十五話 天才はハーレムを母に怒られる 中編
王都の門前では衛兵達が大慌てで動き回っていた。もうすぐバラッド王国でも精鋭として名高い聖女率いる近衛軍が帰国してくると連絡が入ったためだ。特に聖女と呼ばれる近衛軍の総大将は規律に厳しく、下手な態度をとった衛兵が首を落とされたという噂があるほど苛烈な人物として知られていた。
「シルビア様の部隊が見えたぞ! 全員敬礼!」
王都の城壁に集まる衛兵達が全員が一矢乱れぬ隊列から敬礼する。それはあたかも一つの芸術のような動きに市民達からも喝采があがる。そして先頭の将から兵士達に声がかかる。
「出迎え御苦労! これより王宮に向かう! 警備任せたぞ!」
凛とした精霊のような美しい声音に兵士達に動揺が走るが、苛烈な人物として名高い聖女に姿勢を崩す者はおらず、一斉に返事を返していた。
バラッドの聖女が長い合戦の末、ついに凱旋した瞬間だった……
その頃シュバルツ家では……
相変わらずメイド二人の朝の恒例行事である熾烈な戦いが今日も今日とておこなわれていた。
しかし実力が拮抗している二人の勝負は着くはずもなく、数分後には祐が起きてしまう時間となっていた。そこで何か思いついたようにティアが叫ぶ。
「モネさん私達の戦いも第二ステージに移りませんか?」
「何? そんなことを言って私に勝てないと悟ったのでしょ? 大人しくその他大勢のメイドに戻っていいのよ?」
挑発するようなモネの言葉にティアの奥歯が軋むが第二ステージの説明を始める。ルールは至極簡単――どちらがより祐に気持ち良く起きてもらうかというものだった。さらに直接的な肌への接触は禁止とし起きた瞬間のインパクトなども加点の対象とした。ここで黙っていなかったのは、戦闘力で一歩劣る他の獣耳メイド達だった。彼女達も常々祐の争奪戦に加わりたいと考えていたのだ……これなら戦闘力の劣る自分達でも勝負できると闘志を燃やしていたのだ。
「ふん! 雑魚が何人束になろうとも私のユウグリッド様への思いを上回るはずもありません……良い機会です実力の差というものを見せてあげましょう!」
自身満々のモネ……さらにティアは秘策があるようで、すでに勝ち誇ったかのような笑みを浮かべると少女メイドの一行は祐の部屋へと向かっていくのあった……
一方祐は夢を見ていた……それはとても幸せな夢だった、良い香りがする花畑で至極の柔らかさのマシュマロに挟まれ寝そべっている夢だった。最近色々あり疲れが溜まっていた祐はマシュマロの心地よさから、顔をこすり付けながら至福の時間を過ごしていた。
(……このままずっと寝ていたいな……それにしても妙にリアルな感触……ちょっと温かいしなんだろう……この安心感は……)
微睡みの中で祐の頭は何か大きな過ちをおかしていると警鐘を鳴らしていた……しかし連日のトラブルから疲れが溜まっていたことと、あまりの気持ち良さに考えることを完全に放棄した祐はこの決断を後々まで後悔することになった。
違和感は突然姿を現した、微睡む祐は我知らず薄く目を開けていたのだ……その光景に祐は絶句する。目の前に広がっていたのは、絹糸のように白く美しい少女の肢体だった……祐の頭はすぐに自体の重大性に気がつきベッドから飛び起きようとしたが、美しい裸体を晒した少女に抱きつかれバランスを崩して逆に押し倒すような恰好で前に突っ伏してしまった。しかし自体はこれだけでは終わらなかった……
獣耳少女達とモネは祐の部屋を前で「第一回 ユウ様を起こして未来の奥さんになれるかも!?」の準備が完了していたのだ。そう混乱する祐の部屋に獣耳少女達+モネが一斉に部屋に飛び込んできたのだ。 少女達はインパクト勝負という名目通り、思い思いの恰好で祐に向かって突っ込んでいくが、モネとティアはメイド服を半分ほど脱ぎながらセクシーな恰好で祐にとびかかっていくところだった。接触禁止のルールなど初めからなかったことのように全員が祐に向かってダイブしていた……普段の祐であれば気配を察知し迎撃も可能だったのだろうが現在絶賛美少女とうふふイベント中だったため気がつくのが遅れてしまった。
そして祐の部屋は混沌となった……
「な、な、なんでレインが裸でいるんだよ! ふ、服来て、早く!」
「やん♡ ユウくんそんな乱暴に揉まないで……♡ 私初めてなのに♡」
「僕五歳だよ! ナニが初めてだよ!」
祐はお約束の展開を味わう暇もなく第二波の半裸の少女達がベッドに投下されてくる……
「ユウ様~♡ 私の愛を受け取って♡」
「ユウグリッド様♡ 以前から私もお慕い申しておりました♡」
ティアとモネの反応速度はやはり規格外で、まず祐のもとに降り注いできた。さらに十二人の獣耳少女達も降っていく……
「ユウ様! 私は愛人で良いので♡」
「私は三号までに入れれば幸せです♡」
「一晩だけでも可愛がって♡」
「私が責めでユウ様受けね♡」
若干愛のささやきとは違うジャンルが入っていたものの、概ね祐に対する愛の告白をしながらメイド達が乱舞していた。しかし祐とレインが裸で抱き合っている現場を目撃してしまった全員が絶句しながら固まっていた。
「ユウ様……そんな……誰なんですか!? その女は!?」
「ユウグリッド様! レイン様とそういう御関係だったんですか!? ク……遅れをとっていたとは!」
そんなメイド達の反応をよそにレインは堂々した風体で胸を大きくそらすと大声で言い放つ
「そうよ! 私達は相思相愛のアツアツカップルなんだから! メイド如きが邪魔しないで!」
「レイン誤解を招く言い方しないで! いつ僕とレインが相思相愛になったの!?」
「あら……ユウくん最初に私と出会ったとき、だらしない顔に好きだって書いてあったわよ?」
「あ、あの時はこんなだと思ってなかったから・・・・」
「でも好きだったんでしょ? 私のこと一目ぼれしちゃったんでしょ?」
レインは祐に対してぐうの音も出ないほど言葉を重ねる。図星を突かれた祐も言葉を続けられず顔を赤くしながら下を向いてしまう……
そんな桃色混沌空間が広がる中、後にメイド達から虐殺聖女と恐れられる女性が大きく扉を開け飛び込んでくる。
「ユウちゃん♡ ママ帰ってきまちたよ~♡ 落ち込んだ心をいや……して……あげる……?」
その言葉は続かず甘い母親の声から、地獄の鬼のような声えと変わっていった……
祐はこの時のことを振り返り独白する。あの時は魔王と素手で対峙した方がマシだったと……




