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現代の天才は異世界で凡人の夢を見る  作者: 福島の星
幼年期 バラッド王国滅亡編
17/19

十四話 天才はハーレムを母に怒られる 前編

10000アクセス突破♡ ありがとうございます!

 シルビア・ジュバルツは聖女である。彼女は幼いことから神聖術式に天才的な才覚を示し十五歳にして魔軍討伐部隊に参加……当時魔軍大幹部の一人だった七十二柱の魔族を一人で討伐した。この戦い以後、彼女の黄金のような髪や蒼天を想起させる蒼の瞳、恐ろしく整った顔立ちを見た人々からバラッドの聖女と呼ばれるようなった。その後二十歳で現在の六英雄が所属する部隊に参加、夫のバルドフェルドとも出会うこととなる。現在の彼女は、英雄とは呼ばれないがバラッド王国近衛大隊の元帥としてバラッド内外に聖女として勇名を轟かせていた。


 そんな彼女は悩みを抱えていた……それはつい先日愛する息子の一人であるリグルド・シュバルツから送られてきた一通の手紙が原因だった。手紙には彼女の三番目の息子であるユウグリッドの近況が綴られていた。ユウグリッドは体調不良から回復後、リグルドの元で術法の訓練をおこなった、しかし「ライト」の術法すら発動させられず大きなショックを受け一月以上部屋から出てこれない状況だと書かれていた。


 彼女は一度過ちを犯していた。それは過去、夫であるバルドフェルドが二番目の息子に対して、術法が苦手だったことで他の貴族から責められていた時、強引なやり方で王国守護隊へと入隊を進め、大きな事件に巻き込まれてしまったことがある、その後二番目の息子は婚約者や信頼できる人間をすべて失い、シュバルツ家を出ていくこととなった。そして彼女の息子は今も行方が分かっていなかった……二度と戻らぬ家族の姿に、あの時なぜ自分は夫を止めずに背中を押してしまったのか……毎日のように苦しみ後悔をしていた。


「これも多くの命を殺めてきた私達の罪なのかしらね……でも今度こそ間違えるわけにはいかないわ……」


 バラッドの聖女は、家族を想い遠征先から帰国を決断することとなる……



――一方バラッド王国では……


 ティア達が家族に加わり二か月が過ぎようとしていた。一三人の獣人少女達は封印の解呪後、本来の力を取り戻し人間を大きく上回る身体能力を生かし屋敷内のメイドとして働いていた。祐に忠誠を誓った言葉に偽りはなく献身的な獣耳メイド達の働きは凄まじく、他のメイド達も触発されシュバルツ家の屋敷は今までにない活気に満ち溢れていた。


 そして活気の主な要因となっている恒例行事が本日も起ころうとしていた……

 それは祐が目覚める一時間ほど前から始まるメイド達の死闘の一部始終だった。


「モネさん! いい加減にしてください! いくら何でもユウ様が可哀そうです!」

「ティア! メイド長である私の方針に逆らうとはいい度胸ですね……今日こそお仕置きしてあげる!」


 モネは手に持っていた掃除用モップを槍のように持ち変えるとティアに向かって突きを放つ、しかしティアは一瞬で間合いを詰めるとモップを掻(か)い潜(くぐ)り、モネの足に鋭い蹴りを放っていた。当然のようにガードしているモネは戦意を漲らせながらティアとの会話を再開させる。


「いくら何でも朝から脂身八割のステーキを五枚も用意するなんてユウ様を殺す気ですか!?」

「ユウグリッド様は成長期に入っておられるのです! これくらい食べなければ痩せてしまいます!」

「ユウ様も常々痩せたがっているのだからいいじゃないですか!」

「何をバカな事をユウグリッド様を痩せさせるなんて神を殺してでも止めて見せます!」

「そこまでしてユウ様を困らせるなら今日こそは実力で止めて見せます!」

「ほう? メイド長である私がネコ耳発情娘ごときに遅れをとるとでも?」

「試してみますか?」


 卓越した身体能力の持ち主である二人は、ティアが徒手空拳、モネが掃除用モップを使いユウの運命?を賭けた戦いが繰り広げられようとしていた。


 まず動いたのはモネだった、戦術術法「スピットステップ」――以前祐が使用し自らの動きを倍加させた術法を巧みに使いモネのモップは人間離れしたスピードでティアに無慈悲な突きを放っていく。しかし封印が解かれ本来の身体能力を取り戻したティアの動きは術法で強化されたモネの動きと同等かそれ以上の動きでモップを捌(さば)いていく、一見すると二人でじゃれあっているように見える動きの中で様々な心理的トラップを交えた高度の戦術が組み込まれた激闘を繰り広げられていた……体術での実力が五分……残るは互いの切り札のみ……二人はタメが必要な技を繰り出すため一度距離をあけ、お互いのカードを切る。


 火風混合術式「火鳥風月」――本来術法とは一つの事象をおこすために術式を編み実行することしかできないと言われている。しかし術式において天才的な才能を持つモネは全神経を集中させ一つの術式を編む過程の中に別の術式を織り込ませることができる。そして完成させる戦術術法の極致とも呼ばれる技は膨大な精神力と引き換えに天災の如き力を顕現させる。混合術法は屋敷の空間を軋ませるほどの圧力を発し発動の瞬間からモネの周辺に力の暴風となりドレスのように絡み付いている。それは物語の中で登場する伝説の精霊王のような姿と圧力を放っていた。


 一方ティアも己の切り札を持ってモネの極技を受ける覚悟はできていた。


 獣気功法口伝「龍気功(りゅうきこう)」――獣人族の戦士は気功術と呼ばれる特有の術式を使用し自らの肉体を一時的に強化する技がある。中でもティアが使用した「龍気功(りゅうきこう」は一部の長老にのみ口伝で残されている秘伝中の秘伝であり使用者に莫大な負担を強いる変わりに巨大な山でさえ削りとると伝えられる。まさに獣人族の切り札に相応しい技と言えた。


 互いに切り札を使用し相手の出方を見る、そして短期決戦を決意しお互いが同時に動く…


「これで終わりだよモネさん!」

「燃え尽きろネコ娘!」


 死力を賭した二人の一撃はシュバルツ家の廊下でぶつかり、決着が着くはずだった……


「はい! そこまで!」


 二人が必殺の一撃を放とうとしている真ん中に丸いフォルムの五歳児が現れ戦術法術「プロテクト」――本来身を守るために体に使用する術法をアレンジしお盆を強化、二人の至高の一撃を受け止めていた。当然術法で強化しようが所詮はお盆なので砕け散るのだが衝撃でメイド二人は正気に戻る。


「ユウグリッド様! おはようございます!」

「ユウ様! おはようございます!」


 二人は一瞬で先ほどまでの殺気を捨て献身的なメイドへと転身していた……おどろくべきスピードで猫を被った二人は笑顔で祐にご挨拶している姿は、どこか白々しい……


「モネとティアは、よく毎朝飽きもせず喧嘩できるよね……止める方の身にもなってよ……」

「ですがユウ様! モネさんが無理やり食事の量を増やそうと画策するものですから……」

「それはユウグリッド様の体重増加をさせたくて……」


 この頃のティアはメイドとして自覚が出ており、友達として呼び捨てで良いと言ってくれた祐に対しても自然と様をつけた呼び方へと変わっていた。


「モネさんの言う通り食事してしまったら、ユウ様が美しく成長できません! 私はリグルド様やニナ様のように美しく成長したユウ様が見たいんです……それで私とユウ様は恋に落ちて毎晩二人で愛し合うんです……ふふ♡」

「この万年発情ネコ娘! 語るに落ちましたね! あなた正論と本音が混ざってますよ! 私はユウグリッド様の健康もしっかり考えた上で体重増加を狙っているんです! 丸いフォルムを守り夜な夜な愛でる楽しみを奪われるわけにはいきません!」

「モネもティアも本音と建前が混ざってて何を言ってるのか意味不明だよ!?」


 ティアとモネの二人は祐の左右に陣取り互いにけん制しあうように火花を散らしている。シュバルツ家の朝の風物詩は今日も引き分けで終わり、明日へと勝負はお預けとなった。


 そんな光景を殺気のこもった目で見ていたのはバラッド王国王女レインフォルト・バラッドだった。彼女は数日前王都で祐に置いて行かれてしまってことを根に持ち、しばらく屋敷を訪れていなかったのだが、いい加減機嫌も直り祐も寂しくなった頃でしょ♪と様子を見に来ていたのだが、ちょっと見ない間に自分の知らない可愛い女の子達が大勢増えていることに驚きしばし柱の影で様子を見ていたのだった。


「ユウくんたら……私というものが有りながら美少女をダースでお持ち帰りしてくるなんて…お仕置きが必要ね……万が一のために用意していたアレが役に立つわね……ふふふふふふふふ♡」


 暗い笑みを浮かべたバラッドの王女様は近衛であるユキノに連絡をとり祐へのお仕置きを画策しながらポツリと独り言を呟き王宮に帰って行った。


「誰が一番かハッキリさせてあげる……」


 祐は一瞬悪寒が走り、周囲を見渡すが王女の悪巧みを感知することなく日常の幸せな時間に頬を緩ませるのだった……



ハーレム状態が今後は基本になります!

すいません今回は3部作になるかも……

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