異世界から来たガイア 62
第62章
マリク
俺は縛られ、ひざまずかされた五人の捕虜の前を行き来する。
陣営を隅々まで改めたが、価値のあるものは何一つ見つからなかった。食料も乏しく、あったのは武器と数日分の糧食だけだ。
俺はそのうちの一人、兵たちに鼻を折られた三十歳ほどの男の前で足を止める。「どうやら、お前たちの王はお前たちを見捨てたようだな」
男は俺に向かって唾を吐き、俺の長靴に見事に命中させた。
俺はしゃがみ込み、折れた鼻を指で軽く突いてやった。
男は痛みに悲鳴を上げる。「この野郎!」
「普段は『陛下』と呼ばれているんだがな。ともかく、お前たち五人は理解するべきだ。もはや抵抗など無意味であり、今やお前たちがいつ、どのように苦しむかを決めるのは、この俺なのだと」
「報いを受けるぞ!」鼻を折られた男は、痛みに目を細めた。
俺はキクを近くへ呼び寄せる。
ほかの捕虜たちに見られたり聞かれたりしないよう、手で口元を覆う。「鼻を治してやれ」俺は小声で囁いた。
キクはうなずいた。
「よし、連れて行け。探して言った通りに進めろ」
二人の兵士が男の両脇を抱え、キクの案内で連れ去っていく。
「さて、お前たち四人だ。仲間と同じ目に遭いたくなければ、協力した方が身のためだぞ」
「どうせ俺たちを殺すんだろ」丸刈りの男がボソリと呟く。
「言ったはずだ、どれだけ苦しむかを決めるのは俺だと。だが死からは誰も逃れられん。俺も、ヴェルティワザもな。もっとも俺としては、奴が俺よりずっと先に死ぬことを望んでいるが」
「そんなことはできない」
「どうかな。あるいはそれを見届けるのは俺だけかもしれん。お前たちはその頃には死んでいるだろうからな」
「神々がお決めになることだ」
「ならば神々の御心のままに。だとしても、お前たちの王がお前たちを見捨てた事実は変わらない。俺にはその理由が分からないのだ。三日前までは奴自身もここにいた。それが少数の兵と食料、武器だけを残して、俺を足止めした」
「俺たちはただの兵士です」四人の中で最も若い少年が、潤んだ目で俺を見上げる。十六歳ほどだろう。
「それはどうかな」
「本当に何も知りません。どうして嘘をつく必要があるんですか?」すでに仲間ではなく自分の身のことを考え始めている。結構なことだ。
「お前が嘘をついていないとどうやって確かめればいい? 実は王の給仕係かもしれないし、どこかの将校の愛人かもしれないだろう」
少年の目に恐怖の色がよぎった。男の愛人扱いされたことがそれほどショックだったのだろうか。
「その子の言う通りだ」丸刈りの男が俺を真っ直ぐ見返した。
「証明できるか?」
「少しでも力があったなら、こんな場所に残されているわけがない」
「命令に従っただけかもしれん。実際、従ったようだしな。ところで、お前たちの命令とは具体的に何だったんだ?」
「もう関係ない。俺たちは命令を果たした」
「俺の手に落ちるくらいなら自害することもできたはずだ。それをしなかったのはなぜだ?」
少年の目は潤んでいる。初めての実戦なのだろう、緊張に押し潰されそうになっている。いい傾向だ。少し圧力をかければ、最初に口を割るのはこいつだな。
「そのガキを連れて行け。小屋へ入って、やるべきことをやれ」
二人の衛兵が俺の前を通り過ぎ、少年の両脇を抱え上げた。
少年は絶叫し、恐怖で泣き崩れる。完璧だ、ナイフを見せればすぐに喋るだろう。
残ったのは丸刈りの男と、もう一人の捕虜だけだった。四十歳ほどの、黒々とした髭を蓄えた男だ。
「さて、今度はお前たち二人だ。俺の質問に答えてもらおう。お前たちの命令は何だった?」
「言ったはずだ」丸刈りの男には度胸がある。「もう果たした」
「つまり、お前たちの命令は俺の時間を奪い、ここに足止めすることだったわけだな」俺は髭の男の前へ移動する。こいつはずっと視線を落とし、一言も発していない。俺は髪を掴み、無理やり顔を上げさせた。「なぜだ?」
髭の男は俺を見てニヤリと笑った。「そのうち分かるさ」そして俺の顔に唾を吐きかけた。
俺はその頭を地面へ叩きつけた。こいつは何か知っているのかもしれない。
髭の男は額を地面につけたまま笑い、大量の砂を噛み込んでいる。
俺は袖で唾を拭った。
結局のところ何も知らないのだとしても無理はないが、噂でも何でも、少しくらいは耳にしているはずだ。「丸刈り、名前は?」
「何の関係がある?」
「『丸刈り』がいいか? 俺は一向に構わんぞ。それより、右か左か?」
「何だと?」
俺はナイフを抜く。「質問するのは俺だ。右か左か?」
男は唾を飲み込み、顔に恐怖の色がよぎる。「どうせ俺を殺す気だろ、この犬め」
「言ったはずだ。お前たちがどれだけ苦しむかを決めるのは俺だ。それにあいつ……」体を起こしかけている髭を指差す。「あいつはかなり酷い目に遭うことになる。間違いない」
「俺は名誉ある死を遂げる」丸刈りは顎を上げた。
「いいや。苦しみ抜いて死ぬんだ。いいか、戦場で死んだお前の仲間たちは戦って死んだからこそ名誉がある。拷問を受けて死ぬことに名誉などない。爪を一枚ずつ剥がし、足の指を叩き潰して引き千切り、手も同じようにしてやる。そして全身に数え切れないほどの切り傷を刻んでやるんだ。当然、股の間もな」
男の頭が震えだす。怯え始めているな。
「それも何のためだ? 臆病で部下の影に隠れるしかなく、お前たちを見捨てた王のためか?」
「陛下!」捕虜を連れ去った兵士の一人が戻ってきた。
「申してみよ」
「ガキが口を割りました。陛下もお聞きになった方がよろしいかと」
ガイア
地下墓室は中央に水槽のある大きな長方形の部屋で、見えやすいようにフックに松明を掛けたが、空気はすでに煙と悪臭で満ちていた。
祭司が耳にしたと言っていた隠し通路の手がかりを探す二人の兵士の影が、壁の上で揺れている。
私は腕を組み、指先で腕をトントンと叩く。
「ご緊張なさっておられるのですか、閣下?」
「この場所が好きになれないだけです、それだけ」
「申し訳ありません。閣下までおいでいただく必要はなかったのですが」
「言ったでしょう、来なければならなかったの」マリクのためだ。それに、こんな地下で私に一体何が起こるというの?
私は水槽の縁に沿って歩く。
普通の井戸のように縁が上に競り出しているわけではなく、真の穴であるかのように下に掘り下げられており、その上に寺院を建てたようだ。妙な話ね。
二人の兵士は、空気の流れや隠し通路がないか探すように、石という石やすき間を手で触り続けている。
「祭司」
「はい、閣下」
「ここに外部とつながる場所があるかもしれないというのは、確信があるのですか?」
「確信がありましたら、明確にお伝えしております、閣下。私のはあくまで推測に過ぎません」
ジル・バムが貴族たちを抑え込んで問題を起こさせないようにするのに手一杯でなければ、彼に相談できたのだが。「ですが、地図は見つけたのですか?」
「気になる粘土板を見つけました。皇帝陛下とご一族の忠実な僕として、閣下にお伝えするのが務めかと存じまして」
私はうなずく。彼の教団は皇族への忠誠を義務付けていると聞いた。それでも、この状況はどうにも落ち着かない。祝福された剣の柄を撫でる。「では、この水槽については何が分かるのですか?」
「泉かもしれません。この地方では珍しくありません、我々の土地ほど多くはありませんが」
「それなら、なぜ利用しないのです?」荒れた土地柄を考えればそれが一番合理的な選択のはずだ。これまで見た畑にはどこにも水路網があったし、マリクの説明では収穫の多くを雨に頼っているという。まったく、こちらの世界の人々が私たちのところの農業を知ったら腰を抜かすだろう。マリクがトラクターを見たらどんな顔をするか。思わず微笑みがこぼれる。
「閣下、泉が利用されない理由はいくつもございます。最も一般的なのは、神聖なものとみなされ、儀式のためだけに用いられる場合です」
私をさらったりするために?「なら、この水槽がなぜ作られたのかも分かっているのでしょうね」
「いいえ。申し訳ありません、閣下。この街の伝統については存じ上げぬのです」
水は暗く、静かに淀み、松明の光がかすかに照らすのみだ。
私は水槽の縁まで歩み寄る。最後にこんなふうに泉や水場に近づいたのは、皇妃にさらわれた時だった。身をかがめ、手で水面に軽く触れる。
冷たいが、静かだ。
手をわずかに動かして円を描く。だが藻やゴミのような汚れは一切感じられない。「川とつながっている可能性は低そうね」 あるいは、つながっているとしても何らかの方法で濾過されているのか。
同行した二人の兵士が、最後の壁の点検に取りかかる。ù
立ち上がり、祭司テヌのもとへ戻る。彼は気にしすぎているのではないかと思いはじめていた。宗教上の義務として皇族に忠誠を誓っていなければ、罠ではないかと疑うところだ。これまでに皆から聞いた話によれば、私だって皇族の一員なのだから、彼は私にも忠実なはずである。
「ご心配ですか、閣下?」
「考え事をしているだけです。ここには何もないのではないかと思い始めました」
「お知らせするのが私の務めでしたので」
「それについては、とても感謝しています」
「何か見つけました!」兵士の一人が叫ぶ。「隠し扉を開けるための仕掛けのようです!」
「引け!」祭司が命じる。
私は振り返り、彼を睨みつけた。「命令を下すのは私のはずです」
「お許しください、閣下」彼は軽く頭を下げる。
私は兵士たちへ向き直る。
扉が開いた。人一人が通れるくらいの幅だ。
兵士の一人が松明を片手に、もう一方の手に槍を構えて中を覗き込む。事故のように一歩だけ中へ踏み込んだ。
兵士が悲鳴を上げた。松明を取り落とし、喉元を押さえながらよろめいて後ずさる。
「なっ……!」私は剣に手を伸ばすが、その上にはすでに別の手が重ねられていた。
冷たい刃が私の喉を撫でる。
「動かない方が身のためですよ」テヌの声は蛇のような鋭い囁きだった。
「テヌ……何をしているの?」
剣を携えた四人の男が扉から出てきて、残った兵士を取り囲む。
傷ついた兵士が槍を突き出し、何かを貫く。
敵兵が呻き声を上げ、その兵士の頭へ剣を叩き込んだ。
残った兵士は突進したり影に身を隠したりしながら、必死に身を守っている。
さらに四人の敵が出てくる。
残った兵士を取り囲み、剣で切り刻む。
その絶叫が部屋中に響き渡る。
テヌは満足そうに薄笑いを浮かべた。私を裏切り、刃で脅して身動きを封じている。
「テヌ……あなたは私に忠実であるべきでしょう……」
「私は皇族に忠実なのです。戴冠の炎エンラーに忠実なのですよ」
皇妃の手先か。「私を殺すつもりね」
「もちろんです、閣下。今ここであなたを殺せば私の目的の一つは達成できます。ですが、敵に引き渡した方が得られるものは多いと考えています。捕虜になったまま死ぬかもしれませんし、あるいはマリクがあなたを取り戻すために自らの名誉を汚すことになるかもしれません」
「つまり、どちらにしても私とマリクの二人を殺すのが目的なのね」
「私の望みも皇妃様と同じです。タロムを皇帝として玉座につけること。あなたとマリクは邪魔なのです。個人的な恨みではありませんよ」
一人の男が近づいてくる。頭にティアラを戴き、長い黒髭を三つ編みに編み込んでいる。「これが例の女か?」
「はい」
「我が王ヴェルティワザの命で参った。約束通り、今すぐ引き渡してもらおう」男は私の目を真っ直ぐ見つめた。「お約束しましょう、閣下。大人しくしておられれば害は加えません。あなたの身分と名にふさわしい敬意をもって処遇いたします」
「信用できないわ」テヌのせいで剣を抜くことができない。
「お選びにはなれません」男の眼光は鋭かった。
十人を相手に一人きり。大人しく従う以外に道はないようだ。「私をどうするつもり?」
「それを決めるのは我が王です。私ではありません」
テヌが私の剣を抜き取る。
「何をしているのだ、祭司?」将校が警戒の声を上げる。
「閣下を無力化しているのですよ」テヌは私の剣を将校に渡し、将校はそれを帯に差し込んだ。
「さあ、行け。お前は約束を果たした。あとは我々が約束を果たす番だ」
「ヴェルティワザ王のお言葉は、確かなのですな?」
「それが気に入らないなら、私と部下でお前の相手もできる。祭司には敬意を払うが、裏切り者には払わん」
「それでも、あなたは今、裏切り者と話しているでしょう」
「我が王の命令だ。私の一存なら、お前を今すぐ殺して娘を連れて行く」
「私からすれば、そいつを殺してくれた方がありがたいくらいね」どうせ私を連れ去る気なのだから。
将校は微笑んだ。「さあ、同行願おう。お自らお歩きいただきたい。力ずくにはしたくありません」
「嫌よ」
松明の炎が、彼の固く決意に満ちた表情をいっそう不吉に浮かび上がらせる。彼はため息をついた。「頼みますよ、閣下」
男は私の手首を掴んで引き寄せると、力を込めて呻き、まるでジャガイモの袋のように私を肩に担ぎ上げた。「さあ閣下、おいでいただきましょう。馬鹿な真似さえしなければ、すべてうまくいきます」
男たちに囲まれ、秘密の通路を進む。
リッジョンから遠く離れ、マリクから遠く離れて。




