3日目 トラムで北角〜上環まで行き、フレンチトーストを食べる
北角の「書局街」から上環の「西港城」まで、香港島を走るトラムに乗って移動してみることにした。香港のトラムは後ろのドアから乗り込み、前のドアから降りる際に料金を支払う。バスや地下鉄、フェリーなどと同じようにオクトパスカードが使えるので難しいことは何もない。
空いていそうなトラムを選んで乗車し、2階席へ行くために狭くて急な階段を登る。さすがに1番前の席は無理かもしれないと思ったが、意外にも空いていた。
観光客丸出しでひとり最前列へ座る。なんだかわくわくする。私の記憶が正しければ、路面電車に乗るのは初めてのことだ。
トラムはかなりゆっくり進むことに加え、停車駅の間隔も狭い。渋滞に巻き込まれることもあるらしく、せっかちな人間には向かない移動手段だろう。現に私の乗ったトラムの前には跑馬地行きのトラムが2台詰まっており、途中までは止ってしまいそうなほどゆっくりだった。
しかし急ぐほどの日程は組んでいない。トラムはどこまで乗っても一律3HKDだし、2階からの景色をのんびり見るためにも長く乗っていたかった。
「それにしたってゆっくりだな」と思いつつGoogleマップで現在地を確認してみると、いつの間にか炮台山、天后を通り過ぎ、銅鑼湾まで来ていたりする。そのまま湾仔、金鐘、中環を通過し、ついに目的地の上環にやって来た。
上環は香港旅行を決めたばかりの頃に泊まる予定の街だった。そこから紆余曲折あり佐敦に変更したのだが、上環の下調べも入念にしていたため、道に迷うこともなかった。
西港城(Western Market)というレンガ造りの商業施設の前でトラムを降り、中に入ろうかと思ったが、2026年1月現在臨時休業中のようで入れなかった。
仕方ないので諦めて、西多士とボトル入りミルクティーが有名な茶餐廳があるビルまで歩いた。しかし朝食が多かったがためにまだお腹は空いていない。そこで先に文武廟まで行ってみることにした。
文武廟は、上環のハリウッドロードにある香港では最古の歴史的道教寺院である。文学の神(文昌帝君)と武道の神(関聖帝君)が祀られている。
文武廟からほど近い所にキャットストリート(摩羅上街)と呼ばれる通りがある。むかしむかし、盗品を買い求めに人々がやって来る様子をネズミを狙う猫に例えたことから通称キャットストリートと呼ばれるようになったらしいが、この日はネズミの姿も猫の姿もまばらで閑散としていた。時刻はお昼前だったのだが、早すぎたのだろうか?
本来であればアンティーク雑貨や骨董品、アクセサリーなどが売られているはずなのだが……
まあこんな日もあるのかと無理やり納得して、観光客がテラス席まで溢れ出している人気カフェ「Halfway Coffee」の前まで行き、そこからまた引き返して文武廟へ向かった。
高層マンション群の下にいかにも歴史深そうな寺院が静かに佇んでいる。地元民も観光客も多く、人が写り込まない写真を撮るのは至難の業だ。と言っても、神聖なお寺の中でバシャバシャと写真を撮るのも気が引けるため、殆ど写真は撮らなかった。
下調べをあまりせずに来たため、最初に列聖宮という文武廟ではない廟に入ってしまい、「ここはどこ?」と戸惑ったりもしたが、頭上に吊り下げられた渦巻き状の線香は想像以上に荘厳だった。燃え尽きるのに1週間近くかかるらしい。中は線香の煙が充満しており、少し目に染みた。
余談だが台湾の日月潭の畔にも文武廟があり、こちらへは昨年の3月にツアーで足を運んだ。ガイドさんから「香港の文武廟にも行ってみると良いです」と言われたことを覚えているが、まさか本当に、しかも1人で来てしまうことになるとは、当時は想像もしていなかった。
文武廟から出た後、しばらくの間は自分の身体から線香のにおいがした。時刻は12時前。小腹が空いていた。燒鵝飯や叉焼飯の店も気になるものの、がっつり何かを食べる気分になれなかったので、結局先に述べた西多士が有名な茶餐廳に行ってみることにした。フレンチトーストくらいならペロリといけるだろうと思ったのだ。
瑞記咖啡は、上環市政大廈というビル内にある。上環熱食中心という看板を探し、エスカレーターで3階(英国、香港で言うところの2階)まで上がる。少し思い扉を押して中に入ると、たくさんの地元民で賑わっていた。
中は様々な食堂や喫茶店が集まっており、レトロなフードコートの様になっている。瑞記咖啡と書かれた店を見つけ、店員さんに一声かけるとテーブルについた。
メニューは香港式フレンチトーストの他に麺類やサンドイッチなどがある。麺類も大変魅力的だが、どんなものが出てくるのかよくわからなかった。飲み物はミルクティーにレモンティー、コーヒーにオバルチン、レモンコーラなどがある。
「西多士」と「樽仔凍奶茶」を注文すると、すぐにガラス瓶に入った冷たいミルクティーが出てきた。紙ストローなのが現代的だが、このガラス瓶にストローを挿して飲むというのがまた良いのである。甘さ控えめですっきりとしていて美味しい。瓶3本くらい一気飲みしたかった。
それからしばらくして香港式フレンチトースト西多士が運ばれてきた。2枚重ねの食パンにバターと練乳がたっぷり染み込んでいる。外はカリッとしており、中は柔らかい。いい具合に焦げ目も付いている。食べた人のレビューでは甘すぎずペロリといけるとあったのだが、私にはかなり甘く感じた。
そしてまたも始まるフードファイト。一見ささっと食べられてしまいそうなのだが、貧弱な胃袋には一発一発(ひと口ひと口)が重く感じられ、膨大な量に感じられた。
しかしフードロスに加担するはもう懲り懲りだった。何としてでも全部食べるぞと気合いを入れ、ひとり黙々とフォークを口に運んだ。
なんとか完食し、己の少食さを恨んだ。現金で支払いし、席を立つ頃には熱食中心はほぼ満席状態だった。
次はお茶屋さんで茶葉を買うぞと意気込んで、パンパンになったお腹を気にしながら退店した。




