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112、別行動

 僕達は食堂を離れて、町の中を歩いた。ヤヨイさんが、しょんぼりしているからか、みんな無言だった。


 しばらく歩くと、スウセイさんが立ち止まった。


「鍵は3本あるから、3つに分かれようか。ヤヨイさん、その宿屋の地下に冒険者ギルドの出張所があるようだ。ムロさんが付き添って、紛失届を出してください。あっ、俺達が泊まる宿屋の場所は、わかってる?」


「場所は大丈夫です。俺が責任を持って、ヤヨイさんと手続きをしてきます」


 スウセイさんは、ムロさんに鍵を渡した。あぁ、宿屋の鍵だな。ミラックさんにも渡している。



「ミラックは、闇市が出る場所を探してくれ。まだ、盗品は並んでないだろうけど、俺達が探していることを印象付けてほしい。俺は、先に宿屋に戻って連泊手続きをしてから、組織の場所を探してみるよ。えーっと、イアンさんとエドさんは、どっちか選んでくれる?」


 どっちについて行くか、だよな。そんなこと、僕には決められない。


「何かあったときの連絡を考えれば、私はミラックさんと組むのが良さそうですね」


「あぁ、確かに、ミラックは、イアンさんの念話を受けることはできても、発するのは苦手だからな。じゃあ、エドさんは、俺と一緒に、まずは宿屋だ」


 僕は、コクリと頷いた。通りすがりの人の目が気になって、頷くだけで精一杯だった。すっかり夜になったからか、荒っぽい雰囲気の人が増えている。



「では、日付が変わるまでには、宿屋に戻ってくれ。それまでは、自由行動だ」


 スウセイさんがそう言うと、それぞれ目的地へと、分かれていった。




 ◇◇◇




「エドさん、緊張してる?」


「えっ? あ、はい。かなり怪しい雰囲気の人が増えてきましたから、変な汗が出ます」


「ふっ、でも、周りの方が緊張してるみたいだよ。3つに分けたのは正解だったね。ムロさん達は安全になった。変なのは、二手に分かれたよ。イアンさんを狙う賞金稼ぎには、ミラックが適任だ」


 ん? あらかじめ、こう分けることを決めていたのかな。僕は、残った枠に入ったのだと思ってたけど。



「スウセイさん、もしかして、ムロさん達が安全になるようにとの配慮ですか?」


「それもあるけど、ヤヨイさんの落ち込み方が激しいからね。彼女が、精神的に不安定なのはわかっていたけど、落ち着くまでは、俺と離れる方が良さそうだなと思ってね」


「あー、確かに、そうでした。でも今回の件は、ヤヨイさんの失敗ですから、言葉が見つからないですけど」


 僕は、作戦のことを口に出してはいけないと、感じていた。たぶん、スウセイさんに試されている。


「まぁ、どこから狙われていたのか、わからないけどね。それに、さっきの店長も、ちょっと怪しかったからな」


 えっ? 店長が盗むなんてことも、あるのか? 聞き返そうとしたときには、宿屋に戻っていた。




「おかえりなさいませ」


 あれ? 挨拶された。でも、笑顔はないけど。


「ちょっとトラブルがあってね。連泊に切り替えたいんだけど、大丈夫かな?」


 スウセイさんは鍵を出し、フロントの人に話しかけた。


「何日くらいでしょうか」


「とりあえず、明日の夜も宿泊したい。その状況によるんだけどね」


 フロントの人は、何があったか察したらしい。ヤヨイさんがあの髪飾りをつけていたのを、見ていたのかもしれないな。


「それでしたら、明後日の分は、仮予約ということで承ります。1泊分は既にいただいていますので、明日夜の追加分は、6名様で銀貨18枚になります」


 一人当たり銀貨12枚だったよな? 連泊だと安くなるのか。と言っても、まぁまぁ高いけど。


 スウセイさんは、銀貨18枚を払って、何かの紙を受け取っていた。明後日の仮予約だろうか。



「あぁ、それから、この宿屋は銀行業務もやってる?」


「はい、入出金のみですが、取り扱いをしております。貸し付けなどは、冒険者ギルドの出張所へ行っていただかないと、手続きはできませんが」


「借金なんかしないよ。エドさん、ここで、お金を下ろしておけばいいよ。これから、あちこちの市場を回るからね。市場は現金でしか払えない」


「えっ? 僕ですか?」


「うん、この宿屋を選んだのは、そのためだよ。銀行業務をしている宿屋は少ないからね。金貨100枚くらい下ろしておけば?」


 ひぇっ! 金貨100枚!?


「そんな大金……」


「問題ございません! 当宿屋では、闇市で買い物をされるお客様の入出金を承っておりますので」


 あれ? 宿屋のフロントの人が、なんか鼻息が荒い? あっ、僕の言葉を勘違いしたのか。そんな大金はこの宿屋には用意がない、と受け取られたみたいだ。


 なぜか、もう金庫を開けてるよ。


 スウセイさんがニヤニヤしてる。もしかして、これも、何かの役割なのだろうか。



「じゃあ、金貨100枚は重いから……あっ……」


 目の前に、金貨が積まれてる。


「冒険者ギルド証を、この魔道具の上にお願いします。引き出せない場合以外は、残高確認は致しません」


 僕は、腕輪を魔道具に近づけた。ピッと音がして、引き出し額、金貨100枚、と表示された。


「では、ご確認ください」


 スウセイさんが、魔力を放った。


「はい、確かに。金貨100枚あるよ。さぁ、買い物に行こうか」


 僕は、冷や汗をかきながら、布袋に金貨100枚を入れ、そのまま、腕輪のアイテムボックスに収納した。




「ミラック達が、闇市を回ってるはずだから、俺達は、道具屋を見に行こうか」


 宿屋を出ると、スウセイさんは上機嫌だった。まぁ、ここまで、上手くいってるもんな。


「道具屋ですか?」


「そうそう。たぶん、この町には、変わった道具屋があると思うよ」


 さっきは、組織を探すと言っていたよな? あっ、道具屋にも、盗品が流れることがあるのだろうか。



 しばらく歩いていると、僕達の前方で怪しげな人達が待ち構えていることに気づいた。


「お金を下ろすと、だいたい面白いイベントが始まるよね。アイテムボックスに入れたことは、遠目ではわからないんだろうね」


 はい? それで、スウセイさんは上機嫌だったのか?


「僕には、面白くなさそうなので、道を変えませんか」


「後ろも塞がれてるよ。ここの通りの道具屋で正解だったみたいだな。店に入るまでに来るかなー?」


 もしかして、スウセイさんって、戦闘狂なのか?



 前方の怪しげな人達は近寄って来ない。


「エドさん、その右の店だよ。楽しいね。俺は、あまり襲われることがないんだよ」


 僕は、スウセイさんから離れないように気をつけて、店に入った。



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