3日目 穴場的夜景スポットとネオン探し。そしてタコワサおにぎり
もう駄目だ。一歩も動けない。完全に体力切れだ。そう思いながら2時間ほどホテルの部屋で横になっていたのだが、16時過ぎ頃にまた謎の元気が湧いてきて、居ても立ってもいられず再び外へ飛び出した。行き先は決めていなかった。
ホテル周辺を探索し、最終的に九龍公園に足を踏み入れた。自然が恋しくなったのだ。都会の中に広がるガジュマルやバウヒニアの木々を見てひと息つきたかった。
香港の漫画のイラストが描かれた階段を登り、(原作洛軍もいた)公園の中へ入るとまばらに人がおり、のんびり散歩をしていた。
九龍公園はよく九龍寨城公園と混同されるが、全くの別物なので注意したい。今私がいる九龍公園にはフラミンゴがいると聞いていたので、とりあえずフラミンゴを見に行こうと思った。
しかし公園は思いのほか広大で、歩けども歩けどもフラミンゴは見つからない。大きな噴水や綺麗に植えられた花を眺めながら、必死にフラミンゴの姿を探した。自分でもどうしてこんなにフラミンゴを見ることに躍起になっているのかわからなかった。別にフラミンゴなら上野にも千葉にもいるし、特別好きな動物というわけでもない。それでも諦めずにフラミンゴを探していると、公園の北西に位置する池の方からギェーギェーと鳥の鳴き声が聞こえてきた。
声のする方へ行くとやっぱりフラミンゴがいた。しかも思ったより多い。
池の周りには観光客と思わしき人が私を含め4〜5人いた。私はしばらく彼らと一緒にフラミンゴの群れを眺めていたが、何気なく池の奥の道に目をやると、一本の道が公園の外まで続いていることに気が付いた。
ブーゲンビリアの咲くアーチをくぐってみると、そこは歩道橋のようになっており、広東道が見下ろせた。九龍公園って意外と高いところにあるんだなぁ。と思いながら先へ進んでみると、ちょっとした眺めの良い広場があり、その更に先には展望デッキがあった。
どうやらフェリー乗り場の屋上と繋がっていたらしい。ここには観光客の姿はほとんどなく、地元の人たちのランニングコースになっているようだった。公園を走ってから展望デッキに来てストレッチをしているのだろう。羨ましい。
展望デッキからは香港島の西側がよく見えた。その更に西には名前もわからない島が見える。夕日を反射してキラキラ光る海は凪いでいて、潮の匂いを含んだ風が少し肌寒かった。上着はホテルに置いてきてしまったのだ。
ベンチは空いていて、そこでずっと夕日が沈むのを見ていた。香港島の向こうがオレンジ色に染まり、段々と辺りが暗くなり、ビルの明かりが目立ち始める。アベニューオブスターズのプロムナードとは違い、ここは東側の夜景は見られないものの、とても静かで居心地が良かった。この時になってはじめて夢を見ているような状態から抜け出したような気がする。香港にいるということがようやく現実味を帯びてきたような。
海風に当たりすぎてさすがに寒くなってきた。風邪を引いては大変なので、私はまた公園に戻り、柯士甸道に繋がる門から外に出た。すぐ近くに大きなWelcome(香港のローカルスーパー)があったので、中にはいってお土産のクッキーとお茶を買い、リュックに詰めた。
ホテルに帰ろうかとも思ったが、そういえば夜の廟街の屋台をちゃんとに探索していなかったことを思い出し、廟街に向かった。
屋台には糖水、煎釀三寶、点心、蛇のスープまであったが、この時の私はびっくりするほどお腹が減っておらず、胃の調子もどこかおかしくて何も食べる気になれなかった。蛇のスープを食べて旅行記に感想を書きたかった。今思えば死ぬほどもったいない。今なら確実に食べられるのに……
食べ物ゾーンを抜けると雑貨やTシャツ、バッグに財布などを扱う露店が並ぶ。偽物らしきブランド物や巷で人気のキャラクター「ラブブ」も数台体ぶら下がっている。
昔はもっと怪し気でカオスに満ちていたらしいのだが、時代の流れと共にこざっぱりしてしまったようだ。だだし露店の裏の道に行くことはおすすめしない。
通りの終わりまで来ると警察官が立っていた。一瞬ドキリとしたが、その警察官の背後に大きなネオンを見つけ、夏の夜のカナブンのように吸い寄せられた。
近くに占い師のいる通りがあり、「喂! 靚女」と呼び掛けられたが、会釈して通り過ぎるしかなかった。
それからその辺をぶらぶらしてネオンを見つけ次第写真に収め、ホテルに戻ろうとしたのだが何か少しだけお腹に入れなければまずい気がしてきた。そこで、とりあえず香港のセブンイレブンには何があるのか見てみることにした。
ホテル近くのセブンイレブンでおにぎりのコーナーを覗いてみると、「芥末八爪魚」と書かれたものがあり、タコワサの写真が添えられている。そういえば日本人でありながらタコワサを食べたことがなかった。なんとなくそれを手に取り、ペットボトルの香港式ミルクティーと一緒にレジへ持っていった。去り際に店員の男性から「バイバイ」と言われたので私も「バイバイ」と返した。香港ではごく普通にこの「バイバイ(拜拜)」が使われるので少しびっくりしてしまうが、気さくな感じがして好きだった。
ホテルの部屋に帰って実食。とても美味しい。ワサビが強烈なような気もするが、食欲が無い時にはありがたかった。日本のセブンイレブンにはどうしてタコワサのおにぎりが無いのか不思議だ。
ミルクティーは合わないかと思いきや、意外とそうでもない。日本のものとは違い甘さが控えめですっきりしているような気がした。
それからすぐにシャワーを浴びて眠った。3日目ともなるともうシャワーの出し方を間違えて冷水を被ることもない。しかしもう明日には日本に帰らなければならないのだった。




