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45、ミッションの誘い

「エドさん、明日、暇っすか?」


 昼の食べ放題が終わる頃、ジョーモさんが食堂にやってきた。この時間に彼が来るのは珍しい。彼は最近は、ほぼ毎日、ソロでミッションを受けているようだ。


「僕は、最近は、昼の食堂の仕事しかしてないので、夕方からは暇ですよ。何かあったんですか?」


 僕が片付けの手を止めると、ジョーモさんは厨房をチラチラ見ながら、残り物の料理を口に放り込む。料理長にまた、行儀が悪いって叱られたいのかな。だが、料理長は仮眠中だ。



「そういえば、エドさんは、夜の見回りをやめたっすね。でも錬金協会は、何も文句を言わなくなったんすよね?」


「はい。僕のガチャ壺が滅多に反応しないことも知られたし、もう支援局員としての貢献度は充分だそうです。ジョーモさんとあーちゃんが引き当てた魔道具は、錬金協会でも作れるようになってますからね」


「あぁ、俺の魔法手袋は、錬金協会で、とんでもない値段で売ってるっすよ。あーちゃんの真偽の壺は、簡易版を量産してるみたいっすね。俺も買ったっすよ」


 ジョーモさんは、ベルトにつけているキーホルダーを僕に見せた。黒くて丸い嘘発見器は、王都の錬金協会でしか売ってないらしいけど、簡易版は、各地の錬金協会だけじゃなく、いろいろな店で売っているらしい。


「流行ってるんですかね? 壺のキーホルダーをつけている人を、たまに見るようになりましたよ。髪留めも売っているらしいけど、花なのか壺なのか、パッと見てもわからないですね」


「キーホルダーより、髪留めの方が売れているらしいっすよ。どちらも、銀貨1枚っすけどね」


「ん? キーホルダーの方が売れてそうな気がしますけど、髪留めの方が人気なんですか?」


「男が身につけるならキーホルダーっすけど、髪留めを買って贈り物にする男が多いらしいっす」


 女性に髪留めを贈るのか。好みが分かれそうだけど? 僕が首を傾げていたためか、ジョーモさんが、クスッと笑った。



「エドさんには、まだわからない話っすか? 嘘がわかる髪留めを贈って、愛の告白をするんすよ。自分の言葉に嘘がないことの証明っす。恋人になれる成功率が高くなるらしいっすよ」


「へぇ、告白に使われるのですか。確かに、嘘がないことの証明になりそうですね」


「エドさんも、すぐに必要なときが来るんじゃないっすか? いや、でも、エドさんには、嘘発見器は不要っすね」


 ジョーモさんは、なぜか意味深にニヤニヤしてるんだよな。前にも、こんな顔をしていたことがあったけど。




「あっ、そうだ。明日、何があるんですか?」


 僕は強引に話を切り替えた。


「ミッションのお誘いっす。今日からソアラ高原で、合同ミッションが始まったんすよ。初級者用の狩場だから、今日参加したのは、Dランク以下だけらしいっすけど」


「ソアラ高原の合同ミッションですか? 僕も参加できるのかな?」


「合同ミッションは、ソロ参加も可能っすよ。今日も、支援局員が、何人か参加してるっす」


 あれ? また、ジョーモさんがニヤニヤしてる。



「明日も、合同ミッションがあるんですか? ソアラ高原なら、Dランク冒険者がある程度の人数がいれば、すぐに制圧できそうですけど」


「合同ミッションの目的は、増えすぎた高原ネズミの駆除なんすけど、高原ホッパーの巣穴が見つかったらしいっすよ」


 高原ホッパー? 泥ホッパーや草ホッパーとは違って、高原ホッパーは小さくて弱い。魔物というより虫だ。Eランク冒険者でさえ、簡単に討伐できる。


「巣穴が見つかったということは、大量発生ってことですか? でも、高原ホッパーは、いろいろな魔物の餌になるから、討伐する必要はないですよね。そんなに大きな巣穴なんですか?」


「俺も、現地に行ったわけじゃないっすけど、さっきギルド長に、捕まったっすよ。高原ホッパーの巣穴が見つかったせいで、今日の合同ミッションは、ほとんど高原ネズミの駆除ができずに、撤退したらしいっす。指導のギルド職員の経験が浅いせいもあったみたいっすけど、ミッションは失敗っすね」


 それで、ジョーモさんが頼まれたのか。



「事情はよくわからないけど、Dランク冒険者が撤退するってことは、何か危険があったんですね」


「俺が聞いたときには、まだ情報が混乱してたっすけど、撤退を失敗した冒険者もいるらしいっす」


 ええっ? 撤退を失敗? ソアラ高原から?


「ソアラ高原からの撤退を失敗することなんて、あるんですか? 小川の流れはゆるやかだし、ソアラ湖は大きいけど深くはないし、急な崖もないし、ソアラ高原の周りの道は整備されてるから、帰り道に迷うこともないし……」


「そうっすよね。俺も何かの冗談かと思ったっす。ただ、Eランクの新人冒険者が大勢参加しているから、何かアクシデントがあったのかもしれないっす」


「あ、新人冒険者ですか……なるほど」


「とりあえず、撤退を失敗した下位冒険者を連れ帰るために、夕方から、捜索の緊急ミッションが出てるっす。ギルド長が自ら、ミッション終わりの小規模なCランクパーティに、依頼してるみたいっすよ」


 Cランクパーティってことは、僕が追放された幼馴染のパーティも当てはまる。たぶん、受けるだろうな。


「夜は、ソアラ高原でも、たまに草ホッパーがいますからね。Dランク冒険者にはキツイですね」


 僕の表情の変化に、ジョーモさんは気づいたみたいだ。気遣うような表情に変わった。僕は、もういい加減、切り替えないとな。



「エドさん、今夜、冒険者ギルドに行って、明日の合同ミッションに参加しないっすか? 高原ネズミが増えると、ソアラ高原近くの果樹園が大きな被害を受けるっす」


「わかりました。じゃあ、今夜受注して、明日の朝からですね。高原ネズミの糞や尿は作物を枯らすから、高原を通る小川の水を使う果樹園には、被害が出ますね」


「高原ネズミは、繁殖力が半端ないっす。3日ごとに100体の子を産むから、早くしないと大変なことになるっすよ」


 僕は、大きく頷いた。ん? なぜ、ジョーモさんはニヤニヤしてるんだ?



「ジョーモさん、まだ何かあるんですか?」


「ん? まぁ、今夜のお楽しみっすね、一応、そのまま向かう可能性もあるから、準備をお願いするっす」


「わかりました、じゃあ、また後で」


 僕は、ジョーモさんのニヤニヤの理由はわからなかったが、昼の食べ放題の片付け作業に戻った。



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