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39、ケモ耳の女の子とモモさんの優しい時間

 朝食を食べに食堂へ行くと、昼食の食べ放題時間が始まっていた。ケモ耳の女の子を一人にしないためか、モモさんも昼休憩にするという。


 席に案内され、簡単な説明を受けると、ケモ耳の女の子はワクワクし始めたようだ。


「何を食べてもいいの?」


「食べ残しがないようにすれば、何をどれだけ食べてもいいんだよ。この時間は、宿に宿泊してる人は少ないから、外からもお客さんが来るけどね」


 僕がそう説明すると、彼女の表情は、少し暗くなったように見えた。昨日の夜のことを思い出したのか。


「あたしと一緒にいると、エドちゃんもモモちゃんも、街の人から酷いことされないかな」


 えっ? 僕達の心配をしてくれてたのか。


「あーちゃん、ウチは安宿なの。酒場時間以外は、中級以上の冒険者は居ないわ。あっ、エドさんはCランクに昇格したから、中級冒険者なんだけどね」


 モモさんは、優しいな。ケモ耳の女の子の気持ちを理解して、どう話せば相手の気持ちが楽になるかを考えて、気遣って喋ってる。


「じゃあ、大丈夫かなっ」


「あーちゃん、一緒に料理を取りに行こうか」


「うんっ!」




 料理が並ぶテーブルを見ると、僕はつい足りない料理がないかと見回してしまう。昼の食べ放題時間は始まったばかりだから、今のところは大丈夫だ。


「あーちゃんには、見にくいかな。子供が来ることを想定できてなかったなぁ」


 僕は、ケモ耳の女の子が必死に背伸びをしている姿を見て、新たな発見をした。


「私が取るから、エドさんは、あーちゃんが見やすいように料理を見せてあげたらどうかな?」


「そうですね。あーちゃん、ちょっと失礼するね」


 僕はモモさんの提案を勘違いして、ケモ耳の女の子を抱き上げた。モモさんは、一瞬、驚いた顔をしていた。彼女は、料理皿を持ったらいいと言ったみたいだ。



「わぁっ! すっごくたくさんの綺麗な料理があるね。すごい、全部美味しそう!」


 ケモ耳の女の子が大騒ぎしたからか、厨房にいた料理人さんの視線を感じる。子供には、位置が高すぎることに気づいたみたいだな。


 小さな子の自由にさせると、ぐちゃぐちゃになりそうだから、子供用の料理は、別のテーブルを用意するのもいいかもしれない。


「あーちゃん、どれを取ればいいかな?」


「えーっとね。あれと、こっちのと……」


 ケモ耳の女の子の指示通りに、モモさんは綺麗に皿に取ってあげている。知らない人から見ると、僕達はどう見えるのだろうか。



「エドさん、先に席に戻りますね。あーちゃん、行きましょう」


「モモちゃん、あたしの分のお皿は、あたしが持つよ」


「上手に運べるかしら?」


「うん、任せてっ。エドちゃんも、早く料理を取って来てね」


 二人はニコニコしながら、席に戻っていく。モモさんは、小さな子の扱いが上手いな。あっ、46歳だけど。




「エド、朝飯か?」


「あっ、料理長! はい、さっき起きたばかりで」


 料理長も昨夜のことは、厨房内で聞いていたはずだ。


「昼の食べ放題でな、子供も同じ料金を取ることで、ちょっとクレームが来てるらしいんだよ」


「確かに、子供は食べる量が少ないですよね。でも、子供用の特別料理を作る手間がかかると聞いてますけど」


 テーブルには、お子様用という札が付いた料理が、いくつも並んでいる。


「そうなんだけどよ、クレームは多いらしいぜ。だが今のエドを見ていて、改善策が浮かんだぞ」


「お子様用の低いテーブルを作るんですね?」


 僕が言い当てたらしい。料理長は、頭をぽりぽりと掻いている。


「やはり、エドは、よく見てるよな。足場を置こうかという話は出てたんだが、逆に危険じゃないかという声もあってな」


「なるほど。いっそのこと、振り切った感じにしてしまうのはどうですか? 低いテーブルには、モモさんにかわいいイラストを書いてもらって、子供が喜ぶ料理だけを並べるとか。ぐちゃぐちゃにならないように、取りやすい物がいいと思いますけど」


「大皿で取り放題にするんじゃなくて、小皿を並べるか」


「洗い物は増えそうだけど、いいですね。あっ、ジョーモさんの小さな土偶……は、さすがに怒られるか」


「いや、ジョーモの土人形は、強度を変えられるから、割れない容器になるぞ。中は空洞だから、縦に分割すれば、蓋付きの深皿として使える! 面白いな。ジョーモが来る前に、料理を始めておくぜ」


 料理長は、ニヤニヤと笑いながら、厨房へ戻って行った。土偶を食器扱いするなんて、ジョーモさんが怒るかもしれないけど、確かに、割れない蓋付きの容器は、子供向きだよな。蓋を開けるまで何が入っているかわからないのも、ワクワクに繋がる。




「エドちゃん、遅いよっ」


「ごめん。ちょっと、子供用の食べ放題を考えてたんだよ。あーちゃんのおかげで、良いアイデアが浮かんだみたいだよ」


 僕がそう言うと、ケモ耳の女の子はキョトンとしている。また、おでこに、赤いごはん粒が付いてるよ。彼女は、ケチャップとチーズが好きみたいだな。


「エドさん、この後、混ぜ飯を作るの?」


「リクエストがあれば作りますよ。そろそろ、追加の料理が必要な頃ですし。あっ、それで二人とも、おかわりをしに行かないのかな?」


「私、エドさんが炊く白ごはんを食べてみたいわ。タイミングが合わなくて、まだ食べてないの」


「あたしは、食べたことのないものが食べたいよっ」


 可愛い女の子二人にリクエストされたら、当然作るに決まってる。モモさんの休憩時間には限りがあるから、早くしないとな。


「白いごはんは出てなかったから、すぐに作ってきますね。あーちゃんの嫌いな食べ物は何?」


「ん? 生の野菜は、あまり好きじゃないけど食べられるよっ」


「わかりました。ちょっと待っててね」




 僕が厨房へと入っていくと、嬉々とした料理人さんが、僕が口を開く前に、大きな鍋を出してきた。


「エドさん、ごはんを炊いてもらえますか」


「はい。モモさんからも、白ごはんのリクエストがありました……って、準備万端ですね」


 僕が話している間に、鍋には、穀物と水が入れられた。この量ならすぐにできる。僕は、数回、混ぜ混ぜをした。


「あざっす! すぐに出してきます。あっ、モモさんの分は、茶碗に入れて運んでおきますね」


「はい、お願いします。僕は、子供向けのチーズを使った混ぜ飯を作ります」


 深い鉢に、チーズと赤い野菜、そして鳥系の肉と穀物を入れて、混ぜ混ぜをする。チーズの焼けたいい匂いがしてきたので、完成だ。ドリア風の焼き飯かな?



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