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2日目 油麻地と亀ゼリー

 昼の花園街を通って油麻地方面へ歩く。この日は日本を出る直前まで雨の予報だったが、結局午前中少し曇ったというだけで、午後からは気持ちの良い快晴となった。晴れ女の私が来たから雨雲が消滅したに違いなかった。


 花園街には最近流行りのタオル地?のもこもこポーチが売られていたが、買わずに通り過ぎた。買えば良かったと思う。


 ずっと花園街を歩いていたのでは油麻地果欄(フルーツマーケット)には辿り着けないので、適当なところで彌敦道を横切って九龍の西側へ歩いて行った。

 どこをどう歩いていったのかあまり覚えていない。とにかく西側へ向かって歩けば辿り着けるだろうと考え、ろくに地図も見ずに歩いていた。排気ガスと食べ物のにおいを嗅ぎながら、「都会のにおいだなぁ」としみじみ思った。そういえば、香港は道を歩いていると頭上にある室外機から水滴が脳天目掛けて降ってくるという話を聞いていたが、今回の旅では1滴も直撃することはなかった。1月だからだろうか。夏場に行けば浴びられたかもしれない。


 歩きながら「で、今どこにいるの?」と思い久々にマップを開くと、果欄の近くの歩道橋まで来ていた。方向音痴の割には迷子にならずによくやっていると関心したのを覚えている。

 

 歩道橋に登る坂の中腹に、紙と竹でできた黄色い車や色とりどりの豪華な家の模型がいくつか置かれていた。何故これがここにあるのか不思議だったが、この紙細工自体が何であるのかはなんとなく知っていた。おそらく「紙紮」という紙のお供え物である。旅行前に見たテレビ番組で紙紮を作る職人が紹介されていたのだ。まさかここでお目にかかれるとは。

 

 紙紮は香港の伝統文化であり、故人があの世で暮らす際に不自由しないよう愛用品や生活必需品を模ったものを作って燃やすのだそうだ。燃やすことによってあの世に届くという考え方は、日本にもあるだろう。写真を1枚だけ撮ったが、そもそも何故そのようなものが歩道橋の脇に置かれているのかわからないし、紙紮は故人に対する敬意と愛情の形だというので、ここに写真を載せるのは控えることにする。検索するか、想像で補っていただけたら幸いだ。


 歩道橋を歩いていると、既視感のある風景が目に飛び込んできた。油麻地果欄が見えたのである。油麻地果欄とは、100年以上の歴史を持つ果物専門の卸売市場だ。なるほど確かに歴史を感じる佇まいである。

 映画「トワイライト・ウォリアーズ」の序盤では、主人公の洛軍が大ボス率いる果欄の黒社会に偽の身分証を作ってもらったのだった。まあその出来栄えは笑ってしまうほど酷いものだったのだが……

 黒社会にコケにされ、静かにブチギレた陳洛軍は、手近にあった麻薬の袋を引っ掴んで(本人はお金だと思っている)夜の街へ全力で走り出し、ここから物語が本格的にスタートする。重要なシーンだ。


 時間帯のせいなのか、果欄はかなり静かだった。初日の夜か早朝に来てみたらまた何か違ったのかもしれない。歩道橋の上なら働く人の邪魔にもならなそうだし……そう考えたが、今更遅いのであった。

 

 歩道橋から降りて市場を歩く。日本の果物も多く売られており、くまモンの絵をいくつか見た。何故かここの写真をあまり撮っておらず、とても後悔している。ドリアンとかシャカトウとかレンブとか、日本では殆ど見かけない南国の果物が売られており興味深かった。シャカトウは以前台湾の高雄で食べたことがある。食べるタイミングが難しいが、美味しいのでおすすめする。

 


 油麻地果欄を通り過ぎ、油麻地警察署や天后廟を見ながら歩いていると、いつの間にか廟街まで来ていた。そういえば亀ゼリーを食べるんだったなと思い出し、亀ゼリーと涼茶の店『百宝堂』へとやって来た。

 亀ゼリー(龜苓膏)とは、亀のお腹の甲羅の粉末と、数種類の生薬を煮詰めて固めた薬膳デザートである。美容や風邪、夏バテ等に良いらしい。


 店内には誰もおらず、お店の人もカウンターで道行く人々を眺めている。目が合ったので、とりあえず英語で「タートルジェリー?」と言ってみると、「はぁ?」と言われてしまったので、思い切って「グァイ リン ゴウ」と言ったところ、見事通じて席に通された。亀ゼリーは冷たいものと温かいものがあり、冷たい方が食べやすいという。サイズも「大」と「細」の2種類があり、私は冷たい細を選んで注文した。


 小さいサイズを注文したはずだが、けっこう大きい器で来た。お店の人はシロップを隣に置き、「これをかけて食べなさいね」とジェスチャーで教えてくれた。素直にシロップをかけ、レンゲですくって口に入れる。すごく苦い。昔生理不順の時飲んでいた当帰芍薬散を思い出した。漢方くさくて苦みのある独特な味である。決して「美味しい!」と言えるものではないのだが、なんだかありがたい味がする。

 食べている途中で地元のおじさんも入って来て、亀ゼリーをもりもり食べていたのが印象的だった。

 

 シロップを足しながら完食すると、お腹がいっぱいになった。昼食を抜いたのは正解だったかもしれない。カウンターにオクトパスカードの張り紙らしきものがあったので、会計時にオクトパスが使えるか聞いてみたが使えず、現金で支払った。確か41HKDくらいだったと思う。日本円にして約800円。あの量なら妥当だ。

 子供の頃ドラマで見てからずっと気になっていた亀ゼリーを香港に来て食べることができて満足だった。


 この後は佐敦のホテルに戻り、1時間半ほどベッドに横になると、近くのスーパー「Welcome」に行き、GardenのネギクラッカーとLiptonのスティックタイプのミルクティーと鴛鴦茶を買った。この日の夜は尖沙咀のアベニューオブスターズに夜景を見に行くことにしていた。

 

 






 

 

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