかったっす」


 空中に浮かぶ大量の土砂に向かって、ジョーモさんが魔力を放った。あっ、魔法手袋を使ってくれてる。


 ジョーモさんの魔力が触れると、空中に浮かぶ土砂は、溶けるように消えていった。



「入り口は、あっちだね。もうどこを踏んでも崩れないよ。みんな、行こっ」


 ケモ耳の女の子は、何事もなかったかのような笑顔だ。今、とんでもないことをしたよな?


「あーちゃん、今のは何をしたの? 土を持ったの?」


「うん、固い岩の上の土を、全部持ったよ。ジョーモちゃんの土魔法はすごいねっ。土がマナに変わったよ」


「あーちゃんの方がすごいっすよ。あんな魔法は初めて見たっす」


「ん? 今、作ったから、初めて見たんだよ。あたしも初めてだもん」


 えっ? 魔法を作った?


「もしかして、あーちゃんのスキル?」


「うん、そうだよ。あたしのスキルは『錬金魔術』だからね。普通の錬金術も少しできるけど、新しい魔法を錬金する方が得意だよ」


「ええっ!? あーちゃん、すごい」


 僕が思わず叫ぶと、ケモ耳の女の子は、照れたのか、クネクネしている。


「すごいスキルっすね。びっくりしたっす」


「私も初めて聞いたわ。あーちゃん、すごいね。エドさんもジョーモさんも珍しいスキルだけど。あっ、職員さんも珍しいスキルですね」


 モモさんは、皆を気遣ってる。


「私のスキルは、不気味なだけです。アスカさんのスキルには、大変驚きました」


「イアンちゃんのスキルは、すごく役に立つよっ。あたしには、できないもん」


 ケモ耳の女の子に褒められ、職員さんは、照れたような笑みを浮かべた。彼が笑ったのを初めて見た。やっぱり彼女は、みんなを笑顔にする。


 しかし、彼女の記憶力はすごいな。僕は、職員さんの名前なんて、覚えてないよ。


 職員さんが先導され、僕達は洞窟の入り口へと歩いて行った。何も整備してないのに、幅の広い石の階段ができていた。




 ◇◇◇




「皆さん、救出に来ました。臨時に、捜索隊の調査のための合同ミッションが発令されたため、私が同行しています」


 1階層に降りると、僕は少し混乱した。真夜中なのに、洞窟内の天井には昼間のように明るい青空があり、そして一面は、ソアラ高原に似た草原が広がっている。


 僕が今まで入ったことのある洞窟は、どこも薄暗かったのに、これは一体どういうことなんだ?


 職員さんが簡単な紹介をしたけど、1階層にいる人達は、それどころじゃないようだ。青白い光によって運ばれたらしき人達は、青白い顔をして、草原に座っている。



「職員さん、このダンジョン内にいる冒険者の数は、わかるっすか?」


「はい、声を届けたのは、86人です。1階層にいるのは、半数ですね。1階層と2階層を勘違いしたのか、先程、2階層へ降りた冒険者もいます。それに、この場所の調査をしている冒険者もいますね。3階層で交戦中です」


 スラスラと答えてる。


「1階層が高原みたいになってるから、下の階層には行かない方がいいよ。人が潜ると、どんどん深くなるよ」


 ケモ耳の女の子は、僕の知らないことを知ってるよな。ジョーモさんは頷いたけど、モモさんも職員さんも首を傾げている。


「急成長中っすね。ダンジョンコアが、人を避けるために深く潜るっすよ。職員さん、3階層にいる冒険者に、1階層へ戻るように伝えられるっすか?」


「わかりました。強制的に連れてくることは難しいですが、伝えます」



 職員さんは、手から青白いヒトダマのようなものを大量に出した。その青白い光は、地面に吸い込まれていくけど、1階層にも広がっている。


『新迷宮は、急成長中です。人を避けてダンジョンコアが深く潜るようです。異常な急成長は、迷宮の魔物化を招きます。すぐに上の階層へ移動してください。ソアラ高原は多くの人が行き交う要衝です。魔物化した迷宮が発生すると、付近一帯が滅びます!』


 ええっ? 迷宮の魔物化?



「ダメですね。一部の冒険者は、さらに潜ろうとしていますよ。3階層から下への階段に向かっています。迷宮の新階層踏破は、冒険者にとって名誉になるからですよね」


 職員さんは、ガクリとうな垂れている。



「じゃあ、あたしが言うねっ」


 ケモ耳の女の子の全身が淡く光り始めた。また、新しい魔法を錬金しているのだろうか。あっ、彼女から出た光が、職員さんを包んでいる。



『最深部に潜ろうとしてる冒険者に、大事なことを言うよっ! 急成長中の迷宮は、水を求めるよ。水たまりのある階層は危険だよ。水たまりは水分の多い種族を喰うよ。ダンジョンコアは逃げるフリをして、おびき寄せているだけだよ。Aランク冒険者でも、迷宮に喰われるよ。あたし達は、助けに行けないよ。それが、迷宮のおきてだからね』


 彼女は、職員さんの術に便乗したみたいだ。話し方はかわいいのに、念話のような声には、とても恐怖を感じた。



「あっ、3階層にいた冒険者が全員、2階層への階段に向かって、移動しています」


 職員さんは、ホッと笑顔を見せた。


誤字報告ありがとうございます。

付近一体→付近一帯

修正しました。

失礼しましたー(ノ;・ω・)ノアワワ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ