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2日目 アベニューオブスターズの夜景と魚のお粥

 九龍街市、九龍寨城公園、黄大仙廟、黑地、油麻地果欄、百宝堂と回った後、スーパーWelcomeで買い物をしてホテルに戻った。夜になるまでホテルで休むつもりだったが、居ても立ってもいられず、結局16時過ぎにまた外へ出た。亀ゼリーを食べて少し横になったらすっかり元気になってしまったのだ。


 九龍半島の南端、尖沙咀にあるアベニューオブスターズに向かう。ビクトリアハーバー沿いのプロムナードで、香港映画スターたちの手形がある定番夜景スポットだ。今回の旅は本当に定番の観光スポットしか巡っていないなと呆れる。まあ、初めてなので仕方ない。初めてなのに通ぶるのもおかしな話だ。素直にいこう。


 佐敦から彌敦道をひたすら歩き、重慶大厦の前を通り過ぎ、横断歩道を渡ってペニンシュラホテルの前まで来た。ホテルは特にデコレーションはされておらず、ありのままの姿で佇んでいた。「一生縁のないホテルなんだろうな」と思いながら通り過ぎる。余談だが、以前職場で取引先の香港の会社からペニンシュラのチョコレートが届いたことがあり、密かにわくわくしたのだが、結局社長が箱ごと持っていってしまったので、お零れに預かることすらできなかった。今回の旅でも買わなかったので、未だにペニンシュラのチョコレートの味はわからない。


 そんなことを考えているうちにアベニューオブスターズに到着した。まだまだ明るいのに凄い人だかりである。ビクトリアハーバーを挟んだ先に香港島の高層ビル群が、少し霞がかって見えていた。水はエメラルドグリーンで、想像より綺麗なことに驚いた。東京の水は場所によっては酷く濁って味噌汁のような色になっていたりする。


 お恥ずかしながら、私は香港の映画スターをあまりよく知らない。全く知らないわけではないが、ここに刻まれている人の半分以上はわからない。過去に『がっかりする観光スポット』に選出されたこともあるらしいが、それでも私はこの場所が好きだ。

 

 写真を撮りつつ手形を見ていく。レスリー・チャンの場所には花が手向けられていた。そして偶然にも私は洪金寶(サモ・ハン)の手形を見付けた。その横には、海外からやって来たであろう観光客の女性がおり、「Oh my god! キンポー! おほほほ! キンポー!」と大変嬉しそうにしていた。笑い過ぎて若干過呼吸になっている女性を横目に、ブルース・リーの銅像があるエリアまで歩いた。ここも大人気で、銅像と同じポーズで写真を撮る観光客がたくさんいた。


 そこからまた引き返し、今度はスターフェリー乗り場の方へ歩いていった。それにしても、皆大変慣れた様子で自撮りをしたり、カメラに向かって決めポーズをしたりしている。照れくさいが私も1枚くらい撮っておこうかと思ったが、凄まじい逆光に妨害されて撮れなかった。


 ちょっとした展望デッキになっているところがあり、空いているベンチを見つけて腰を下ろした。どうでもいいがこの日は何故か便秘でもないのに肛門が切れており、座ると地味に痛かったのを覚えている。

 これは良い場所を陣取ったなと思い、そこで黄昏ながら暗くなるのを待つことにした。

 しかし、ここで少々不愉快なことが起きた。私の隣にどこかの国の観光客グループが座って自撮りを始めたのだが、その写真に私が写り込んでしまい、まるでメンバーの一員のようになってしまったのだ。シャッターが切られる直前にそのことに気が付いた私は、慌てて顔が写らないように背けたが、それがツボに入ったのか、その瞬間彼女たちは馬鹿にしたようにゲラゲラと笑い出したのだ。

 いたたまれなかった。あまりにも大声でずっと笑っているので、私は死ぬほど恥ずかしくなってその場にいられなくなり、そっと移動するよりなかった。


 ベンチはどこもいっぱいで、座る場所はなくなっていた。仕方がないのでフェリー乗り場を通り過ぎ、暗くなるまで1881ヘリテージという建物の周辺をぶらぶらして時間を潰し、暗くなるとまた海沿いに戻ってきてハーバーシティの近くで夜景を見た。ここなら人も少なくて快適だ。

 

 それから長いこと夜景を眺めていた。写真を何枚も撮った。シンフォニーオブライツは見なかったが、それを抜きにしてもキラキラしていて本当に綺麗だった。「残業」という言葉が何度か頭に浮かんだものの、普段夜景を見慣れていない日本の田舎っぺはひとり静かに感動していた。田舎には夜景などなく、上質な闇しかないのだから。


 散々夜景を楽しんだので夕食をと思い、尖沙咀にある茶餐廳のチェーンに行ったのだが、ここもまた大人気。当然のように満席で、店の外まで人が溢れていた。ここに並ぶのかと思うと気が遠くなりそうだった。しかしこれを書いている今となってはやっぱり並んででも入るべきだったと思う。


 茶餐廳には入らずに重慶大厦の向かい側までやって来ると、お土産雑貨店を見つけた。駅名マグネットや麻雀牌のキーホルダー、エコバッグ、Tシャツなどがところ狭しと並んでいる。ここで「仆街」と書かれた麻雀牌のキーホルダーを見つけて買おうか悩んだが、店員さんに仆街を差し出す勇気が出ず、買わなかった。「仆街」はおそらく「クソッタレ」とか「くたばれ」とか「ろくでなし」とか「この野郎」とか、そんな意味だと思う。


 結局、質屋のネオンを模ったキーホルダーとやたらと大きいマグネットを買って佐敦まで戻った。何を食べようか迷って迷って、お粥を食べることにした。

 

「新光粥店」という店の前まで来ると、店内の様子を窺った。席は空いている。リュックも置けそうだ。

「よし! 突撃!」と思い、入店すると席に通された。メニューに英語表記はなく、わかる漢字を拾って解読する。ピータンに豚肉に牛肉、レバーに魚に……後はよくわからない。頭がぐるぐるしてきた。


 

 とりあえず魚のお粥を注文した。しかしこれがまたかなりのボリュームで、またもフードファイトが始まってしまった。米の形状がなくなるほどトロトロに煮込まれ、熱々なお粥の表面を削るようにしてレンゲで掬って食べる。生姜が効いていて美味しい。ただ、魚には小骨が多かった。たぶん草魚が使われていると思うのだが、小骨を飲み込まないように気を付ける必要があった。

 器の端に口から出した小骨を並べるのもどうかと思ったので、持参したティッシュの中に吐き出した。(ティッシュは持ち帰った)


 途中から入って来たおじさんと相席になったが、特に会話が生まれることはなく、お互い黙って黙々と食べていた。おじさんはお粥ではなく焼きそばのようなもっさりした麺を食べていた。


 お粥を食べ終えるとホテルに戻ってシャワーを浴び、香港旅行2日目が終了した。余程疲れていたのか、この日だけはびっくりするほどよく眠れた。そう。この日だけは……



 


 


 

 

 


 


 

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