36、ガチャ壺の個性を反映した魔道具
本日2話目です。
「どう変になったか、話せる?」
ケモ耳の女の子の涙が止まるのを待って、僕はさらに質問を重ねた。彼女の気持ちを考えると、僕がやっていることは、あまりにも残酷だ。
だけど、耳を傾けている冒険者達に、何があったのかを正しく理解させないと、噂は、さらに酷くなる。
「うん、追放するって言われて、セルス村の人は義賊なのに、あたしは盗賊だって言われたの。セルス団は解散するしかないとか、あたしのせいで村の人が捕まるって言われたよ」
「誰が、そんなことを言ったの?」
「わかんない。まだ名前を覚えてないもん。でも、冒険者ギルドの1階で話してたから、職員さんは知ってるかもしれない」
僕は、この話を聞いている人達の表情を確認した。この中にも、誰が彼女にそんなことを言ったか、知っている人は居そうだな。
「そっか。他に言われたことはある?」
「うん、村のみんなが困ることはやめてってお願いしたら、あたしが魔物の血を浴びれば、セルス団は助かるかもしれないって言われたの。でもそれは、罪人の印だったの。青い血を浴びたら、罪を認めたんだって言われた。村は潰されるって言われたの」
「そんな、騙すようなことをされたのか。青い血は、どこで浴びたの?」
「冒険者ギルド前の広場だよ。集まってた人に、あたしが盗賊だってことをナープラストが暴いた、って言ったよ。セルス団も義賊じゃないことがわかったって。違うって言ったら、いろいろな物が飛んできた。青い血が臭かったから、もう何を投げられてもいいやって思ったの」
壺が赤くなった。彼女が話した最後が赤字だ。
「あーちゃん、最後の部分が嘘だね。何を投げられてもいいなんて、思ってないよね?」
「あっ……うん。悲しくなったから、何を投げられているか、わからなかったの。臭くて、冷たかった」
壺が白色に戻った。
もう対象者がガチャを引ける状態になっているけど、まだ、明らかにするべきことがある。僕は、心を鬼にして、質問を続ける。
「あーちゃん、昨日のモンツク狩りの報酬は、どう分配したの?」
「えっ? わかんない」
「お金はもらってないの? 終了報告をすれば、そのときのリーダーがもらって、参加者に分配するはずだけど」
「あたしは、宿代がなかったから、たぶん、宿代に使ったんだと思う」
は? モンツク狩りの報酬が、そんなに安いわけないよな? ジョーモさんの表情をチラッと見ると、怒りに震えていた。
「あーちゃんの荷物は? この街に来るときに何も持って来なかったの?」
「宿に置いてたけど、宿に行ったら罪人は入れないって言われたの。だから、わかんない」
「それって、お金も荷物も無い状態だよね? それで、畑で寝ようとしていたの? 村に帰ろうとは考えなかった?」
僕は残酷な質問をした。また、彼女の目からは涙があふれてくる。
「罪人の印があるから帰れないよ。あたしのせいで、村が潰されたらどうしようって考えてたら、もう、何もわからなくなって……」
しばらくして彼女が泣き止むと、今度は僕の目から涙があふれてきた。彼女は慌てた顔をしている。優しい子だな。
僕は涙を拭き、ジョーモさんの方に視線を移した。
「ジョーモさん、僕がまだ聞いてないことはありませんか」
すると、ジョーモさんの横で座っているプラストさんが、手をあげた。
「プラストさん、どうぞ」
「さっきの話の大人っぽい女性は、エドさんも知っているのか? 口裏を合わせた盗賊ではないかという疑惑が残る」
「はい、ノワール洞窟で会いました。彼女は、今は職務中らしいですが、盗賊ではありません。むしろ盗賊を捕らえる側の人です」
「あぁ、そのエシャナか。わかった」
他に何かないかと、話を聞いている冒険者達をサッと見回した。だが、目を潤ませている人はいても、疑問のありそうな人はいなかった。
話は、ここまででいいだろう。壺を振ってガチャボタンを出現させようか。
白い壺を左右にユサユサと振ると、壺が淡い光を放ち始め、目まぐるしく色が変わっていく。そして、真っ黒になったところで変化は止まった。
その変化を見ていた冒険者達は、壺に魅入られたかのように、呆然としていた。
「あーちゃん、つらい話をしてくれてありがとう。ガチャのボタンが出現しました。どれか一つを押してみてください」
壺には、ジョーモさんのときと同じく、左から、武器、防具、魔道具の3つのボタンが出現していた。
「あたしが、選んでいいの?」
「うん、このガチャ壺は、あーちゃんの話を聞いたから、あーちゃんに使って欲しいものを作ると思うよ」
「うーむ、どうしよう」
首を傾げて悩む仕草が、とてもかわいい。たくさん泣いたから、少しスッキリしたようにも見える。
「あたしは魔導系だから、武器はあまり使わないし、防具もいらないし……魔道具にしようかな?」
「じゃあ、魔道具のボタンを押してみて」
「うんっ、押してみるっ」
ケモ耳の女の子は、一番右のボタンを押した。すると壺の上部から、カプセルが飛び出す。
カプセルが食堂の天井近くでパカっと割れて消えると、ゆっくりと何かが、彼女の手元に落ちてきた。
説明が出てきたので、僕はそれを読み上げる。
「あーちゃんが引き当てたのは、真偽の壺セットです。それを使って復讐するも良し、売ってお金に変えても良しです。以上、追放ざまぁ支援局でした」
セリフが終わると、壺はパッと消えた。だが、目の前の文字は、質問対応のために、まだ消えていない。
「エドちゃん、これ、なぁに? かわいいけど、何だかわかんないよ」
かわいいのか? 僕は、真偽の壺セットの説明を表示した。
「人の頭くらいの黒くて丸い物は、僕のガチャ壺の特徴を持つ嘘発見器だよ。上にスイッチがあるから、嘘を見抜きたい人に向けて押せば、嘘がわかる。もう一度押せば、スイッチが切れるよ」
「ええっ! すごぉい! じゃあ、こっちの2つは?」
「スイッチはなくて、簡易版かな。髪留めタイプとキーホルダータイプだね。声が聞こえる距離じゃないと反応しないし、それを近づけないと誰が嘘をついているかわからないけど、小さいから使いやすいかな?」
「丸いのは黒い壺だけど、他の2つは赤い壺みたいなのが付いてるね」
「誰かが嘘を付いてる音を拾って、赤くなってるんだと思うよ」
僕がそう言うと、シーンと静まり返った。
「わっ! 白くなった! 面白〜いっ」
「これを使えば、もう騙されないよ。ガチャ壺は、あーちゃんに、信じられる仲間を見つけてって、言ってるんだと思うよ」




