40、お子様用の食べ放題
「わぁっ! すごくかわいいねっ。どうしてこんなに丸くなってるの?」
ドリア風の焼き飯は、丸い形に整えて、料理人さんに丸く焼いてもらった薄焼き玉子の上に乗せてある。黄色い玉子焼きの中心に、赤くてこんもりとした焼き飯が乗っているから、パッと見た感じでは、花に見える。
「玉子焼きは料理人さんの技術だよ。真ん中のは、僕が作った混ぜ飯を、小さな茶碗に入れて押し固めて丸くしたんだ」
「すごくかわいいから、食べるのがもったいないよ」
「お子様用の料理だから、あーちゃんの感想を聞きたいな。今、厨房では、これをたくさん作ってるよ」
「わかったっ。じゃあ食べてみるねっ」
ケモ耳の女の子は、そーっと焼き飯をスプーンですくっている。なるほど、こういう行動になるのか。でも、彼女は46歳だよな? 見た目は4〜5歳だけど、感覚は大人かもしれない。
「エドちゃん! 甘くてすっごく美味しいよっ! 食べたことのない味だよ」
「お口に合ってよかったよ」
彼女は、美味しいとわかるとモリモリ食べるのに、なるべく崩さないように慎重に食べている。目をキラキラさせているから、崩さないことが楽しいのかもしれない。
「エドさんの白ごはん、すごく美味しかったですよ。おかずがなくても、そのままで食べちゃった」
食べちゃったのかぁ。かわいい〜。あ、いや、こんなことを言うと、モモさんに失礼だよな。
「モモさんに気に入ってもらえてよかったです」
「ホール係の人が持ってきてくれたけど、食べ放題の方に並んだ白ごはんは、一瞬でなくなったみたいですよ。すぐに列ができていたもの」
「えっ? 大きめの鍋で作ったんですけど」
料理が並ぶテーブルには、待っている人もいる。だけど、これからはデザートの時間だよな。
「エドさんの混ぜ飯は、常連さんならすぐにわかるんじゃないかな? 料理人さんに聞いてる人もいるし」
料理人さんがバラしているのか。
「モモ、悪いけど、午後は食堂を手伝ってくれ」
料理長が、なぜかニヤニヤしながら、僕達のテーブルに来た。手には何かを持っている。あっ、ジョーモさんの土偶かな?
「料理長、ホール係は足りてるんじゃないですか?」
「これだよ。エドの提案なんだけどな。子供用の料理は、別のテーブルに置くことにした。お嬢ちゃん、これを見て、どう思う?」
料理長は、ケモ耳の女の子の前に、小さな土偶を置いた。蓋付きの容器になっているみたいだ。
「いい匂いがするよ。でも、あまりかわいくない」
「そうか。土人形だからな。蓋を開けてみてくれ」
料理長は、彼女の動きを観察しているようだ。スンスンと匂いを嗅いだあと、蓋がどこか分からないみたいで、蓋と一緒に深皿も持って、首を傾げている。
だけど、持ち上げたことで蓋がズレたようだ。ようやく蓋を開けると、目を輝かせた。
「中に、お弁当が入ってる!」
子供でも一口で食べられそうな小さい握り飯が並んでいて、小さなミートボールや色鮮やかなサラダが添えられていた。可愛らしい彩りを意識したみたいだ。
「食べてみてくれ」
「うん、あっ、ミートボールが……」
フォークで突き刺そうとして、コロコロと飛び出してしまったようだ。
「やはり、取り出しにくいか。手づかみで食べる物の方が良いかな」
そう尋ねられても、ケモ耳の女の子は首を傾げるだけだった。ミートボールが小さいから失敗するんだよな。
「料理長、握り飯が小さいのは良いと思いますが、ツルンと滑りやすいものは、小さいと逆に食べにくいですよ」
「ほう? エドなら、どうする?」
「逆に大きめは、どうですか? 容器の幅いっぱいにして、平べったくすれば、大きなミートボールを食べた気になりそうです」
「なるほどな。丸いから転がってしまうか。エド、他には?」
「うーむ、容器の蓋がわかりにくいみたいだから、蓋と深皿の色を変えると良いと思います」
「それは、さすがにジョーモにも難しいだろ」
「いえ、作った容器の蓋を入れ替えればいいんですよ。黒っぽい容器に、土色の蓋をすればわかりやすいし、土色の容器には黒っぽい蓋にすれば……」
「おお! なるほどな! 確かにそれならできる。やはり、エドは天才だな」
いやいや、そんな……。
「蓋の色が違うと、あたしでもわかりやすいよっ。エドちゃんは、天才だね」
「あーちゃん、食べ放題もエドさんの発案なのよ」
「エドちゃん、すごいねっ」
そんなに褒められると、僕は、どう返せばいいかわからなくなる。
「あはは、エドは照れたか。モモ、子供用のテーブルに、字が読めなくてもわかるように、絵を貼りたいんだよ。午後の仕事は、クレーム対策だ。手伝ってくれ」
「なるほど。お子様用の料金についてのクレームがあったから、テーブルを分けるのですね。わかりました。お手伝いします」
「モモちゃん、子供用なら、かわいくするといいよっ。大人が何も言わなくても近寄っていくよ」
「あーちゃんも天才だな。モモを手伝ってやってくれないか? 子供の目線だと、見え方が違うかもしれねぇ」
「うん、いいよっ」
料理長のお願いに、ケモ耳の女の子はピカピカな笑顔で承諾した。彼女は、誰かを助けることが好きみたいだ。
それからしばらくの間、二人は、子供用の料理を並べるテーブルを飾る準備を進めた。一方、僕は厨房で、子供が好きそうなデザート系の混ぜ飯を作った。
料理人さん達も、子供用の料理を作っているけど、チマチマした作業になるから、好き嫌いが分かれるようだ。
ジョーモさんは、いろいろな色の小さな土偶の容器を作ってくれた。土色と黒だけじゃない。赤や緑の土偶もある。
「もうすぐ食べ放題時間が終わっちまうから、試作品は子供がいるテーブルに配ってきてくれ」
すべての準備が終わった頃には、食べ放題時間も終わっていた。まぁ、明日からは、大活躍するだろう。
後片付けをしていると、冒険者ギルドの職員の制服を着た人が、食堂に入ってきた。見たことない人だけど。
「ジョーモさんとアスカさん、そしてエドさんをお迎えに来ました。冒険者ギルドに来てほしいと、ナープラストの団長からの伝言です」
すると、ジョーモさんがすぐに詰め寄る。
「ナープラストの団長に呼び出される意味がわからないっすよ! 俺達は、プラストさんを待ってるっす」
「あっ、失礼しました。そのプラストさんからの伝言です。設立者権限により、先程、プラストさんが、ナープラストの団長に復帰されました」




