異世界から来たガイア 45
第45章
ガイア
馬を操るのにものすごく苦労している。
私はマリクが援軍として送った五百人の兵たちと共に馬を走らせていた。彼は私たちに街の防衛を手伝わせるつもりで、外にいるより城内のほうが私にとって安全だと考えているのだ。
少しでも早く到着できるよう、予備の馬まで用意してくれた。
「急な行軍ですが、どうして戦場でも騎馬のまま戦わないのですか?」私はマリクに託された副官、タルクンに尋ねた。
「馬に乗りながら弓を射られるとお思いですか?」
「ええ、まあ」私の世界ではみんなやっていた。文字通り、全員が。
「では、手綱は何で持つのですか、ガイア様?」
「手も使うし、脚でも馬は操れますよ」
「ガイア様、失礼ながら、今の時点ですでにかなり苦戦しておられるように見えますが」
「分かってるわよ」二ヶ月前まで、一度も馬に乗ったことがなかったのだから。
「では、騎兵を革命的に変えるお話は、また別の機会にいたしましょう」
私はうなずいた。
「敵だ!」誰かが叫ぶ。
「どこからだ?」タルクンが問い返す。
「南です!」
「くそっ、城壁の手前で俺たちを遮断する気だな」彼が唸る。
「どうするの?」イシュダーがいようがいまいが、こんな風に捕まったら私たちは終わりだ。
「もっと速度を上げる。奴らより先に辿り着くぞ」
「分かったわ」
「陛下の軍旗を高く掲げろ! 城壁へ向かうんだ!」
この見通しに誰も興奮などしていないし、私の知る限り、全速力で馬を走らせることは誰にとっても決して愉快なことではないらしい。
なんて奇妙な世界だろう。
「敵の先鋒かしら?」
「当然です」
「もし締め出されたら?」
「我々は死にます、ガイア様」
「最高ね」
「それが戦の常というものです」
「気に入らないわ」
「ですが、あなた様をお遣わしになったのはイシュダー様です。私はそう確信しています」彼は信頼に満ちた目を私に向けた。
どうやらこの話は皆を完全に納得させてしまったらしい。真実を絶対に知られませんように。でなければ、私とマリクは大嘘つきだと思われてしまう。
キッタナの城壁が近づいてくる。
灰色と赤みを帯びた、堂々たる城壁だ。狭間胸壁の上にはすでに兵士たちの姿がある。
前を走る兵たちの頭越しに、まだ開いている城門が何とか見えた。完璧よ。あと二百メートルほど。
私は敵がどこにいるのか確かめようと顔を上げた。
見えるのは、遠くに立ち上る土煙だけ。あれが敵に違いないけれど、こちらとの距離まではよく見えない。
味方の隊列から叫び声が上がった。
「投石兵だ!」一人の兵士が警告する。
「盾を上げろ!」タルクンが命じた。
私は自分の盾を外し、どうにか頭を守るように掲げた。少しでも体勢を安定させるため、馬の首にいっそう身を伏せる。
弾丸の雨が私たちを激しく叩いたが、盾と距離のおかげで、その攻撃はほとんどすべてが虚しく外れていった。
城門がどんどん近づいてくる。
降り注ぐ雨が止んだ。
私たちは、いつでも出撃できるよう両側に整列した兵士たちの間へと滑り込んだ。
「間に合ったわ……」私は小さく呟いた。
ザナンザが兵たちの間を進み出る。彼はタルクンに軍式の敬礼を送り、タルクンは一礼して応えた。「見事な働きだ。兄上が援軍としてそなたらを使わされたのか?」
「その通りです、陛下」
私は馬から降り、近くにいた兵士に手綱を渡した。
「お馬方を休ませる場所を手配いたします」
「かたじけない、よろしく頼む」
私は二人に近づいた。「こんにちは、ザナンザ」
ザナンザは目をぱちくりさせた。鎧を身につけ、完全に武装していた私に気づかなかったらしい。「ガイア?」
「そうよ、マリクが私も街の防衛に送り込んだの」
「最高だな。お前にかすり傷一つでもついたら、兄上に生きたまま皮を剥がされるぞ」
「私に会えて、あんまり嬉しくなさそうね」
「今のこの状況のせいで、そういう喜びを素直に楽しむ余裕がないだけさ」
「それもそうね。とにかく、私たちは助けにきたの」マリクは私を守るためにここへ寄こしたのだろうけれど、彼の足手まといにはなりたくなかった。
「馬を預けて休ませたら、ここから西にある広場で待機してくれ」彼はその方向を指差した。「あそこならいくつかの危機的な要所へすぐに駆けつけられるし、遊撃の控えとして動ける」
「分かりました」
「ガイア、お前は俺と一緒に残れ」彼はタルクンに向き直った。「部下たちにそう伝えておけ。また後でな」
「はっ、陛下」
タルクンが大きな声で命令を怒鳴り散らす。
「どうやら私は彼らと一緒に行かなくていいみたいね」
「ああ、お前に関する俺の最優先事項は、無傷のままマリクのところに送り返すことだからな」
「宮殿に閉じ込めるつもり?」その提案は、ある意味では私を安堵させた。結局のところ、そこにいれば安全なのだから。
「それも一案だが、あいにくそうもいかないんだ」
「どうして?」
「簡単なことさ。お前はイシュダーの遣いだ。もし戦いから遠ざければ、兵たちの士気に悪影響を及ぼす」
「なるほどね。マリクが私を連れていくときに使った言い訳と同じだわ」
ザナンザはにやりと笑った。「兄上はお前を伝説的な存在に仕立て上げている。そして、それが彼自身の人気にも一役買っているんだ」
「マリクがそんな人気を必要としているとは思えないけれど」
「必要はないが、本人は悪く思っていないさ。でお前の方はどうなんだ?」彼は私の目をじっと見つめた。
「私は……そんなこと考えたこともなかったわ」
「だろうな。お前は世間知らずだ。だが、王女として生まれ育ったわけじゃないんだから無理もない。もしそうだったら、とっくに気づいていただろう」
「どうもありがとう」私は腕を組んだ。
「今のは褒め言葉だぞ。お前は多くの人間よりも無垢だが、その分ずっと誠実だ」彼はどこか寂しげに微笑んだ。「ゲスアもお前を気に入っただろうに」
私はそっと彼の腕に触れた。「私も彼女を好きになったと思うわ」妻の死がどれほど彼を傷つけ、彼女にふさわしい敬意を払わなかったことをどれほど後悔しているか、マリクから聞いていた。
ザナンザは首を振った。「こんな話をしている時間はないな。もうすぐ包囲戦が始まる」
私はうなずいた。まったく、これで私の人生三度目の戦場になる。
「ザナンザ」磨き上げられた装飾鎧を身にまとった、五十代ほどの小気味よくがっしりとした男がこちらへ歩み寄ってきた。「状況を報告しろ」
「はい、父上」
お父さん?
「報告の前に、紹介させてください。こちらが以前お話しした、兄上の側室のガイア・イシュダーです。ガイア、こちらはキッタナの王であり、ゲスアの父君であるファルグア殿だ」
私は軽く一礼した。「お目にかかれて光栄です。このたびのご不幸に、心よりお悔やみ申し上げます」
「光栄なのはこちらだ。今や誰もが噂している女性にお目にかかれるとはな」
彼は優しい目をしていた。ゲスアにとてもよく似ているが、男性である分、その顔立ちははるかに引き締まって見えた。「娘を救おうとしてくれたと聞いている。感謝する」彼は私に手を差し出した。
私はその手を握りしめた。「もっと力になれればよかったのですが」
「皆そう思っている。だが、その心遣いだけで十分ありがたい」
「ありがとうございます」
一人の兵士が走ってきて、軍礼をとった。
「陛下、敵が先遣の使者を送り、謁見を求めております」
ファルグアは鼻を鳴らした。「話を聞きに行くとしよう」
私たちは、兵士たちが道を開けるなかを城壁の上へと上がっていった。
ザナンザは行く先々で笑みを向け、兵たちの肩を叩いて励ましている。彼はまさに自分の領分にいるようだった。マリクが、自分が皇帝になったら彼を軍の総司令官に任命したいと言っていた理由が、今ならよく分かる。
私たちは城壁の胸壁の隙間から外を覗き込んだ。
およそ二百メートルほど先に、武器を持たない二人の男を乗せた戦車が止まっている。
手綱を握っていない方の男が角笛を三度吹き鳴らした。「キッタナの市民よ、そしてファルグア王よ!」彼は大声で叫ぶ。「ミルワンの王にして、双子の大河に最も愛されし息子、ヴェルティワザ陛下より敬意をお伝えする!」
「その敬意ごと引っ込んでいろ」ザナンザが低く吐き捨てる。
「我が主は貴殿らに何の遺恨もない!」男は息を整えた。「それゆえ、都市とこの地域の降伏と引き換えに永遠の平和を約束される。ミルワンの軍勢は何人たりとも傷つけず、五年間はいかなる貢納も免除する!」
使者は息を切らしながら、返答を待った。
私とザナンザはファルグア王の方を振り返った。
王は顎をさすった。「ふむ、確かに極めて魅力的な提案ではあるな」
マリク
さらに部隊が俺のもとへ合流してくる。
領内各地に散っていた各部隊との集合地点は、実によく機能しているようだった。
ジル・バムが粘土板を手に近づいてくる。「これらを合わせ、我が軍は総勢八千となります」
「ようやく敵の兵力とほぼ互角になったな」
「はい、陛下」
「籠城戦に割かれる敵の兵数を考慮すれば、数の上ではこちらが有利だ」
「まさしく」
だが、どうにも腑に落ちない。
「ラッファルとバンヌをここに呼べ」彼らと協議する必要がある局局面だ。
「はっ、陛下」
数分もしないうちに、俺の副官であり参謀でもある二人が、俺とジル・バムの前に姿を現した。
「諸君」俺は口を開いた。「もはや数的優位は俺たちにある。キッタナの街の戦力まで含めれば、その差は圧倒的と言っていい」
「朗報ですな、陛下」バンヌが同意する。
「だが、何かがおかしい」
「なぜでございますか?」
「考えてもみろ。あれほどの大軍で先手を打ってきた以上、奴らには何か策があるはずだ。まさか何の勝算もなしに、俺たちの遠征に致命傷を与えられると思っているわけがなかろう」
「我々がこれほど近くにいるとは知らなかったのでは?」バンヌが推測を口にする。
「罠を警戒しておられるのですか?」ラッファルは俺の懸念を察していた。
「ああ、だがその罠がどのようなものかはまだ見えてこない」
「私なら間者を送り込み、内側から城門を開けさせますな」
「ジル・バム、お前が俺の味方で本当に良かったよ」時に卑劣ではあるが、彼は実によい着想を持つ。「もっとも、それが事実だとしても俺にできることはないがな」
「兵力を伏せている可能性は?」バンヌが顎髭をなでる。
「あるいはな」
「あるいは、まず俺たちを打ち破ることで、キッタナに城門を開けさせる腹づもりか」
「ラッファル、だが数では俺たちの方が勝っているぞ」書記官が反論する。
「大差はありません。もし奴らが戦車に適した地形を選び、さらに投石兵を巧みに配置すれば、その利点を活かして戦局を覆せます」
「そして、ひとたび俺たちが撤退すれば、キッタナは城門を開かざるを得なくなるわけか」長期的な優位を得るために、まず俺たちの先遣隊を叩くというわけだ。筋は通っている。「それに、もし俺たちの戦線が崩壊すれば、地方の州軍まで呑み込まれる恐れがあるな」
「さらに言えば、ミルワンは戦車の数でも質でも、我々を上回っている可能性が高いです」ラッファルが腕を組んだ。
「奴らの戦車が俺たちのものより優れているのも、今のうちだけだ、安心しろ。だが、それ以外はお前の言う通りだ。敵の優位性を無効化できる場所で戦わねばならん」ガイアが無事でいてくれればいいが。「ラッファル」
彼は即座に直立不動の姿勢をとった。「はっ、陛下」
「二千の兵を率いて街の近くにある丘陵を確保しろ。そこに投石兵と弓兵を配置するんだ。そこを見張り台とし、俺たちの側面を死守せよ」
「仰せのままに、陛下」彼は俺の知る限り最高の射手だ。期待を裏切ることはないと確信している。
「バンヌ、お前は千の兵を率いて大きく迂回し、南方に陣を敷け。そうして、敵が川を渡って俺たちの背後を突くのを阻止するんだ」
「仰せのままに、陛下」
「さらに、敵が撤退した場合には突撃をかけられるよう備えておけ。戦車五十両を連れて行け」
「承知いたしました。しかし陛下、そうなればそちらの戦車戦力が手薄になりますが」
「俺たちは丘陵と盾を利用して防衛陣地を築く。奴らが世界一の戦車を持っていようと、地形が完全な平坦でなければ必ず限界が来る。長期戦に持ち込めば、俺たちに勝機がある」
「ただちに向かいます、陛下」
「最後にもう一つ。現地の兵たちは俺の元に残せ。彼らは自らの家郷を守るために戦うのだ、俺の近くに置いておきたい」
二人の武官は命令を遂行するため、ただちに出発した。
「いつもとは異なる戦術ですな、陛下」
「ジル・バム、これはただ手堅く守りを固め、地形を俺の優位に利用したいだけだ」
「陛下がより慎重になられるのは、喜ばしい限りにございます」
「それだけではない。考えてみろ、時間は俺たちの味方だ」
「敵が罠を仕掛けていない限りは、ですな」
「その通りだ」
「背後から急襲される可能性をお考えで?」
「それもあるが、真の狙いは別にある」
「何でございますか?」
俺の書記官がまだ気づいていないはずがなかった。「キッタナの街だ。おそらく、この攻撃そのものが陽動なのだ」
ジル・バムは驚愕して目を見開いた。「ですが、陛下の戦略は……?」
「俺の戦略は、敵を最短時間で無力化するためのものだ。だが何よりも、損害を最小限に抑えるためのものだ」
ガイアとザナンザが、十分に長く街を持ちこたえさせてくれることを願うばかりだ。




