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1日目 羽田から香港へ

 2026年1月11日。搭乗の3時間前には羽田空港第3ターミナルに到着していた。10時10分発キャセイパシフィック航空香港行きの便は定刻より15分ほど遅れて飛び立った。

 

 空港で台湾ドルを香港ドルに両替しようとしたらできなかったり、パスポートを保護ケースに入れていたらキオスクでスキャン出来なかったり、手荷物タグが上手く貼れなかったり、機内で何を飲むか聞かれてお茶を頼んだら何か言われ、英語がわからなかったのでお茶は無いのかと思いオレンジジュースを頼んだらお茶とオレンジジュースの両方が来てしまったりと初っ端から思い通りに行かないことが続き、己の不慣れさを思い知らされることとなった。2杯も飲み物を飲んだにも拘らず、5時間もの間トイレに行かなかったのは奇跡だ。トイレは座席の真隣にあったというのに。

 機内食はチキンとポテト、蕎麦にフルーツ、そしてお決まりの丸いパンだった。


 予定より早く香港に到着したが、到着ロビーに出た時には15時を回っていた。まず初めにやることは、オクトパスカード(香港の交通系ICカード)を買うことだった。バスや電車、トラムやフェリーで使える他、コンビニやスーパー、自動販売機などでも使うことができる。私は2階建てのエアポートバスでホテルに行かねばならなかった為、すぐに手に入れる必要があったのだ。

 

 到着ロビーに出てすぐにエアポートエクスプレスのチケットカウンターがあり、そこでオクトパスカードが手に入るが、長々と列ができており時間がかかりそうだった。そこでエアポートエクスプレスの乗り場にある「客務中心」と書かれたカウンターまで行ってみると、並ばずにすんなりとオクトパスが買えた。受け付けの人はとても感じが良かったが、すべて流暢な英語で説明されるので、私の鼻くそレベルのリスニング力では到底理解できず、「OK?」と聞かれたことに対し咄嗟に「OK!」と言う他なかった。


 渡されたのは観光客向けの買い切りタイプであるツーリストオクトパスだった。もう使えれば何でも良いのでバスターミナルへ向かう。


 この3日間泊まるホテルは佐敦(ジョーダン)という所にある彌敦道(ネイザンロード)沿の好立地なホテルだった。佐敦に行くにはA22かA21という番号のバスに乗る必要がある。

 バス停に行ってみるとA21のバス停には長蛇の列ができており、A22には1人しか並んでいなかった。A22の方が若干値が張るが、空いているしA21の半分の時間で佐敦に到着する。ホテルに着いたら尖沙咀の重慶大厦(チョンキンマンション)に行って両替をしたかったので、両替屋が閉まる前に行きたかった。

 

 私はすでに並んでいた男性の後ろに並んだのだが、後から来た日本人2人組が私の後ろではなく隣のレーンに並んだので奇妙に思っていると、ある文字が目に飛び込んできた。

 バス停にはA22の他にA25とも書かれていたのだ。更に自分のいるレーンの柵に目を向けてみると、でかでかとA25と書かれている。つまり私はバス停自体は合っているが並ぶ場所を間違えていたのだ。危ないったらない。危うくA22のバスに乗り損ねるところだった。


 気温は20℃ほどで、面白いくらいに暑かった。日本から来る際には長袖Tシャツに厚手のカーディガンを着込み、その上にさらにマウンテンパーカーを羽織っていたので暑いったらなかったのだが、バスの中は空調が効いており快適だった。

 Suicaと同じ要領でオクトパスをタッチし、重いキャリーバッグを車内の荷物棚に突っ込んだ。2階席には行かず、速やかに降りられるように1階の左側前方の席に座った。ここなら停車案内のパネルがよく見えるのだ。それに右側に座るより左側に座った方が景色も良い。私は佐敦道の志和街というバス停で下車する予定だった。初めての香港。初めての2階建てバス。聞いた情報によると、バスは素早く降りなければ間に合わないらしいので終始緊張である。

 

 降りる際は降車ボタンを押すのだが、押すタイミングがわからなかった。「次は〇〇」とアナウンスが入ったら押すのか、バス停が近付いてきたら押すのか、そんな些細なことでずっと悩んでいた。幸いにも前のバス停と距離が近かった為、何かアナウンスした直後に押して差し支えはなかったようだった。バスが止まるか止まらないかのところで席を立ち、キャリーを力ずくで引っ掴んで降車した。


 ホテルはバス停からすぐ近くだ。ガタついた狭い歩道にはたくさんの人々が行き交い、理解できない言語や聞き慣れない信号機の音が飛び交っている。初めて嗅ぐにおいもしていた。キャリーは転がしづらく、必死に人と人の隙間を縫うようにして前進していると、ふいに涙が出そうになった。これが何の涙なのかは全くわからなかったが。


 ホテルに着くと、スタッフが「Hello」と挨拶してキャリーをカウンターまで運んでくれた。パスポートを出して、「チェックインプリーズ」とだけ言い、書類に電話番号とサインをしたら部屋のカードキーが貰えた。12階の部屋だった。エレベーターに乗り、さあ12階へ!と思ったのだが、ボタンが反応しない。「ああ、カードキーをかざして使うのか」と思ったが、どこにかざすのかわからない。色々な所にかざしまくった結果、無事ボタンが反応して事なきを得た。


 部屋は一番奥の角部屋だった。キャリーを置き、暑苦しい上着を脱ぎ捨てると、リュックだけを持ってすぐにホテルの外へ出た。時刻は17時を回っている。休んでいる暇はない。両替屋が閉まる前に重慶大厦へ急がなければ!



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