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35、ケモ耳の女の子の身に起こった真実

「エドちゃん、すっごく美味しかったよっ」


「お口に合って、良かったよ」


 ケモ耳の女の子は、慌てて食べたからか、なぜかおでこに、ごはん粒が付いていた。一生懸命に食べました感が伝わってきて、癒される。


 いや、こんなことを考えている場合じゃないな。ニコニコと笑顔を向けてくれたことで、僕は安心したけと、大事なのはこれからだ。


 食堂にいる冒険者達の前で、この子が受けた被害を聞き、彼女がナープラストに騙されたことを、証明しなければならない。



「じゃあ、あーちゃん、僕の仕事に付き合ってくれる? 今から、決まった言葉もしゃべるけど、ちゃんと話は聞くからね」


「ん? うん」


 ケモ耳の女の子は、急に不安そうな表情に変わった。周りには、冒険者が大勢集まってきているからだよな。


 僕は、ジョーモさんに合図をした。彼は、ナープラストを立ち上げた、右足が義足のプラストさんを、僕達がよく見える席に座らせた。


 他の冒険者達の様子を見回してみた。大半は、グラスを持って、興味本位で集まって来たようだ。だが、真剣に話を聞こうとする人もいる。



 よし、始めよう!



 僕は、腕輪に触れ、魔道具を起動した。そして、目の前に現れた文章を読み上げる。どうやら、このセリフが必須らしい。


「不幸な冒険者を発見しました」


「えっ? あたし?」


「うん、決まった説明があるから、聞いてくれる?」


 ケモ耳の女の子にしっかりと視線を向けた。これも、指示通りだ。僕が対象者の顔を見ることで、魔道具が対象者を認識するのかな。



「不幸な冒険者さんに説明しますね。突然の追放って、ムカつきますよね? 復讐したいですよね? そんなアナタを支援するのが、私達、追放ざまぁ支援局なのです」


 そこまで読み上げると、白い壺が出てきた。


 壺を手で持ち、ケモ耳の女の子が見やすい位置に、少し下げる。


「この壺は、魔道具です。アナタの不幸な話を聞かせてください。それに応じてレア度が決まります。話が終わったら、ガチャを引くことができるのです。武器や防具そして魔道具の中から、不幸なアナタが復讐するために役立つ物が得られますよ」


「えっ? 復讐なんて考えてないよ」


 ケモ耳の女の子は、困った顔をしていた。こんなに酷い目に遭ったのに、許すのか。


 対象者がガチャを引かない選択をした場合は、支援局員へスカウトをするようにと指示が出てきた。それで、金髪の派手なメイクの女性は、僕をスカウトすると言ったのか。


「さぁ、アナタの不幸な話をしちゃってください」


 セリフは、ここまでだ。



 僕は、ジョーモさんの方に視線を向けた。この子は、自分の名誉のためにも、話を聞いている冒険者達に、何があったかを話すべきだよな。


 ジョーモさんは、何も言わない。そうか、頼っちゃダメだ。これは、僕の仕事だ。



「えー、でも〜」


「あーちゃん、ここまでは、決まったセリフを喋らなきゃいけなかったんだ。順番に話を聞かせてくれる? この壺は、嘘を見抜くからね」


「うん……」


「こんなに酷い目に遭ったのに、あーちゃんは、ナープラストの人達を許すの?」


「全然、大丈夫だよ。あたしは元気だから……ええっ!? どうして赤くなったの?」


 白い壺は、赤色に変わった。今の彼女の言葉も、前半が赤文字になっている。


「あーちゃんが、嘘をついたからだよ。全然大丈夫じゃないし、全然元気じゃないでしょ」


「ええっと……うん。とても悲しい」


 彼女がそう言うと、壺は白色に戻った。その変化に、周りで見ている人達は、ザワザワし始めた。ほとんどの人は、追放ざまぁ支援ガチャを知っているみたいだな。



「あーちゃん、今朝のことから、話してくれる? 試験の前に、髪飾りをもらったんだよね?」


「うん、副団長さんがあげるって言ったの。チカラを発揮できる髪飾りだから、試験に合格できるようにって言って、あたしの髪に付けてくれたよ」


「本当に、あげるって言われた?」


「うん、副団長さんは、私には可愛すぎる子供っぽい髪飾りだからアスカさんにあげる、って言ったよ」


 壺は、白いままだ。



「筆記試験の会場には、髪飾りをつけたまま行ったの?」


「うん、副団長さんがそうするといいと言ったから、髪飾りをつけたまま行ったけど、エシャナちゃんに会って……あっ、こっそりだった。どうしよう」


「仕事で来ていた大人っぽい女性に会ったんだね」


「あっ、うん。大人っぽい女性に会って、その人が、試験会場に魔道具を持ち込むのは禁止だよって言ったから、あたしが困っていたら、試験が終わるまで、その人が預かってくれることになったよ。エドちゃんに会ったときに、髪飾りを返してもらったの」


「僕に、Dランクのカードを見せてくれた後だよね?」


「うん、エシャナちゃ……じゃなくて、その人は、合格発表のときに、おめでとうを言いに来るって言ったよ。エドちゃんに会った後に、エシャ……その人が、髪飾りを返してくれたよ」


「あーちゃんは、髪飾りを自分で付けられなくて、大人っぽい女性に付けてもらってたね。その後、僕がCランクの実技試験会場に行くのを二人で見送ってくれたね」


「うん! あっ、エドちゃんは合格できた?」


「あーちゃんが合格の日だって言ってくれたおかげで、合格できたよ。さっき、畑で会ったときに、合格祝いをしてくれてるって話したのは、Cランクのお祝いのことだよ」


「あ、あたし、ここに来るまでのこと、あまり覚えてないよ。ごめんね」


 つらいことを思い出させてしまったな。だけど、話を聞いている冒険者達に理解させるには、必要なことだ。



「あーちゃん、今日の夕方のことは、話せるかな? ナープラストから追放された理由は何?」


 僕がそう尋ねると、ケモ耳の女の子の目からは、涙があふれてきた。可哀想で見ていられない。だが、これは必要なことだ。


「団長さんから、あたしが髪飾りを盗んだ、って言われたの。それを使って筆記試験を受けたって。髪飾りも冒険者カードも取られちゃった」


「副団長さんは、何か言ったの?」


「あたしが髪飾りを可愛いって言ったから、高位冒険者になったら貸してあげてるって言ったって。高い魔道具だから、あげるわけないって言ってた。違うのに」


「あげると貸してあげるを、あーちゃんが聞き間違えたって言ったんだね? 副団長さんが髪飾りを付けてくれたのに、変だよね」


「うん、変なの。その後は、もっと変になったの」


 また、彼女の目からは、涙があふれて止まらなくなった。可哀想だけど、きちんと最後まで聞かないとな。


皆様、いつもありがとうございます。

アスカの話が途中なので、今夜もう1話更新します。よろしくお願いします。

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