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2日目 九龍寨城公園と体調不良

 寝不足なんかに負けてたまるか。フードファイトには負けたが、九龍寨城公園には絶対に行くんだ。その後黄大仙にも行ってお線香をあげるんだ。

 

 身体の違和感を誤魔化しながらMTRに乗り込む。時刻は9時を回っていたので電車は空いていた。尖東駅から宋皇臺駅まで屯馬線の烏渓沙行きに乗って約10分。難しいことはない。香港の地下鉄はシンプルでわかりやすい。


 宋皇臺駅に着いたらB2出口から外に出る。B3出口の方が公園には近いが、その前に寄りたいところがあったので敢えてB2から出た。

 すぐ近くに『楽口福酒家』という広東料理店がある。中には入れないが、その外観だけ見に来たのだ。クリーム色の壁に赤い柱、そして大きなネオン看板。映画『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍寨城』(原題:九龍城寨之圍城)で少しだけこの店の外観が登場する。謂わば聖地巡礼というやつだろうか。



 作中Tiger哥が車に押し込められている(押し込められてはいないか)シーンを思い浮かべる。映画では夜だったので、夜に来たほうが雰囲気があるのだろうなと思う。映画に使われたのは外観だけのようだが、ここで食事をした日本人グループの投稿をSNSで何度か見た。美味しそうだったので入ってみたいが、こういう店は1人で入るような店ではないだろう。


 そこから北に向かって歩いて、九龍街市という建物までやって来た。ビルの1階は市場になっており、新鮮な魚や野菜、果物がところ狭しと並んでいる。日本では見かけない魚や野菜もたくさんある。床が濡れているので滑らないように注意しつつ、なんとなくスマホで動画を回しながら中を少しだけ歩いた。

 しかし何かを買うわけでもないし、中は広々としているわけでもない。長居すると邪魔になるに違いないと思い、5分足らずで外に出た。動画はどこにも出すつもりはない。

 この辺り一帯の地域を九龍城というが、再開発が進んでいるらしく、いたるところで工事が行われていた。


 そこからさらに北へ向かい、九龍寨城公園の入口付近までやって来た。ここはとても広い公園で、複数の門がある。宋皇臺駅から来た人が展示を見るには南側の門から入るのが良いだろう。「恆發中式食品店」という店の向いにある門から入ると迷わずに展示場まで辿り着けるという話を某方のブログで見たので、素直にそうした。


 月曜日の朝なので人も少ないだろうと思いきや、公園には校外学習中のちびっこたちがたくさんいた。皆で並んで門の前で写真を撮ると、わいわいはしゃぎながら城砦の模型を見たり南門の土台の跡を見たりしていた。もしや映画の展示の中に入るのでは? と思い少しの間待ったが、子供たちは公園内の植物や城砦の模型を熱心に見ていただけで展示場に行く気配はない。

 子供たちの間から1枚だけかつての南門の跡を撮影した。公園のどこを撮ってもたくさんの子供たちが写り込むのでここには載せられないが、とても長閑な公園だ。かつてここに巨大なスラム街があったとは……


 九龍城砦(正式名称は九龍寨城)とは、かつて九龍半島に存在し、「無法地帯」「東洋の魔窟」と呼ばれた巨大なスラム街だ。管理権の問題から香港政府にもイギリス政府にも主権が及ばなくなり、法の空白地帯となった。調べてみると元々は清朝がイギリスの侵略に抵抗するために作った軍事要塞だったらしいのだが、その後第二次世界大戦を経て中国の情勢不安から逃れてきた難民のバラックとなり、60年代後半辺りから鉄筋コンクリートのビルに建て替わったようだ。違法増築が繰り返され、数百棟ものビルが狭い敷地にひしめき合い、その中で黒社会(香港マフィア)の人間や難民といった人々が最大で5万人近く暮らしていたという。


 政府の目が届かない為に、城砦内は賭博や麻薬売買、売春といった数々の違法行為の温床となっていた他、香港では通用しない医師免許での医療行為が行われる等あったそうだが、その一方で点心や魚蛋(フィッシュボール)の加工場があったり(高級レストランに卸されていた説有り)、保育園や老人ホームまで存在したというから驚きだ。某ドキュメンタリー番組で見た元住人の話によれば、人情味あふれる場所だったとも。しかし1993年〜94年に掛けて取り壊しが行われた。

 一目見てみたかったなぁと思ってしまうが、私が生まれる前に更地になってしまったので、どうしたって不可能な話だ。

 


 さて、映画の展示を見なければ。胃の調子はすこぶる悪かったが、ここまで来て引き返すという選択肢はない。

 入口まで行くとスタッフの人が日本語で「このまま!」と言って展示の方を指すので、お礼を言って中に入る。整理券も必要なかった。


 中に入ると、見事に日本人しかいなかった。余程日本で人気なのだなと思いながら見て回る。月曜日の午前中ともあって、人が少なくほぼ貸し切り状態だ。制限時間もない。


 まずは売店から入ってみる。映画の主人公、陳洛軍(チャンロッグワン)がハイエイトチョコを買った店だ。予想外の使い方をしたので思わず吹き出したのを覚えている。あの売店のお爺さんの雰囲気が好きだ。エンディングにも売店がちょろっと出てくるが、あのシーンは心がギュッとなる。


 次は魚蛋の加工場を見た。城砦に迷い込んだ洛軍が、城砦のナンバー2である信一(ソンヤッ)の紹介で最初に働く場所である。女性ばかりの職場にひとり放り込まれた洛軍だが、めちゃくちゃに歳下の魚蛋妹先輩の教えも素直に聞き、真面目に働くのである。

 この展示では魚蛋の材料にハモが使われているようだった。


 そして次は歯医者だ。映画に歯医者はほぼ出てこなかったと思うが、実際城砦にはたくさんの歯医者が存在した。なかなか腕が良く、城砦の外から通う人もいたと聞く。変な生え方をした親知らずなども抜いてくれたのだろうか?

 ショーケースに並べられた入れ歯の模型を見ていると、「クーロンズゲート」というゲームのことを思い出す。


 そして忘れてはいけない。叉焼飯の店。

 洛軍が龍捲風に叉焼飯を奢ってもらった冰室の再現を肉眼に焼き付ける。叉焼飯のレプリカは何故かテーブルの上ではなくカウンターに移動していた。

 信一が帳簿をつけていたカウンターもあった。その隣の部屋には理髪店。理髪店の中には龍兄貴の着ていたキューバシャツ、大ボスと信一のジャケットが当然のように置かれている。特に信一のジャケットは壮絶なまでに黄ばんでいて凄かった。

 

 一番奥の部屋に行くと、王九のド派手ジャケットや靴。洛軍のヨレヨレ黄色ジャージがあった。王九のジャケットは見れば見るほどわけがわからない柄をしており、目がチカチカした。余談だが、作中王九が虫の息な洛軍を抱えた四仔(セイジャイ)を全速力で追ってくるシーンが怖すぎて劇場で震えた。四仔は一般人の闇医者なのによくやっていたと思う。本当に。

 そんな四仔大先生の覆面マスクは何故か写真に収め忘れていた。そもそもどこにあったのかも記憶になく、本当に惜しいことをした。全部寝不足と体調不良のせいだ。そういえば四仔のナイロンジャケットも探せばどこかにあったのだろうか? ショッピングモールでの展示では四仔の部屋もあったそうなのだが、ここには無かった。作中彼は訳あって大量のAVを収集する羽目になっているので、公園に設置するにはセンシティブ過ぎたのだろうか?


 まだまだ語りたいところだが、文字数が3000文字に近づいている。あんまり長くなってもいけないのでこの辺にしておく。


 展示を見終わると、北側の門から公園の外へ出た。途中、再び公園内で不思議な動きの健康体操をしている人たちを見た。

 この後は黄大仙に行く予定だったので、樂富駅を目指して歩き出した。なんだか身体が異様に火照っていた。


 

 

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