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43、ナープラスト、断罪される

「壺が赤く染まったようだが、キミの言葉に嘘がないなら、なぜ盗まれたのだ? キミは、Aランクパーティの副団長だろう?」


「それは、アスカさんがセルス村の住人だからです。盗賊からも奪うほど技術の高い盗賊に狙われたら、私のような魔導士ではかなわないですよ」


 空中に浮かぶ壺は赤く染まっているが、副団長さんは、完全に無視だな。焼き払おうとして失敗したことも忘れているかのようだ。


「私がアスカさんに会ったときは、副団長からもらったと、嬉しそうに前髪に留めた髪飾りを指差していたぞ」


「盗賊は、嘘をつきます」


「髪飾りは、キミがつけてあげたのだろう?」


「盗まれた物を、なぜ私がつけるのですか」


「それはおかしいな。アスカさんは、髪飾りの金具の扱い方を知らなかった。試験の後は、私がつけてあげたからな」


「なっ……それは、できないフリをしたのではないですか? ほら、今も、別の髪留めをしているじゃないですか」


 エシャナさんは、ケモ耳の女の子に視線を向けた。



「これは、真偽を見抜く魔道具の簡易版です。宿屋の娘さんがつけてくれたんです。僕に頼まれたけど、難しくてわからなかったから」


 僕は、大きな声で補足した。エシャナさんは、大きく頷いてくれた。ちゃんと言えて良かった。



「だろうな。この金具は、王都や大きな街で販売されるアクセサリーにしか使われていない。エドさんのような少年にも、また、手先が不器用な獣人の子供にも、扱えないだろう」


「子供に見えますけど、アスカさんは46歳ですよ? わざと子供のフリをして、周りを騙しているのです!」


「キミは、本当に無知なのだな。アスカさんは、人族とビーウルフ族のハーフだ。ビーウルフ族は、千年以上生きる者もいる女系種族だ。基本的に他種族との間に子を作る。ハーフだとは言ったが、女の子に生まれると純血のビーウルフ族だ。彼女が46歳なら、人族でいえば3〜4歳であろう。知能の高い種族だから、人族の幼児とは比べ物にならないほど賢いがな」


 ケモ耳の女の子は、そんなに長寿なのか。


「まさか、そんな……」


「ナープラストの副団長は、3〜4歳の子供を騙した外道だということだ。しかも獣人とわかっていて、魔物の血を浴びさせるなど、裏ギルドの奴らでも躊躇するほどの愚行だ」


 エシャナさんは、そのことも知ってたんだな。ギルド前広場での出来事だから、目撃者も多かったのか。



「その話は、俺からしよう」


 僕は、プラストさんに拡声器を渡した。よかった。この話は、僕はしたくない。



「エシャナ騎士団長、俺の人選ミスだ。ナープラストは、最低なパーティに堕ちた。罪をでっち上げるばかりか、それを理由に追放し、さらに義賊であるセルス団の名誉をおとしめた」


 プラストさんは、メンバーの表情をサッと見回した。団長と副団長は、下を向いている。



「アスカさんからセルス村の人達を困らせることはやめてくれと言われた時、魔物の血を浴びればセルス団は助かるかもしれないと言って、彼女を騙したようだ。そうしないと、セルス団は捕まり、セルス村が潰されるとも言ったらしいな」


 プラストさんのこの話には、誰も何も言わない。


「そして、アスカさんが魔物の血を浴びると、彼女が罪を認めたと主張し、彼女が盗賊だということをナープラストが暴いたと宣言したらしい。ナープラストが、魔物の青い血が罪人の証だと知らなかったアスカさんを、卑怯な言い方で脅したことは、大勢が見ている。さらに、腐った物を彼女に投げつけるように、誘導したようだな」


 ナープラストのメンバーは、僕が浮かべている壺の色をチラチラと見ているが、壺は白い。


「アスカさんは何もしていないのに、魔物の血を浴び、宿にも戻れず、また村にも帰れない状態で、空腹で街をさまよい、畑で倒れていたようだ。獣人は嗅覚が鋭い。魔物の血を浴びた臭さは想像できるか? おそらく、身体が麻痺していただろう。彼女を見つけたエドさんが食堂に連れて来たとき、強烈な刺激臭で、人族も避難したほどの臭いだぞ!」


 プラストさんが彼女のことを思って、ナープラストのメンバーに激しく怒っている。それだけで僕の心は、ふわっと軽くなった。


 彼は、ナープラストのメンバーの顔を一人一人見ているようだ。彼らの表情は、二極化しているように見えた。


 一部の人は、つらそうにしている。プラストさんの言葉が刺さったのだろう。だが大半は苛立っているようだ。



「小さな女の子を騙し、こんなことを平然とやっているのが、今のナープラストだ! ナープラストは、亡き友トナーと俺で立ち上げた。弱い冒険者を助け育てることが、俺達の目的だった。トナーが死んで、俺も右足を失ったとき、ナープラストを解散しようと考えた。だが、大規模なAランクパーティが消えると緊急を要する魔物のスタンピードが発生した時に困ると、グランドマスターに説得された。だから俺は、信頼できると思った二人に、ナープラストを託し、パーティから抜ける決断をした」


 友達と二人で立ち上げたのか。あっ、パーティの名前のナーは、トナーさんのナーかな? トナーとプラストで、ナープラストか。


 プラストさんの今の言葉には、さっきまで苛立った表情をしていた人達にも刺さったようだ。うつむく人が増えてきた。


 彼は、王都から来たユウシェル・リーズ公爵の方に視線を向けた。リーズ公爵が頷くと、プラストさんは拡声器を構え、大きく息を吸った。



「俺は、今、この時をもって、ナープラストのメンバー全員を追放する!」


 ええっ!? 全員、追放?


 僕は驚き、手に持っていた魔道具を落としそうになってしまった。あぶない。これは、ケモ耳の女の子が引き当てた魔道具だ。



「グランドマスターの代理として、私が許可します。はい。今、ナープラストの皆さんの追放手続きが完了しました」


 リーズ公爵は、準備していた魔道具を操作したようだ。だから、追放ざまぁ支援局員がここにいるのか。


 追放を言い渡された人達の多くは、ひどすぎると騒いでいる。



 さらに追い打ちをかけるように、リーズ公爵が口を開く。


「なお、高位ランク冒険者の倫理規定により、Aランク以上の冒険者は、1ランクダウンの手続きも完了しました。本館にて、新しい冒険者カードと交換してください。3日以内に交換しない場合は引退とみなし、冒険者登録を抹消します。これでも寛大すぎるくらいですよ。恥を知りなさい!」


 彼らは呆然として、次々と崩れ落ちるように膝をついた。


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