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現代の天才は異世界で凡人の夢を見る  作者: 福島の星
幼年期 バラッド王国滅亡編
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十一話 天才は偉大な父を誇る

 バルドフェルド・シュバルツは英雄である。それは歴代のシュバルツ家当主の中でも武勇に馳せ、三十五歳の時――十数年続いた人魔戦争を終わらせた勇者達の一人となった。彼は生来の生真面目さからか余計なことは語らず寡黙(かもく)に正しいと思うことを実行する。それに加えて常に眉間(みけん)にシワをよせながら過ごしているため回りから誤解を受けやすい人間だった。


 バルドフェルドは悩んでいた自分の三番目息子に術法の才能が無いことを知ったためだった。先ほど王宮にきた長男のリグルドは深刻な顔で父である彼にユウグリッドの状況を語ってくれた。それは「ライト」の術法すら発動させることができず、数週間に及ぶ訓練も無駄に終わったというのだ。


 英雄である彼は一度間違いをおかしていた。それは十年前ある事件がおきた時のこと……法術が得意ではない二男に対して貴族の義務だと厳しく突き放し警備隊への入隊を進めたのだ。当時のバラッド王国は法術至上主義者が多く二男は師である貴族にすらバカにされており精神的に追い詰められていた。そのことに気づいていたが……長男のリグルドの優秀さに目が暗(くら)み二男にも過剰な期待をしてしまった。その結果事件に巻き込まれた二男は一生消えない傷と婚約者を失った。それ以来二男とは会っていない……


「ワシは英雄という肩書に酔っていたんだろう……息子には合わせる顔もない……今度こそ間違えるわけにはいかんのだ……」


 顔に刻まれたシワの深さは彼の人生の悩みの深さを物語っているようだった。一度の失敗で二度と戻らぬ家族の姿に彼は絶望した。しかしそんな時ユウグリッドが生まれた。彼にとっては三人目の息子だったが、一番落ち込んでいた時期に無邪気な笑顔で救ってくれたのがユウグリッドだった。そんな息子も術法が使えないという……彼は運命を呪う。運命は一度取り返しのつかない失敗をし深く傷ついた男にもう一度選択を迫ろうというのだ。


「十五年前ワシが英雄などと騒がれてバカなことをしていたツケなのかもしれんな……」


 独白し悩むバルドフェルドに王国守護隊より至急の用とのことで連絡が入る……三男のユウグリッドが事件に巻き込まれ王国守護隊の詰所にいるというのだ。過去の二男の事件が頭をよぎりバルドフェルドは急ぎ王都の詰所へと走るのだった……


 ――バルドフェルドに報告が上がっている頃、祐はティアと多くの獣人達を伴い詰所で押し問答を繰り返していた。


「だから言ってるじゃないですか! 獣人を誘拐してきた盗賊がいて港から彼女らを他国に売り払おうとしてたんです! だから僕とティアで盗賊を倒し皆を救出したんです」

「ふん……先ほどから聞こえている! しかしお前のようなどこのガキとも分からんやつが有名盗賊団である『海龍の首』を壊滅させたなど信じられんよ!」

「僕はユウグリッド・シュバルツです。シュバルツ家の三男です! 身元を調べてもらえば分かりますから……」

「シュバルツ家の三男だと!? ふ、ふん……多少名の通った貴族の名前を出せば信じるとでも思っているのか! 言うに事欠いて不出来な豚の名前を出すとはな!」


 詰所にいる貴族の兵士は祐の話をまるで聞こうとしない……いい加減捕まって衰弱していた獣人達の介抱しなくてはと焦る祐は苛立っていた。


「父のバルドフェルドを呼んでください! 父であれば分かりますから!」

「ふん……恐れ多くも将軍閣下をお呼びしろだと! 貴様何様のつもりだ……」


 今にも殴りかからんばかりの兵士をよそに回りの兵士達も多くの獣人達が詰所にいることに顔をしかめていた。そこに横柄な男が姿を現す。


「なんだなんだ! 獣臭いと来てみれば獣人がこんなにたくさん! 誰だいったい売女(ばいた)をここに連れてきたのは! 詰所は娼館じゃないんだぞ! 早く捨てに行け!」


 場に合わないきらびやかな服装で入ってきたのは貴族でも有名なサディストのサルバド・ブレーン子爵だった。彼はバラッド王国の中でも指折りの権力者であり、武のシュバルツ家と双璧をなす知のブレーン侯爵家の二男だった。その言葉に祐はキレそうになる自分を必死で抑え兵士の説得を続けようとしていた。


「臭い臭い臭い臭い……だから嫌だったんだ! こんな所にくるのは、なんで僕ともあろうものが下級兵士の詰所で管理職なんてやらんといかんのだ!」


 大声で文句をいいながらも救出された時のままである薄着の獣人少女達を値踏みするようにイヤらしい目でみているサルバドは、祐の隣りいたティアに目を止め近づいてくる。


「ぐふふふ……光栄に思え! おまえは合格だ俺様と来い!」


 突然ティアの手を取り強引に連れていこうとするサルバドに我慢の限界に達した祐が足払いをかける。無様に転んだサルバドは顔を真っ赤にしながら大声でわめいている。


「……痛い! なんだ! この豚は僕に向かって足を出すとは!!!」

「すいません……豚なので言葉を理解できません……初めましてユウグリッド・シュバルツと申します」

「なんだと! 貴様が有名な不出来な豚か! そんな豚如きがブレーン家の二男である僕にたてつくとはどうなるか分かってるんだろうな!」

「どうなるというんです?」


 すぐにでも掴(つか)みかかってこようとするサルバドに祐も挑発的に答えてしまう。


「お前は何もわかってないみたいだな! バラッドの双璧とか言われてるみたいだがブレーン家は貴様らのような貧乏侯爵家と違い大金持ちだ! 当然バラッド内外の有力者とも繋がっている! 一声かければお前の家などいつでも潰せるんだよ!」

「ほう? ブレーン家のサルバド殿は戦争がお好みか?」


 低く渋い声が祐の後ろから聞こえ。兵士達がざわめきだす。


「バルドフェルド将軍閣下! どうして詰所に!」


 詰所内の兵士達は物語の英雄を前に直立不動となり全員が顔を引き締め敬礼をする。一人状況に付いていけていないサルバドだけが茫然とした面持ちでバルドフェルドを見る。


「お、おまえが六英雄の一人バルドフェルドなのか……ほ、本物なのか……?」

「いかにもワシの名はバルドフェルド・シュバルツですよサルバド殿? それで……先ほどのブレーン家が我がシュバルツ家を潰すとかなんとか……なんでしたかね?」


 ドラゴンすらも逃げ出しかねない裂帛(れっぱく)の視線を浴びせられサルバドも口をパクパクいていた。そこに祐は自らの父に対して謝罪する。


「父上! 公務の中お呼び立てし申し訳ありませんでした! どうしても僕のことを信じてもらえなくて……」

「ユウグリッド……怪我はないのか?」

「はい! 父上……友人のティア達が誘拐されそうになってなんとか救出できたのですが……守護隊の方々に嘘だと言われてしまってここで足止めされておりました。」


 その言葉を聞いて顔を青くしたのは先ほどまで祐と押し問答を繰り返した男爵位の貴族だった。彼はどう言い訳をしたものかと脂汗を流しながらバルドフェルドの言葉を待つ……


「君が息子の取り調べをおこなったのか? ……息子の何が信じられんか教えてくれ!」

「閣下……わ、わたしは何も疑っておりません……息子様のすべていう通りでございます!」


 今にも気絶しそうな兵士に同情している他の兵士達も六英雄の圧力に完全に飲まれていた。口をパクつかせていたサルバドもようやく復活し捨て台詞を吐いて逃げるように外へ出ていく。


「パパに言いつけてやる!!」


 まさにテンプレな言葉に祐は思わず吹き出してしまう。父であるバルドフェルドも茶目っ気たっぷりに祐にウインクしていた。こういう父なのだ……まったく敵わない……祐は父の偉大さを噛みしめるのだった。

主人公の家族話を少ししてみました。

そろそろハーレム話が始まるかも!?

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